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魔法によって飛んだ空  作者: 元祖ゆた
運営会選挙編 
50/64

第四十九話 第二夜 魔宴 前編 <五日目>

~前回のあらすじ~

再び捕獲ならず。


………………<メドナ>

「月の綺麗な今宵、魔女の棲家であるサタン・ジェロカス城に、再び争いの火種が植え付けられました。そうです、二回目の魔女の夜会ナイトパーティでありまぁすッ!」

「「「ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」


「本日も気温が落ち込む中、この会場――現世の闇ダークホールは熱気に包まれております! それもそのはず、今日で決着がついてしまうかもしれないからです!」

「「「いやああああああああああああああ!」」」


「前回の儀式、異端審問では戦乙女ワルキューレがスマートに勝利をおさめましたことにより、戦乙女は今日の儀式で勝利することにより白星が二つとなり、そのまま魔女の夜会の勝者――黒魔女マレフィキウムとなります!」

「くふふふ……。ということは、聖女ジャンヌダルクは今日の儀式で何が何でも勝利しなければならないということだな?」

「そうです、そういうことです! しかし暗闇ちゃん、聖女にはキッツイ縛りがありますが大丈夫でしょうかねぇ?」

「縛り?」

「ほら、魔女が絶対従わなければならない魔女の掟ウィッチルールの第七条にこうあるじゃないですか。『黒魔女は、争いにおいて他集団に負けない』と。現在の黒魔女は戦乙女ですので、聖女は勝てない運命にあるということです! この縛り、どう突破するのでしょうか?」

「くっふふふふ! 何を言い出すかと思えば、今更そんなことか蒼海よ」

「そんなことって……厳しいルールではありませんか?」

「こんなもの、いくらでも抜け道はあるさ。本当に厳しいルールなら、聖女は第一夜の時点で参加はしていないだろう。それよりも、今一度魔女の掟を確認しておいた方が良いぞ?」

「は、はぁ。そうですか分かりました。では、魔女の掟を確認いたしまぁ~す!」



<魔女の掟>

第一条

魔女の月は、魔女の組織である。加入するには、暗闇の魔女の召喚する悪魔と契約し、魔女にならなければならない。


第二条

魔女の月は、魔女の夜会によって黒魔女を決めるものとする。黒魔女は、魔女の月を仕切る集団となる。


第三条

魔女の月は、黒魔女主導のもと、運営される。全ての魔女は、黒魔女の下に集う。


第四条

魔女の月は、魔女同士の争いを禁止する。ただし、魔女の夜会では争いを認める。なお、魔女以外は魔女の夜会に参加できない。


第五条

黒魔女は、魔女の夜会で敗れた組織から、魔女を自分の集団へ同意なしで引き込める。


第六条

黒魔女は、魔女の夜会で行う儀式を選ぶ権利がある。


第七条

黒魔女は、争いにおいて他集団に負けない。



……。

…………。

………………。

「え~、更に詳しいことを述べますと、魔女にとって魔女の掟は絶対遵守であり、破ると魔女としての力を失うだけでなく、契約した悪魔に食べられ――いや、なんかグロい目に遭います!」

「……誤魔化せてないぞ。食べられって、言ってしまっているぞ蒼海よ」

「魔女の掟は全部で七条まで存在し、五、六、七条はその時の黒魔女が自由にルールを定めることができるということになっております! つまり、今の五、六、七条は現戦乙女が定めたものということですね! エグイですね~」

「くふふ、自分達に有利な掟を定めるのは当然だろう」

「そんなわけで、この魔女の掟を念頭に置きながら、魔女の夜会を始めていきましょうか! まずは選手入場から~」


バシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!


「魅惑の紅き髪は返り血か、それともただの鼻血か? 赤コーナー、ローニャ・エトーリア率いる、戦乙女!」

「きゃあああああああああ!」「ぶひいいいいいいいいいいい!」「大好き! 愛してる! 結婚して!」


「鼻血な訳ないでしょうが!」

「うむ、これは地毛だ」

「ローニャ、別に真面目に答えなくてもいいんだよ?」


ボシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!


「爽やかな蒼い髪はサイダーか、またはソーダか? はたまたラムネだったりするのか? 青コーナー、ジェノーヴァ・ヴァンジーニ率いる、聖女!」

「おっぱい!」「おっぱい!」「おっぱい?」「おっぱい!」「おっぱい!」「おっぱい!?」

「せーの!」

「「「おっぱいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」」」


「もう、ノヴァはツッコミし切れないです……」

「おっぱい!」

「ラージャたんまで!?」

「……お、おぱ、おっぱ……」

「メドナたん、そんな顔真っ赤にして真似しなくていいです」


「本日の舞台も、サタン・ジェロカス城の一階にある現世の闇! 儀式内容については、魔女の掟・第六条によって、戦乙女に選択権があります! 何にします?」

「『魔宴』だ」

「魔宴! なんとあの魔宴を選ぶとは! というわけでぇ、三夜によって行われる魔女の夜会注目の第二夜は、魔宴です~ッ!」

「うわあああああああああああ!」「きたああああああああああああ!」「結婚してええええええ!」


「司会進行はこのわたくし、『前回根暗って言ったのに、興味本位か知りませんが、波のように魔女達がわたくしの下へ押し寄せてきて終始苦笑いしかできませんでした。本当にプライベートは勘弁して下さい……』でお馴染み、蒼海の魔女がお届けいたします! それと!」

「解説実況は我、『地獄の声を聞いてごらん。ほら、恐怖に歪んだ絶叫が、鼓膜を突き破って聞こえてきただろう? お 前 自 身 の 悲 鳴 が な』、暗闇の魔女だ。精々我の手のひらで躍るがいい」


「今回もこの仲良し二人組が仕切っていきまぁす! それでは前回同様準備に入りますので、少しの間両集団の方々には控室に戻っていただきます!」

「「「ぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」」」「クソが……」


「はぁ~い、お決まりのブーイングに紛れてマジトーンのブーイングが聞こえたのを、わたくしは聞き逃さなかったですよ~? ……そういうの本当に傷付くので止めて下さい。マジで」

「真顔でマジトーンはお前の方じゃないか。くふふふ」

「それでは十分後、またお会いしましょう! あ、でもわたくしが精神的に立ち直るまで時間がかかるかもしれないので、その時はごめんなさ~い!」

「相変わらずメンタルクソだな蒼海よ」

「言わないで!」





「読み通りです!」


控室に入って開口一番に、ノヴァ様がそう言い放ちました。その表情はとても自身に満ち溢れております。


「確かに、魔宴と言っておりましたね」

「です! やっぱり予習しておいて正解です!」

「さすが姫。勘のよさだったら誰にも負けませんね」

「ですです! もっと褒めるです~」

「この醜い魚風情が! ここは魚市場か!」

「あぁ、もっと褒めるです! まだまだ生温いですよ~」


……ドエム姫、まだ続いてたんですね。


「メドナたん、特訓の成果だせそうですね?」

「……そうですね。絶対に勝ちましょう」

「勿論です!」


ノヴァ様が満面の笑みを浮かべました。私もつられて笑顔になりました。


実は、今日の放課後からこの時間まで、ずっと儀式へ向けて特訓をしていたのです。ノヴァ様が全ての儀式を見直し、その中から戦乙女が選びそうなものを予測し、それに対する策を考え、練習する。

今日の私達は前回と違い、既に予習済みなのです。


「とはいえ、向こうも練習はしているです。これで勝った気になっちゃいかんですよ。スタートラインに立った、と思うべきです」

「そうですね。瞬殺と言うことはないでしょうけど」


瞬殺……。苦い思い出が頭をよぎります。

前回は本当に勝負にならなかったですからね。あの日は悔しい思いが心を支配してどうしようもなかったです。


でも、私達だって、やればできるのです。それを証明しましょう!


「ただし、魔宴はどんなに練習しても本番にならなきゃ色々と分からないんですよね」

「それ言っちゃダメです!」





司会の方に呼ばれて会場に入ると、既に戦乙女の方々が集まっていました。

フレンシア様が一歩前に出ます。今日も可愛らしいウサギ耳がピョコピョコ動いております。


「ふん、よくもまぁあんな無様に負けておいて出られたものね!」

「「「……」」」

「ま、今回もあたい達の圧勝でしょうけどね!」

「「「…………」」」

「……せ、精々負けて泣き喚くがいいわ!」

「「「………………」」」

「何か言いなさいよっ! 寂しいじゃない!」


私達が無言でいると、とうとう涙目で訴えてきたフレンシア様。なんとなく、彼女の扱い方を学んだ気がします。失礼な話ですが。


憤慨して耳を赤く染めるフレンシア様の左右に、ツァーチ様、ローニャ様も一歩前に出て肩を並べました。お二人はフレンシア様の行動に呆れているご様子。保護者的立ち位置なのでしょうか?


「フレンシア、こっちが恥ずかしいからそういう小悪党ぶるのやめよう? ね?」

「誰が小悪党よ! あたいは大悪党よ!」

「どっちにしろ悪党なんだなフレンシアは」

「そうよ! ローニャが勇者だとしたら、あたいは大の悪党。何故なら、あたいとローニャは永遠のライバルだから!」

「ライバル……?」

「そこで疑問形持つんじゃないわよ!?」


どうやら、フレンシア様は聖女だけじゃなく戦乙女でもおもちゃ扱いになっているようですね……。それだけ親しみを持たれているということの証明にもなりますが。


「こんなおバカ軍団には負けないです!」

「誰がおバカ軍団だ。おバカなのはフレンシア一人だ」

「そーよそーよ! 誰がおバカぐんだ――アレ? 今あたいの名前出さなかった?」


向かい合い、睨みあうノヴァ様とローニャ様。見えない火花が、お二人の間で激しく散っているように思えました。

以前のような緊張感は覚えませんでしたが、油断してはならないと、本能が警告を鳴らしております。相手は一度、わたし達に勝っている。これだけは絶対に忘れてはならないと思いました。

負けられない戦いです。シェーナ様のためにも、聖女のためにも、わたしができることは精一杯頑張りましょう。


そう決意し、わたしは会場に目を向けました。

前回開かれた異端審問の時とは違って、会場が広いように感じました。それもそのはず、今回は会場を埋め尽くす程のエキストラがいないのです。簡単に言えば、儀式に参加する人と司会しか会場にいませんでした。


人以外であるのは、複数人で利用するような円形のテーブルが一つと、聖女と戦乙女の代表メンバー分の椅子だけ。これがだだっ広い会場のど真ん中に鎮座しているだけなのです。広く感じてしまうのは仕方のないことですよね。


そして、今日はギャラリーもいません。儀式が儀式なだけに、ギャラリーを置けないというのもあるのでしょう。


わたし達が集まっていると、司会の二人がやってきました。手入れのされていない黒の長髪を床に引きずりながらやってくるのは暗闇の魔女。

デーモン族特有の悪魔の目だけでなく両目まで隠すような前髪によって、顔の半分は見えておりません。前が見えていないはずですが、それでも悠々と歩いてきているので、何らかの補助魔法を使っていることでしょう。


それと、暗闇の魔女の隣をキビキビ歩いているのは蒼海の魔女です。艶のある水色の髪をなびかせて歩く様は、とても美しく目を奪われるようです。

しかし、当の本人はどこか落ち着きがなく、挙動不審なのでそちらの方が目立っている印象です。どうしたのでしょう?


わたしの小さな疑問が解消する前に、暗闇の魔女は、出場するメンバー全員に声が届く位置までやって来て、そこで皆の顔を見渡して話し始めました。蒼海の魔女は暗闇の魔女から一歩引いた位置で静かに見守るようです。未だ忙しなく目線を泳がせておりますけど。


「皆、揃っているな?」

「です」「ああ」


聖女、戦乙女を代表してノヴァ様とローニャ様が受け答えをします。先ほどまでいがみ合っていた二人とは思えない冷静さです。


「今回の儀式が魔宴ということで、ギャラリーには帰ってもらった。結果に関しては後日発表するつもりだ」

「まぁ、妥当だな」

「邪魔されたら困るです」

「そういうわけで、早速儀式を始めるぞ。会場中央にある円テーブルまで来い」


暗闇の魔女の言葉に従い、わたし達は動きます。いよいよ、儀式が始まります。


「それでは、移動しながら軽く儀式について説明するぞ。蒼海」


それを、これから蒼海の魔女が説明してくれるそうですが……暗闇の魔女に呼びかけられた蒼海の魔女は、どこかおどおどとしておりました。


「あ! あぇ、は、はぃ!」

「……ここで人見知り発揮してどうする?」

「いやだって知らない人と距離近いしわたくし皆と話したことないしなんか怖いしもう帰りたいよぉ……ぼそぼそ」


言葉の最後の方は消え入るような声だったので、何を言っているのか分かりませんでした。

それに様子も、挙動不審だったのですが今は顔を俯かせて無言で突っ立っているだけです。彼女に一体何があったのでしょうか?


「大勢いる時は大丈夫だというのに……くふふふ、愚かだな」


そう言って、暗闇の魔女はローブのポケットから小さな杖を取り出し、蒼海の魔女に手渡しました。すると、蒼海の魔女は杖を持って何か詠唱を始めました。呟くような声で、これも正しく聞き取ることが出来ません。


「蒼海はな、実は超人見知りで恥ずかしがり屋なのだ。我と話す分にはいいが、これでは生活していけないだろう? だから治療として司会をしてもらっているのだ」


隣に立つ暗闇の魔女が、ふーっと息を吐いて補足説明をしてくれました。意外と面倒見がいいですね。人見知り情報よりそっちに驚いてしまいました。


なるほど、蒼海の魔女は恥ずかしがり屋だったのですね。それならあの怪しい様子にも説明がつきます。司会をしている時とのギャップがすごいですね。


わたしと同じく、説明を聞いて納得しているような素振りを見せる代表者達。ツァーチ様は元々知っていたのか、反応は薄いです。


「そういうことだったのですね……。それで、今蒼海の魔女が発動させようとしている魔法は?」

「治癒魔法の一つだ。心を癒し、脳を麻痺させ、一時的な興奮状態にする効果のある魔法だったか」

「え、それって……」


要するに酒酔いではないですか、と尋ねる前に、詠唱を終えた蒼海の魔女が飛び跳ねました。


「皆様! 大変ッ! ご迷惑をッ! おかけしましたぁ~っ! もうわたくしは大丈夫ですのでご心配はいりませんよ!」

「は、はぁ」


目まぐるしい変化で状況をきちんと飲み込めないわたしですが、話が進むのなら良しとしましょう。

早速、元気になった蒼海の魔女が、嬉々として魔宴の説明を初めてくれました。

魔宴……名前こそ禍々しいですが、実は他に魔宴という儀式を的確に示した言葉が存在します。


「えっとですねぇ~、これから皆さんには円テーブルを囲むように座っていただき、中央に用意されます大きな容器に、自身の選んだ食べ物を入れてもらいます! その際この会場を暗くし、何を入れているのか本人にしか分からないようにしますぅ。そうして、六人全員が入れたところで容器に蓋をし、数十分煮ちゃいますっ! やがてその容器から順番に入れたものを取り、食べてもらいます! これを繰り返して最後まで生き残った人のいる集団が勝利となります!」


そう、この説明だけで全て察することが出来ます。

魔宴とはつまり、要するに、簡単に言うと、俗に言う、



「闇鍋を、してもらいまぁ~すっ!」



そういうことのようです。

・次回後編予定です。

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