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魔法によって飛んだ空  作者: 元祖ゆた
異世界冒険編 
7/64

第六話 化物討伐隊 後編

後編は前編より長いです。

~前回のあらすじ~

でちゅわ!


その少年は、利発そうな顔立ちだった。

濃い茶髪のショートカットで、活発そうなイメージを受ける。鋭い目つきにスッとした鼻。この子は将来確実にイケメンになるだろう。


「お久しぶりです」


レオと呼ばれた少年が、握手を求めて僕に手を差し出した。同年代とは思えない礼儀正しさに驚いた。


「あ、えーと……?」


彼は僕に対し、『また会いましたね』とか、『お久しぶりです』とか言ってきたが、


「(まったく見覚えがないぞ……)」


困惑し、頬をポリポリと掻いた。

相手の方は僕のことを知っているようだが、いつ知ったのだろうか。

僕は今日初めて外出というものをしてみた身であり、それまでは家で引きこもって生活してきた。外部との接触と言えば、アルンティーネ家主催の誕生パーティくらいしかないのだが。


「(まっ、まさか魔法を使った外出中に?)」


姿を隠しての外出なら、両手じゃ数え切れないほどしている。しかしあの偽装は完璧だったはず。

結局いくら頭を捻っても、分からなかった。


「よ、よろしく」


そして流されるまま握手。敗北感が半端ない。


「いやぁ、こんなところで貴様に会えるとは思いませんでしたよ」

「き、貴様?」

「ん? 何か言葉遣いがおかしいでしょうか?」

「……いやー、いいんじゃないかな」


ニコニコと、笑顔を浮かべながら話すレオ。その間握手はしたままである。


「知り合いだったのね!」


ラズナティーニが会話に入ってくる。それにレオが答える。


「ええ、そうなんです。懐かしいですよ。昔トイレで一緒になって立ちションした仲なんですよ」

「マジで!?」


そんな仲だったの僕たち!? それをさも親しげな仲みたいに握手を求めてきたの? きたねぇ仲だな!

つーか長々考えていた僕がバカだった。トイレで一緒になった人なんて普通覚えてるかよー。


「なんでエーリが驚いてるんでちゅの……」

「ですよね」


まぁ僕も知らなかったからね。

でもなんだろう。こいつと会話していたら何かデジャヴがしてきた。前に似たような容姿の奴と会ったことがあるような?


「感動の再会も済んだところで……一応メンバー紹介といきまちゅか!」

「そうですね」


ここでようやく握手は終わった。汗でビッショリである。

ラズナティーニが僕とメドナの前に立つ。その後ろにレオ、ウィートという少年、ガラトという少年が立つ。


「わたくちは栄えある騎士の家系、シュガーネの長女、ラズナティーニでちゅわ! ラズ、と呼んでくだちゃい!」


貴族らしく、スカートの端を掴んでのお辞儀。不意に幼稚園のお遊戯会を思い出したのは内緒だ。


「分かった。よろしくラズ」

「よろしくお願いします、ラズ様」

「はい! よろしくでちゅわ! エーリ! メイド!」


ラズナティーニ――ラズは元気良く手を挙げた。

うん、すごく活発そうな子だ。周囲を明るくさせるムードメーカーだ。


「……あ、わたしはメドナと申します」

「分かったわ! メイド!」

「メドナです!」

「メイド!」

「……それで、いいです」


メドナは苦笑し、諦めた。その様子を見て僕は思わず吹き出し、メドナに睨まれるのであった。

次に、小柄でおどおどした少年が前に出た。


「あ、あのぅ。おいらは『ガラト・ムチリー』と言います。よ、よろし――」

「声が小さいでちゅわ! もう一回!」


ラズに促されて挨拶した少年――ガラトはもじもじしていて、ラズの言う通り声が小さく聞き取りづらかった。


「あ、あぁ、はいラズお嬢さまぁ。……お、おいらぁ、ガラト・ムチリーと――」

「まだ小さい!」

「許してくださーい! うわぁぁぁぁぁぁぁん!」


ラズに叱られ、泣き出してしまった。そんなガラトの前で仁王立ちのラズ。

……うん、二人の力関係が一発で分かる構図だね。


「まぁまぁラズ。そこまで怒らなくても――」

「ダメでちゅわ! シュガーネに仕えるフットマンがこんなだらしないのでは示しがつきまちぇんわ!」


あ、フットマンだったんだこの子。ガラトの下克上は難しいだろうなぁ。

ちなみにフットマンとは、男の召使いを指す。男版メイドである。

泣きじゃくるガラトに、ラズは疲れた顔をしてため息をついた。


「……はぁ。しょうがありまちぇんね。エーリの顔に免じてゆるちてあげるわ」

「うっ、ぐすっ。あ、ありがとうございますぅ。お嬢様ぁ」

「まずはそのきちゃない顔を拭きなちゃい」


ラズは顔面汁まみれのガラトの顔を、高そうなハンカチで拭いてあげていた。

へっ、なんだかんだ仲いいじゃん。


「よ、よろしくお願いします。エーリ様、メドナさん」

「うん、よろしくね」

「よろしくお願いします」


綺麗になった顔で挨拶。なんていうか、すごい幸薄そうな顔してるけど頑張れよ。


「いよいよ私の出番のようですね」


最後に、二人の少年が僕らの前に立った。


「私の名前は『レオーニ・ニグル・アクトゥース』。誇り高きニグルの姓を持つ者です。そしてこっちが……」

「……ウィート。『ウィート・シレマ』」


知的そうな少年は、レオーニ・ニグル・アクトゥースと名乗った。

なるほど。どこかでデジャヴを感じていたけど、こいつは親族だったのか。

一年前、リエールモとかいう馬鹿な貴族がウチのメドナに迫った事件があった。そのリエールモの正式な名前はリエールモ・ニグル・アクトゥース、らしい。

うん、見れば似ているな。案外兄弟かもしれない。


「レオって呼んでください。こっちのウィートはそのままウィートで」

「了解。よろしくレオ、ウィート」

「よろしくお願いします、レオ様、ウィート様」


ウィートという少年は、寡黙だ。

さっきからほとんど喋ってないけど……。

そんな僕の様子を察して、レオが補足した。


「ウィートは恥ずかしがり屋なんです。でも、私の頼れるフットマンです」

「……」


ちょっと頬を赤くするウィート。照れてる照れてる。

ていうか、ウィートもフットマンか。やっぱり貴族には一人フットマンかメイドが付くしきたりでもあるのかな? すっごくありそう。


全員が挨拶を終え、ラズが僕とメドナの後ろに回った。


「ほら! 後はあなたたちの番でちゅの!」

「わっ」

「ひゃっ」


そして軽く前に押した。目の前には三人の少年たち。

一人は弱気な瞳で、一人は落ち着いた瞳で、一人は見定めるような瞳で、各々が見ていた。

ははっ! 今更だけど気が付いたよ。これはあれだね、噂に聞く……


「エーリ・アルンティーネだ。エーリでいい。よろしく!」

「エーリ坊ちゃまの専属メイドをしております、メドナと言います。よろしくお願いいたします」


公園デビュー、と言うやつだね!





「化物はこの井戸の中に潜んでおりまちゅの!」


ラズをリーダーとした化物討伐隊が結成されて十分後、作戦会議が行われた。

基本的な情報として、井戸は現在使われていない古井戸であり、広場の真ん中に鎮座している。直径は人一人入れるくらい。深さは不明だが、小石を落としてみると、それなりの深さがあることが分かった。

ここ最近、深夜にこの広場から変な声が聞こえるらしい。それで気になった付近の住民が、深夜に広場へやって来てみると、


「この井戸から化物が!」

「きゃあああああああああああ!」


ラズの脅すような言葉に、悲鳴を上げて僕の後ろの隠れるメドナ。

……ちょっと可愛いな。

メドナはちょっと恥ずかしそうに、


「……す、すみません。そういうの苦手で」


そう言ってまた隠れてしまった。

ラズはちょっと楽しそうだった。あの顔はまたやる顔だなぁ。


「とにかく、化物が出たらちいのでちゅ。今のところ被害はないようでちゅが……」

「何か問題を起こす前に退治したいということだね?」

「そうです。こういうのは事前に防ぐのがベストです」


主に僕、ラズ、レオの三人で話を進めていく。ラズは思ったより理解力が早く、司会として話を円滑に回してくれた。


「今日もこうして見張っていたのでちゅが、現れないでちゅの」

「目撃されたのが深夜ですからねぇ。私たちも深夜に見張れば見れるかもしれませんが」

「ダメでちゅ! 夜八時には寝なきゃ大きくなれないのでちゅよ!」


ラズは人差し指を立ててそう言った。

なんか心がほっこりした。いつからだろう、平気で夜ふかしするようになったのは……。


「背が低いままなのは嫌ですね……」


そして真剣に悩むレオ。あー、ナニコレすっげぇ微笑ましい!


「だから今、化物を退治するの!」

「今って……どうやって?」


僕がそう言うと、ラズはニヤリと笑い、


「井戸に潜入調査! でちゅわ!」


再び人差し指を立てて、言い放った。

まぁ、予想していたけど……。


「まずは井戸を覗いて見まちゅ!」

「お、お嬢様。危険では」

「うるちゃい! 見るだけでちゅよ!」

「ひっ! ご、ごめんなさい」


止めようとしたガラトは呆気なく撃沈。ちょっと立場弱すぎない?

ラズは井戸を前傾姿勢で覗いた。スカートからパンツが見えそうになっているが、彼女は気にしない。


「うーん。見えまちぇん」


そうだね。僕らも見えないよ。


「エーリ坊ちゃま……?」

「大丈夫。ラズ越しの景色を見ているだけだから」


そもそも僕は精神年齢十五歳の高校一年生だ。四歳児のパンツ見て喜ぶ変態ではない。

というか、四年経ってるから精神年齢十九歳かな? だとしたら大学一年生なんだが。

どちらにしても、四歳児のパンツ見て喜ぶ奴はいない!


「坊ちゃま?」

「分かってる、分かってるから」

「じゃあなんでスカートガン見してるんですかねぇ……?」


僕は一体どうしたのだろう? もしかしたら変態だった……?


「あっ! 何かいましたわ!」


目を瞑って精神統一していると、ラズからの報告。

レオと共に井戸へ駆けつける。


「何がいた?」

「分からないけど……何かこう、長いものが」

「どうにかして引っ張りあげたいところですが……」


長いもの……蛇とかだろうか。異世界だし、アナコンダ的な巨大蛇が住んでいる可能性もあるな。

考えを巡らせていると、レオがポケットから杖を取り出した。

え? まさか。


「何か井戸の中に魔法をぶち込んでみましょう」

「ああ、レオは魔法が使えるのでちたわね」


そう言って値段の高そうな杖を構え、詠唱を始めた。

レオが魔法使えるとは。こんな小さいのに、優秀だなぁ。

前にメドナに聞いた時、この世界の人が初めて魔法を習得するのは大体五歳から七歳までの間らしい。だから赤ちゃんの時に取得した僕は相当な異端児だったわけだが、四歳で取得しているレオも結構な異端児だ。


「『放て! 猛き炎の侵食を!』」


レオの杖先へ魔力が集中する。そしてボッという音と共に、火の玉が顕現する。

魔法大全で見たことがある魔法だ。ベリーチェは確か『ファイヤボール』って呼んでいた。


「す、すごいですわ!」

「火の玉、ですねぇ……」


ラズ&ガラトコンビはビックリしている。逆にウィートと僕とメドナはそこまで驚きはしなかった。

レオは僕の薄い反応に、含みを持った笑みを浮かべた。


「あまり驚いてないようですね」

「いや、これでもビックリしてるんだけど」

「まるで普段から魔法を使っているかのような反応です」

「……そんなことはないさ。僕は魔法なんて使えない」


レオは僕の返答に苦笑した。

こいつは僕が魔法使えることを知っているのか? いや、ただ疑っているだけか?

まぁ、要注意だな。


「では、この『火の弾丸』を撃ち込みます」

「頼みまちた!」


レオは空中で待機させていた火の玉を、


「シュート!」


掛け声と共に発射した。火の玉は吸い込まれるように井戸の中へ入っていった。


「おおっ、綺麗に入ったなぁ」

「後は化物に当たれば一番ですが……」


着弾したのかどうかはレオ自身にも分からないらしい。しばらく井戸を取り囲むようにして構えていた。

……が、何も変化なし。


「……外れましたかね?」

「うーん。どうだろ」


僕とレオは判断に悩んでいた。するとラズが、


「とりあえず覗いてみまちゅわ」


そう言って井戸を覗き込んだ。

自体が動いたのはその時だった。


「ッ! きゃ――」


再び前傾姿勢になっていたラズの体に、長い何かが巻き付き、井戸の中へ引きずり込まれた。

それは悲鳴もできぬスピードだった。


「! お嬢様!」

「ラズ!」


僕らが駆けつけた時にはラズは暗い井戸の中。暗くて姿が見えない。


「ど、どうしましょう! どうしましょう! うぅ」


泣きそうなガラト。他のメンバーも混乱している。

僕はというと、


「メドナ、皆を頼む」

「え? ちょ、坊ちゃま!?」


井戸へ駆けつけてすぐに中へ飛び込んだ。





井戸の中は暗くて狭くて臭い。そんな中を、僕はエアロスターによって急下降していった。

やがて井戸の底に付いた。底はちょっと広くできている。

上からの光も届かない闇の空間で、僕はバッチリ周囲が見えていた。

強化魔法の『イビルアイ』だ。自身の目を強化し、望遠・広視界・暗視・透視ができるようになる。

変態が使えば最高の覗きツールとなるが、僕のような紳士が使えば最強の暗視ゴーグルとなる。

底にはラズはいなかったが、壁に穴が空いているのが見えた。

早速中へ入る。横穴は小さく狭く、エアロスター版ほふく前進で進んだ。すっごく快適。

やがて穴は、一つの洞窟へとたどり着いた。


「な、なんだこれ……」


思わず声が漏れる。それはそうだ。

井戸、横穴と小さく道を通ってきたが、その先がこのでっかい洞窟だ。新宿駅くらいあるんじゃないのかな?

とりあえずラズがどこにいるのか捜そうとしたが、


「(穴が多いな……)」


洞窟なのだが、天井までが広く、壁には小さな穴がたくさんあった。どこに連れ去られたのか判断しにくい。

よし、ならば鼻を強化する強化魔法『バキュームノーズ』を使うか。そう考えていた時、誰かの気配を感じた。

振り向くと、


「やぁ、私も来ちゃいました」


火の玉を明かり代わりに使っているレオだった。

僕は見知った人だったのでちょっと安心し、すぐにマズったなーと後悔した。


「よくここまで来ましたね。しかもこんな暗い中を明かりもなく」

「……まぁ、目が良いからね」

「ははっ、そういうことにしておきましょう」


……魔法使ったのバレバレだろうなぁ、はぁ。

ま、こいつだったら人に言い触らすような性格じゃないだろうし、いいかな?

ホントに?


「それにしても驚きましたよ。井戸の先にこんな洞窟があるなんて」

「なー。こりゃ大発見だよ」


とりあえず魔法を使ったことについては言及してこないようなので、今はいいだろう。

それよりも、だ。


「ラズは恐らく、これらの穴のどれかの先にいるでしょうね」

「そうだね。面倒くさいことに」


穴は見たところ百は超える。しかも、各々どこに繋がるのか分からないブラックボックス。

やっぱりバキュームノーズ使うべきだな。そう思い、魔法を使おうとしたが、また遮られることとなる。


「なっ! レ、レオ!」

「……ッ! これはこれは」


僕らはすぐ背中を合わせて構えた。いつまにか、僕らを囲むように何かが蠢いていた。

いや、何かの姿は僕には良く見えている。が、こんな生物今まで見たことがなかったのだ。

長い舌をチロチロと動かし、まん丸の目玉をギョロギョロと動かし、四足歩行で立っている。全体的に緑色をしており、背中はブツブツのイボだらけ。

なんだろう。元の世界の生物で例えると、犬のようなカエルとでも言うべきか。


「これは私の『火の弾丸』に反応しているようですね」

「火……というか温度変化に反応しているのかも」

「なるほど。面白い考察ですね」


僕らが会話している間も、真っ赤な舌が怪しげに揺れる。

……殺るか。ドラゴンを倒した僕ならできるはず。

ラズがこいつらを捕食しているかもしれない。今なら治療が間に合うかもしれない。

ふとレオの方を見ると、目が合った。レオも殺る気だった。

よし、それなら二人息を合わせて、


「行くぞ! レオ!」

「ええ! 背後は任せました!」


僕は三歳の誕生日に貰った指輪に魔力を込めて、消滅魔法『イレイザーテリトリー』を発動させようとした――


「ちょおおおおおおおっと、待ったあああああああああ!」


どこかで聞いたことのある声が、洞窟内に響き渡った。静止する僕とレオ。

やがて一つの穴から、ラズと犬カエルがやって来た。犬カエルの頭の触覚が、明かりを灯しているためラズは僕らのところまで安全に来れた。


「ラズ! 無事なの?」

「この通り、無傷でちゅわ!」


両手を腰に当てて自慢げなラズ。その姿は井戸に引っ張られる前と変わらない。

おっと、イビルアイがラズと透視し始めたのですぐに解除した。


「それより、これは一体どういうことでしょう?」

「この子たちは悪くないでちゅの! 悪いのは貴族でちゅの!」


ラズの発言に眉をひそめる僕とレオ。貴族?

そんな僕らに、ラズは一緒にやって来た犬カエルを持ち抱えて、


「この子、これを見て」


触覚の根元を見せつけた。見てみると、何かタグが付いている。


「これは……ハーネスかな」


元の世界では主に、犬に付けられていた。要は首輪だ。


「名前まで書かれていますね。ふむ、名字から察するに、所有者は広場付近に住む貴族のようですね」

「へぇ。ってことは」


ラズは肩を竦め、


「ここでこっそり飼っていたようでちゅね」





後日談である。

広場付近に住んでいるとある貴族は、元々ペット用の林で犬カエル――ティンダロスというペットを飼っていたらしい。

しかし、林までは距離があり、四六時中会いに行くことができない。そこで彼は考えた。

誰も使っていない井戸の中で飼えばいい! と。

そこで井戸の底に横穴を作り、掘ってみると、偶然洞窟に繋がった。そこは中々の広さで、ティンダロスを飼うには最適だったらしい。やがてティンダロスをそこで飼い始めたわけだが……。

ティンダロスは繁殖し続け、飼い主の思った以上に増えてしまった。

やがて手に負えない数になり、飼い主は放置することにした。

ティンダロスはあまり食べ物を必要としないが、それでも食は必要だ。

それが変な声となって、広場に響き渡ったのだった……。





「ってな感じ」

「は、はぁ」


アルンティーネの邸宅の自室。僕はメドナと優雅なティータイムを楽しんでいた。


「この件をレオが国王に報告し、無責任な貴族はペット全てを連れて国から追放されたよ」

「結構罪重いですね」

「貴族としての責任放棄に当たるんだって。良く知らないけど」


ペット放置で追放か……。まぁ、元の世界じゃありえない判決だなぁ。

とにかく、これで化物騒ぎは終了だ。問題は今後レオに魔法について口封じすることだが。

作戦を練ろうとした時、コンコンと窓を叩く音が。


「エーリ! 遊びに来たでちゅよ!」


窓を開けると、お隣さんのラズだった。最近は良く遊びに来るようになった。


「おう。まぁ上がってよ。……って今日も連れてきたの?」


そして、毎回ある生き物を一緒に連れてくるのだ。


「もちろんでちゅ! この子、わたくちに懐いちゃって」

「ばぅ!」


相変わらず長い舌をチロチロと動かして、目を忙しなく動かしている。

ティンダロスである。ニックネームは『ラブリー』。命名ラズ。


「ばぅわ!」

「きゃっ! こらラブリーくすぐったいでちゅわ!」


ペロペロとラズの頬を舐めているラブリー。うん、なんか意外と和むなぁこの光景。


「さぁ、エーリも一緒に遊ぶのでちゅわ!」


ラズは楽しそうに、ラブリーを連れて外へ走る。

メドナはその様子を見て、


「……ラズ様はラブリーちゃんに懐かれたようですが、エーリ坊ちゃまはラズ様に懐かれたようですね」


と呟いた。

僕は言い得て妙だなと思いながら、ラズの後に続いて駆けていった……。

ここで一回エーリの今までに使った魔法を整理



僕の空エアロスター

飛行魔法。身一つで自由に空を飛ぶ。


『ミラージュデコイ』

幻想魔法。対象を自分そっくりに見えるようにする魔法。触れても気付くことができない。ただし、込められた魔力以上の攻撃を受けると消滅する。


『ミラージュコート』

幻想魔法。自身を周りの色と同化させる魔法。相手に自分の姿が見えなくなる。ただし、見えなくなるだけで、呼吸や歩く音等は消せない。


『パワーコンダクト』

誘導魔法。対象を指定した場所へ誘導する魔法。対象は自由に選べるが、規模が大きくなるとその分魔力を消費する。扱いづらい魔法。


『エアロスケイル』

風魔法。飛行する上で障害となる要素を、周囲の風を纏うことによって排除する魔法。


『エナジードレイン』

吸収魔法。対象の魔力を吸収して自分のものとしてしまう魔法。


翼竜落としメテオフォール

撃墜魔法。破壊力に特化した魔法。魔力の全てを衝撃に変換し、相手に叩きつける不可視の隕石。魔力を恐ろしく消費するが、威力・範囲・命中三拍子揃った魔法。


『サウンドスティール』

音魔法。遠くにある音を聴き取る魔法。超精密盗聴器とでも言える。


『エアーウォール』

風魔法。空気の塊で壁を生み出す。簡単便利。


『エアーブレッド』

風魔法。空気の塊を弾丸のように撃ちだす。別名空気砲。


『ワードコーティング』

洗脳魔法。自身の言った言葉を相手に信じ込ませる魔法。相手はそれを事実として認識する。


『イビルアイ』

強化魔法。自身の目を強化し、望遠・広視界・暗視・透視ができるようになる。


『バキュームノーズ』

強化魔法。自身の鼻を強化し、対象の匂いを辿ることができる。


『イレイザーテリトリー』

消滅魔法。不明。


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