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30歳から始まる魔法生活  作者: 霧野ミコト
第一章 紐解かれる神話
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第五話 出会い

次はいつできるかわからないので、間を置かずに投稿。

次話は未定です。

翌日は朝早くから起きて日が暮れても仕事を続けた。


とりあえず、最低限前日には宿を取って当日に備えておかないといけないので、宿泊費用を工面しておかないといけない。


宿自体は、1週間前で取れるだろうかと不安に思ったが、ここのホームの主人に話をつけてもらって、開いているアパートの部屋を日割りで貸してもらえるようになった。


まあ、生活雑貨とかは何一つとしてないので、寝袋か使い捨て覚悟で布団かと迷っていたが、思ったよりも早く予定金額を集められたので、結局3日前に王城付近のアパートに着いたので、使い捨て覚悟で布団にすることにした。


そして、今僕はヴァルハラ宮殿の中に居た。


宮殿の中は、僕が想像していたものとは違っていた。


確かに、立派な建物があちこちに建っていて、その形はどこにも歪なところもなく秀麗で思わず感嘆の息が漏れた。


だけど、煌びやかさとは無縁で、落ち着いた質感を感じさせる。


さすがに王城に入ろうというのに私服もどうかと思ったので、会社員の時に使っていたスーツを引っ張り出したりもしたが地道な聞き込みというか聞こえてくる声で普通の格好でかまわないというかむしろすぐに戦闘になるから対応できる服がいいということが分かったので、しまうことにした。


着いたのは二時過ぎごろだったが、既に人はたくさん集まっていて明らかに自分とは違うレベルの雰囲気を持っている。


おおよそ場違いなのは僕ぐらいだろう。


『皆のもの良く集まってくれた。私の名はヴィーノ・アレックスだ』


そして、15時ちょうどに開催の言葉が告げられると、セレモニーの如く演説が始まった。


魔法で拡散された声を聞いた瞬間、周りからどよめきが上がった。


だけど、それは無理のないことだろう。


その名前はこっちにきてまだ日の浅い僕ですら知っている有名な名前だ。


このヴァルハラ宮殿を守護する近衛隊の隊長で、たくさんの伝説を残した勇士だ。


たった一人でドラゴンを5体も倒したという逸話もある。


『この度、君らをここに呼んだのはほかでもない、またあの瞬間が来た。我らが姫君が月に祈りを捧げる日だ。汝らには、その祈りを守ってもらいたい。場所は世界樹ユグドラシルを覆う森の中。そこに救う魔物どもが姫君の祈りを邪魔しないように、守ってくれたまえ!』


『うおおおおお!!』


その声に答えるかのように雄たけびを上げている。


「やっぱり、か」


それに僕は置いてけぼりになる。


必死に別の可能性に縋り付いたが、答えは変わらなかった。


まあ、日にちや集合場所、周りの言葉を聴いたらどう考えてもこの答えに帰着するのは当然だろう。


『では、皆のもの行くのだ!!』


しかし、そんな僕のことなんて知らないのだろうアレックス近衛隊長は指示を出し、それに従って周りも動き始める。


その姿を見れば、全ての人々が意気揚々としていて立ち止まる人間も迷っている人間も誰一人としていない。


どうにもならないのだろう。


僕が受けたのは勅命で、それは拒否することはできない。


僕も、周りの人たちの後を追う。


確実に勝ち目のない戦いだろう。


僕の一番威力のある魔法である『ブレイブバスター』だってほとんどダメージなんてないだろうし、僕の素早さじゃあたることもないだろう。


ここは逃げの一手というか、できるだけ危険をやり過ごすように心掛けるのが一番だろう。


情けないし、口うるさく言われるだろうし、ビギナーランククラスの人間がAランククラスの魔物に戦わせる方がむりなんだから仕方ない。


一人残された広場から走り、唯一ユグドラシルの森に通じる門と橋を通ると、目の前は木々で鬱蒼としている。


『ナインズソード』


そして、僕は即座に戦闘態勢に入った。


既に周りを見てみれば、戦闘は始まっている。


とはいえ、どこにも僕が入れそうな隙はない。


やはり、レベルが違いすぎる。


目にもとまらない早さとまではいかないが、どれをとってもなんとか反応できると言った程度だろう。


下手に手を出しても、身を危なくするだけだ。


戦闘に巻き込まれない程度に強そうな人間のそばに居て、露払いをしてもらおう。


運がよければ、いい人がいればパーティに荷物もちぐらいで入れてくれるかもしれないし。


そう決めると、周りを見渡す。


人の気配はしない。


考え事に集中していたわけではないのだが、気がついたら周りには誰も居ない。


戦闘速度が速いので、戦場の移動も早いんだろう。


とりあえず、人のいる方向へと向かわないといけない。


幸い、戦闘音が聞こえるから、そちらへ向かえば大丈夫だろう。


慎重に歩みを進めれるが、不意に奥の茂みから物音がした。


冷や汗をかきながら剣を構えるとそちらを伺う。


再び、物音がすると、茂みから姿を現した。


目が合う。


『ブレイブバスター』


ちょうど中間あたりに魔法を打ち込み、砂煙を上げる。


「ダッシュ!!」


魔物だった。


ここは逃げるしかないだろう。


ただ、完全にロックオンされてしまったのだろう、背後から雄たけびと足音が聞こえてくる。


司会を奪ったから大丈夫だと思っていたんだけど、そうは問屋がおろしてくれないみたいだ。


追いかけてくるのはユグドベアと呼ばれるクマが魔物化したもので、動きはそんなに早くはないから捕まることはなさそうだが……


「本当に、これで早くないって言うのかよ」


追いつかれてはいないが差が広がっていないというちょっと厳しい状態だ。


体力は完全に向こうのほうが上だろうからジリ貧と考えるべきだろう。


「ええい、ちくしょう」


走るのをやめると向き合う。


ここは仕方ない、戦うしかないだろう。


下手に走り回ってさらに魔物と遭遇してはどうしようもない。


一応ユグドベアはそこまで強くない。


Fランククラスの人がパーティを五人ほど組めば倒せる相手だ。


まあ、ビギナークラスがソロで戦う相手としてはあまりにも強い相手ではあるが。


「勝てそうな気がしないけど、しかたないか」


とはいえ、ジリ貧である以上、戦わないわけにはいかない。


「いけっ!!」


ナインズソードを放つ。


とりあえず接近戦になったら完全にアウトだ、ここは距離を取るしかない。


「まあ、効くわけないよな」


とはいえどれもこれもかわされるし、当たったとしてもダメージは全くない。


「ああ、もう、これならどうだ!!『ナインズソード』」


もう一度九つの剣を呼び出すが、今度は属性を変える。


今度は闇の属性で、一応浸食の付加がついている。


「いけっ!!」


黒く輝くナインズソードを放つ。


しかし、効果なし


これもむなしく当たってもはじけるだけで、まるっきりダメージはない。


浸食のほうもほんの少しだけあたった場所だけダメージがあるだけで、そのダメージもあっさりと自己治癒されている。


ここは、う破れかぶれのブレイブバスターしかないだろう。


闇色に輝く球体が手のひらに浮かぶ。


乱発は出来ない。


一応、先ほど強襲の意味を込めて打ったときに威力を確認したが、ずいぶん攻撃力はあがっていた。


だから、もしかしたら闇の浸食の付加効力付きのこの魔法ならダメージを与えられるかもしれない。


とはいえ、もちろん当たらなければ意味がない。


意識を相手に集中させる。


大した知能のない相手は、一心不乱にこっちに向かって突進してくる。


『ナインズソード!!』


その足元に向かってブレイブバスターではなく、ナインズソードを放つ。


弾けた地面は土煙をあげて視界を奪う。


他のビギナーランクの魔法使いに比べてかなり劣っているが、それでも唯一のとりえがあるとするならば、それは魔法の数が少ないかわりに、使いこなせている分だけかなり速いスピードで魔法を展開することができることだ。


『エンジェルウィング』


それと同時に僕は空へと舞い上がる。


僕の第四の魔法。


仕事をしながら考えていた新しい魔法で、ソロでの行動を基本にしたいので身軽に動けるように身体能力を上げる魔法を作っておいたんだけど、それがさっそく役に立ったみたいだ。


初めて戦闘で使う魔法で、不安だったが成功してくれたみたいだ。


ただ、空を飛ぶという重力を無視した魔法なので、消費魔力が大きいから使い勝手はそんなに良くない。


さっきの逃げるときは使わなかったのは、それが理由だ。


『ブレイブバスター!!』


土煙が少しずつはっきりとしてきて姿を確認すると同時に放つ。


本来の力を発揮させている黒の閃光は先ほどと同じく今までのものとは違う。


身体からかなりの量の魔力が抜き取られていく感覚からも分かる。


これなら、いける。


爆音がとどろき、更に大きな土煙があがる。


声はない。


「やったか?」


少し離れた場所に着地すると魔法の羽をしまう。


魔力はまだまだ残っているが、それでもずいぶんと消耗してしまった。


やはり、ブレイブバスターもエンジェルウィングも今の僕が多用できるものじゃない。


「あはは」


思わず乾いた声が出た。


土煙が消えた光景を見たら、思わず出てしまった。


「よっしゃぁぁ!!」


それは歓喜の声。


直径2メートルほどのクレーターみたいなくぼみには、先ほど襲ってきたユグドベアの下半身が転がっている。


それがちょっとだけグロテスクだけど、勝ったには間違いない。


思わずその場に座り込む。


コアクリスタルを見てみれば、戦績がデータ化されている。


とりあえず、ビギナーランククラスの僕が一人でユグドベアを倒したんだから、かなりのポイントになるだろう。


「生きて帰れれば、だろうけど」


けれど、現実はどうやらどこまでも甘くはないようだ。


周りを見渡せば、四方八方敵ばかり。


爆音と血と肉の匂いにつられてやってきたらしい。


「絶体絶命、しかも、逃げられそうにもないなぁ」


見事に頭上は飛行タイプの魔物が陣取っていて飛行魔法を使っても逃げられそうもないというか、そっちに逃げたたら一発でやられるだろう。


しかも、見たところユグドベアなんか敵じゃない完全Aランククラスの敵がいらっしゃる。


完全にアウト。


『エンジェルウィング』


『ナインズソード』


今すぐにでも膝をつきたい気持ちだ。


まあ、覚悟していたといえば覚悟していた。


こうなる可能性があるのは分かっていたわけだし。


助けはない。


僕はここで死ぬのだろうか。


どう考えても倒せる相手ではない。


でも、諦めるわけにはいかない。


どうせ死ぬにしても、あがけるだけあがいて死にたい。


手のひらに闇色の球体を浮かべると構える。


そして、放とうとした。


「はい?」


思いっきり手をかざそうとしたところで白い光があちこちで落ちて、爆音が鳴り響いている。


当然そこにいた魔物は直撃を受けて、綺麗さっぱり消えている。


もう、呆然とするしかない。


そう思ったのもつかの間、爆音が消えてしまった。


周りを見渡せば、さきの僕が作ったクレーターもどきとは比べ物にならない大きなクレーターがいくつもできていて、敵は一匹たりともいない。


全滅させたみたいだ。


「大丈夫ですか?」


不意に頭上から声がしたので、そっちを向いてみると、二人の女の子がいた。


一人は銀色の髪をした女性で、もう一人は黒髪の女性。


どちらも僕よりも年下だが、ずいぶんと綺麗な容姿をしている。


そこにいるのは二人だけで、周りを見ても他に誰の姿もいない。


つまり、彼女たち二人に助けてもらったということなんだろう。


とはいえ、にわかには信じがたい。


あれだけの数を圧倒的にたたきつぶしたのが、目の前にいる可愛らしい二人の女の子だとはどうにも頭が理解してくれない。


「大丈夫です。すみません、ありがとうございます」


僕の目の前に降りてきたので、頭を下げる。


だけど、現実は現実。


先ほどまでいた魔物は綺麗さっぱりいなくなっているのだから、認めるしかないんだろう。


ただ、それよりも、自分より年下の女の子に助けられてしまうなんて、男としてはへこむほど情けない。


したかないと言えば、仕方ないのだが。


弱いのがいけないわけだし、何よりこんなところにいる事態がおかしいわけだし。


それでも、やはりどうしても多少の悔しさはある。


「貴方、Aランククラスではないでしょう?どうして、こんなところにいるんですか?」


銀色の髪をした子がそう言った。


どうやら、ばれてしまったみたいだ。


まあ、仕方ない。


コアクリスタルで作られている武器も魔力ダメージを軽減してくれる防具も、かなりみすぼらしいわけだし。


「はい、ビギナーランクになったばかりです」


嘘をついても仕方ない。


「最初の選択の時に光と闇の属性を選んだんで、それが原因で勅命を受けてしまったんです」


「あー、そう言えば確かにこの勅命は二属性を持っていたら全員当てはまるものだっけ。仮登録のゲストランククラスは一般クエストを受けられないから無理だけど、ビギナーランククラスは本登録だから条件に入っちゃうか」


今度は黒髪の少女がしみじみと頷いた。


「うーん、貴方、名前は?」


その彼女が続けた。


「アキラ・ヒイラギです」


「そう、ヒイラギさんね。私はミィーナ・ウェルノルンって言うの。隣にいる彼女がアイシャちゃん」


「アイシャ・ヴェーノンです」


黒髪の少女―ウェルノルンさんがそう自己紹介すると、銀髪の少女―ヴェーノンさんも続けた。


「あのね、これは提案なんだけど、助けておいてこのまま一人にしておくのは、ちょっと危ないと思うからなんだけど」


そう前置きを置くと


「一緒に行動しない?なんなだったら、貴方のポイント稼ぎの手伝いもするしさ」


そう続けた。


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