第三十九話 第一夜 異端審問 <三日目>
~前回のあらすじ~
大乱闘の末、得たのは勝利のみだった……?
………………<メドナ>
「さぁ! 闇が蠢き、月が笑うこの時期がやってきました! そうです、魔女の夜会です!」
「「「ふううううううううううう!」」」
「年四回行われる運営会選挙に合わせて開催される魔女の夜会! 今年で四回目となる、今回の魔女の夜会ですが、早速出場集団を紹介したいと思いますッ!」
「「「きゃあああああああああああ!」」」
「おいおい、まだ紹介してないってのに観客席は既に最骨頂! あんまテンション上げすぎて、後半グダらないよう注意してねーっ!」
「「「はあああああああああああい!」」」
「ようし、ではでは発表しちゃいたいと思いますぅ! 今回は二つの集団が名乗りを上げてくれました! 紹介しましょう、赤コーナー!」
プシュウウウウウウウウウウウウ!!
「ここ数年でメキメキと頭角を現し、魔女の月絶対的王者となった集団! 鮮烈な赤い髪が、今日も戦場を駆け抜けるッ! ローニャ・エトーリア率いる、戦乙女!」
「きゃあああああああああ!」「きたあああああああああああ!」「結婚してええええええ!」
「いやあ。大人気だねぇ、ローニャは」
「当たり前でしょ! なんたってあたいが唯一勝てない相手なんだから!」
「……あれ? ジェノーヴァにもボロ負けしていた記憶があるんだけど?」
「そっ! そ、そそそそそれは記憶違いね。ええ!」
「おまえ達、お喋りはそのへんにしておけ。……来るぞ」
「今では魔女の月の一大勢力となった戦乙女! そんな王者に挑むのは、かつて栄華を誇っていたあの組織!? 青コーナー!」
プシュウウウウウウウウウウウウ!!
「たった三人という少数精鋭で、王者戦乙女に食らいつくルーキー集団! 神秘の蒼い髪が、ゆっくり歩みを進めていくッ! ジェノーヴァ・ヴァンジーニ率いる、聖女!」
「おっぱい!」「おっぱい!」「おっぱいいいいいいいいいいいいい!」
「ノヴァ達のだけ声援おかしくないです!?」
「それ程までに姫のおっぱいは魅力的なのです。揉んでもいいですか?」
「いいわけないですっ!」
「本日の舞台は、サタン・ジェロカス城の一階にある現世の闇となりますぅ! 肝心の儀式内容ですが、魔女の掟に従って、現在の黒魔女である戦乙女に決定権があります! ええと、なんでしたっけ死女神ちゃん?」
「『異端審問』だ」
「異端審問! これはまたえっぐいのを選ばれましたねぇっ! というわけで、三夜によって行われる魔女の夜会第一夜は、異端審問でぇ~す!」
「いえええええええええええい!」「ヒューヒュー!」「結婚してええええええ!」
「両集団が揃っているところで、魔女の夜会・第一夜・『異端審問』を開催したいと思います! 司会進行はこのわたくし、『実は結構根暗で有名なんです、プライベートで会っても声をかけないでください……』でお馴染み、蒼海の魔女がお届けいたしま~すッ! そして!」
「解説実況は我、『混沌の地にやって来た、有象無象を駆逐する悪魔の支配者』、暗闇の魔女だ。くふふふ、凡愚共、精々我を楽しませるのだぞ」
「というわけで、この仲良し二人組が仕切っていきますので、よろしくお願いしま~す! ではでは、早速儀式の方に移らさせていただきたいのですが……ざ、残念ッ! 両集団には出てきたところ悪いんですがぁ、これから会場準備に入りますので、控え室へ戻っていただきますぅ!」
「「「ぶうううううううううううううううううううううう!」」」
「はぁ~い、元気のいいブーイングありがとねー! 観客の熱が冷めない内に始めたいからぁ……じゃあ十分後! 十分後までに高速――いや音速で準備済ませちゃうので、皆さん逆立ちでもして待機しててくださーい! お願いしまーす!」
「控え室戻りましょうか」
「そうですね。……ってアレ? どうしたですメドナ? ものすごい呆け顔です」
「ああ、いえ。その……」
「?」
「なんですか、これ?」
……。
…………。
………………。
とうとうやって来ました。三日目の夜です。
わたしメドナは、いつも以上に緊張しておりました。
何故なら、今日は魔女の月の代表集団を決める集会――魔女の夜会があるからです。
魔女の夜会は三回に分けて行われ、三日目、五日目、七日目の夜に、各々第一夜、第二夜、第三夜として行われるのです。
今日がその大事な初戦。第一夜なのです。緊張しないほうがおかしいです。
「……ふぅ」
知らず知らずの内に、肺に溜めていた息が流れ出ます。プレッシャーが、体内で膨張して押し出しているようです。
魔女の夜会で聖女が勝たないと、わたしが魔女になってまでスパイをしている苦労が、水の泡となってしまいます。その上、戦乙女所属となってしまい、何をやらされることになるのか……。
とはいえ、別に戦乙女が勝利して吸収されてしまったとしても、戦乙女内部からエーリ坊ちゃんの欲しがる情報を入手できればそれでいいのです。
……最初はそう思っておりました。でも、今は違います。
聖女のお二人と短い時間ですが触れ合って、彼女達の力になりたいと心から思いました。
結果的に、力になれないかもしれません。それでもわたしは、力添えしたいのです。
これがわたしの、心からの思いです――。
「で、先程のはなんだったのでしょう……?」
会場脇に設置されたテント――聖女控え室に入って開口一番、わたしはお二人にそう尋ねました。
真っ暗な会場に見合わない熱気と歓声。敵味方関係なく騒ぎ立てる魔女達。
出鼻をくじくような始まり方に、わたしは意気消沈しておりました。もっと厳かな雰囲気で行われるものかと思っていたのです。
やる気に満ち溢れているようで、先程から何故か腕立て伏せをしているノヴァ様が、額に汗を浮かべてわたしを見上げました。
「開会式みたいなものですよメドナたん。……ハァ、ハァ、魔女の夜会は代表者しか出られないですからっ、他メンバーに対するパフォーマンスの一種なのです! とはいえ、ゼェ、ハァ、観客は戦乙女メンバーだからぁ、実質戦乙女による決起会と言った方が……ハァ、しっくりくるです。フゥッ、ハァッ、もっ、もうダメですぅ~」
「雰囲気にそぐわないのは分かりますが、代々受け継がれてきた歴史と伝統ある文化らしいです」
急な腕立て伏せによって、地面にへばっているノヴァ様の元へ、ラージャ様が近寄ります。そして、ハンカチで優しく汗を拭き取ってあげていました。美しい主従関係とは、このようなことでしょう。
「そ、そうですか……なるほど」
一応、納得はいたしました。予想していたのとは大分違いましたが、『歴史と伝統』というキーワードを出されたのでは、受け入れるしかないようですね。世の中で尊重されるのは、血筋・才能・権力・容姿、そして歴史と伝統でしょうから。
もちろん、わたしにとって尊敬すべきは、エーリ坊ちゃまですが。
「そう言えば、暗闇の魔女の他に魔女がいたのですね。ええと、蒼海の魔女、でしたっけ」
「そうです。暗闇の魔女と一緒に何年も留年している方です」
「……それはまぁ、すごい方ですね。色々な意味で」
ということは、暗闇の魔女同様にお歳を……いや、考えるのは失礼ですね。
わたしは頭を振って思考にモヤをかけ、別のことを尋ねて忘れ去ろうと思いました。
「そもそも、『暗闇』や『蒼海』とはなんなのでしょうか? 肩書き、みたいなものですか?」
「そうですね。大体同じような意味かと」
そう言うと、ラージャ様はチラリと会場の方を見ました。正しくは、お二人の魔女を。
「悪魔と契約をした女……要するに魔女ですが、魔女の中でも魔女魔法を極めた者は、認められた証として『魔女名』というものを持つのです」
「なるほど。魔女名が暗闇の魔女、蒼海の魔女なのですね」
「その通りです。今のところ、世界に魔女名を持つ魔女は六人いるらしいですよ」
六人……もしかしたら、この現世の闇に飾られてある、大きなステンドグラスに描かれた魔女達こそ、魔女名を持つ魔女なのかもしれません。暗闇の魔女、蒼海の魔女らしき人が描かれてありますので、可能性はあると思います。
ただ、ステンドグラスには魔女は七人描かれているのですよね。どういうことなのでしょうか?
「六人『しか』なのか、六人『も』なのかは、世界にどれだけ魔女がいるのか分からないので言えませんが、その内の二人が魔女の月にいると思うとすごいのかもしれません」
「そうですね。もし世界に六人しかいないのなら、お二人の魔女は尊敬すべき方なのでしょう。六人もいる、としても尊敬できますが」
「メドナらしいですね」
ラージャ様がふんわりと笑いました。その表情には一片も緊張が見られず、凛としておりました。
様々な覚悟が、できているということでしょう。勝つことも、負けることも。
『聖女の皆さ~ん! 準備ができたので会場へ来てくださいな!』
と、ここで蒼海の魔女のアナウンスが鳴り響きました。
心臓が、早鐘を打ち始めました。いよいよ、始まります。
「……大丈夫です」
いつの間にか、ノヴァ様は側にいました。わたしの頭をゆっくり撫でてくださいました。
「気楽に構えるです! メドナが変にプレッシャー背負う必要ないですよ?」
「で、でも」
「ノヴァに任せるです!」
ビシッと、サムズアップを決めるノヴァ様。その姿は天真爛漫でしたが、瞳は燃えておりました。
覚悟の炎が燃えているのです。
「わたしも……」
お二人の強い覚悟を知り、わたしは強く拳を握りました。
「わたしも、頑張ります!」
絶対に勝つという覚悟が、わたしの中で灯ったのを確かに感じました。
坊ちゃま、どうか見守っていてください……。
再び会場に入ると、すっかり雰囲気の変わった内装が、わたし達を出迎えました。
元々黒一色だったというのに、今は黒いローブを纏った魔女が何十人と立っていました。皆ローブを深く被り、誰が誰だか判断することができません。
「ったく、遅いわよあんた達!」
呆然と眺めていると、黒いローブを来ていない人達がやって来ました。
と言うか、戦乙女の代表三人の方でした。その中の一人、ウサギ耳の魔女が詰め寄ってきます。
薄めな橙色の髪、セミショートのサイドテール、魔法使いにしては活発そうな格好、そして大きなウサ耳。
確か、坊ちゃまはこの方をフレンシア先輩と呼んでいましたね。
「なぁ~んで挑戦者であるあんた達のが会場入り遅いのよ! まったく! ……ん?」
「あ、ええと……?」
そのフレンシア先輩は、わたしの前で止まり、ジロジロと顔を凝視してきました。
一体何事でしょう? そんなに見つめられては困るのですが……。
「あんたが新入りね! よくもまぁ聖女なんて落ち目集団に入ったわね」
「は、はぁ……」
ここまで直接的な嫌味を言われると、どう返していいか戸惑います。
「あたいはフレンシア・ガルドバルゴ! 戦士学科三年の九歳でランクはレ! よろしく!」
「あ、わたしはメドナと言います。賢者学科一年の十歳です。よろしくお願いいたします」
急に自己紹介をされ、思わずわたしも同じように返していました。
まぁ、大事ですよね自己紹介。
「歳はあんたの方が上だけど、学年じゃあたいの方が上ね。だからあたいのことを、先輩として敬うことね!」
「分かりました。フレンシア様」
「さ、様!? そ、そこまで畏まらなくていいわよ?」
「いえ、是非させてください。お願いします」
わたしは、頭を下げてお願いをしました。敵とは言え、わたしのような出生不明な下賤とは違う方。様付けするのはわたしにとって当たり前なのです。
すると、フレンシア様はちょっと申し訳なさそうな顔で、頭を上げるよう指示しました。
「わ、分かった! 分かったわ! 様付けでいいから!」
「ありがとうございます、フレンシア様」
「なんなのよ全く……。調子狂うじゃないの」
ブツブツと文句を言うフレンシア様を見て、普通にいい人なのかもしれないと思いました。
ただ、今は敵同士です。情けをかけず、全力で臨むとしましょう。
「こらー! ノヴァのメドナたんに何してるですー!」
「げっ!? ジェノーヴァ!」
ノヴァ様が腰に手を当て、頬を膨らませて立っていました。威圧感よりも愛嬌を感じてしまうのは、仕方のないことだと思います。
そもそも、わたしはノヴァ様の物ではありませんが、というツッコミを入れるのは、後にしましょうか。
「べ、別に何もしてないわよ! ちょ~っと挨拶していただけで……!」
「黙るです! 敵の甘言に耳は貸さないですよ!」
「なんて頑固なの! ちょっとメドナ! あんた真実を言ってやってよ!」
ここでわたしに振りますか!? ……そうですね。
「フレンシア様は普通に挨拶だけしかしておりませんよ」
「そう! その通りよ!」
「落ち目集団である聖女、と見下してはおりましたが」
「そうそう! ……へっ!?」
「ほう……?」
わたしの言葉に、ノヴァ様の背景がメラメラと燃えているような気がしました。側にいたラージャ様も、視線を鋭くしております。
「それ本当ですかメドナ?」
「本当です。フレンシア様が真実を言うように仰られたので」
「……なるほど」
「ひぃっ! 確かにそう言ったけど!」
「くすぐり悶絶の刑ですー!」
「きゃああああああああああああ!」
逃げ惑うフレンシア様に、獲物を狙う目をして追いかけるノヴァ様、ラージャ様。これが噂に聞くウサギ狩りでしょうか。
とにかく、落ち目発言に対する意趣返しができて良かったです。そう思いながら、三人を眺めておりました。
すると、
「初めまして、メイドさん?」
と声をかけてきた方がいました。
見ると、今会場にいる全身真っ黒な魔女達と同じような格好をした魔女が、わたしの隣にいました。
距離感の近さに驚きつつ、わたしは平静を保つことを心がけました。
「まあまあ、そんな構えないでよ。わたしはツァーチ・レンゲラ。剣士学科五年さ。きみは?」
「えっ? ええと、メドナと申します。学科は賢者、学年は二年です」
「そっかそっか。これからよろしくね、メドナ」
「はっ、はい。よろしくお願いいたします、ツァーチ様」
思ったよりもフレンドリーに話しかけてきたのは、戦乙女の代表メンバー、ツァーチ様でした。
フードによって、顔を見ることができません。
「いやぁー、この光景は壮観だよね」
「壮観……ですか?」
「そうだよ。誰も彼もがわたしみたいな格好でさ。正体不明で意味不明。こういう仮面舞踏会的不特定パーティは最高だ」
ツァーチ様は心から楽しそうにそう言いました。魔女の夜会を、本当に楽しんでいるのでしょう。
そう考えていると、ツァーチ様がわたしの耳元に口を寄せました。何か内緒話をするようです。
一応、警戒はしておきます。
「特別に教えてあげようか?」
「……何をですか?」
わたしもツァーチ様に習い、小声で話しました。
「わたしが何故正体を隠しているのか」
「!」
思っていないことを言われ、思わずツァーチ様の顔を見ます。
しかし、彼女の顔は依然フードに隠れたまま。それに、近くで見たから気付いたのですが、彼女は顔に認識を阻害するような魔法をかけているらしく、彼女の顔は不自然な程に、闇に支配されておりました。
わたしは目を離し、慎重に尋ねました。
「教えてくれるのですか?」
「そうだよ。ま、よくある理由だけれど」
そう言って、特に声量を落として、
「顔を持ってかれたんだよ。……『悪魔』に」
そう、囁きました。
その瞬間、わたしを得体の知れない寒気が全身を襲いました。
わたしにとって、悪魔はトラウマとも言える存在です。つい昨日、魂を引きずり込まれかけたのですから。
体が震え、歯が鳴り、鳥肌が立ち始めました。
フラッシュバックです。わたしは昨日の恐怖を、面白い程鮮明に思い出してしまいました。
「あ、ああ、あうぁあ……!」
「あれ? どうしたのメドナ。顔色、わ・る・い・け・ど?」
面白そうに、ツァーチ様がわたしの顔を覗き込みます。追い払いたくても、体が言うことを聞きません。とうとう涙まで出てくる始末です。
怖い。怖いです。ああ、悪魔が、またわたしの前に現れて、魂を吸い取りに――。
「止めるです」
「ッ!」
……あれ?
「フレンシアのはまだ許せるですが、おまえのは許せないです。ツァーチ」
「はは、ごめんごめん。ちょっとした悪戯さ。本気にしないでよ」
「悪戯で許せると思ったら大間違いです」
「はいはい。そんな眉間にしわ寄せちゃって怖いなぁ~」
ノヴァ様の登場で、ツァーチ様は軽快にその場を去っていきました。
「……もう大丈夫です、メドナたん」
「い、今のは……?」
いつの間にか、震えは収まり体が自由に動くようになっておりました。涙も既に引っ込んでおります。
ノヴァ様がツァーチ様の後ろ姿を見て、憎々しげに言いました。
「あいつの魔法です。あいつは他人の感情を操作する魔法を得意としているのです」
「感情を? でもツァーチ様、詠唱をしている素振りなんて……」
「関鍵詠唱です。長年の修練によって、体や脳が魔法発動までのプロセスを覚えることによって、キーワード一つで魔法を発動させる技術です。何かキーワードのようなことを聞きませんですか? 言葉の中に強調されたような単語とか」
「……ああ、ありましたね」
悪魔。確かにツァーチ様は、その言葉を他よりも強調していたように思えます。
「あいつは魔法で、メドナたんのトラウマの感情を呼び起こしたのです。……はぁ、これから儀式だってのにやってくれるですね」
「……」
今更ながら、不用意だったなと思い、後悔しました。
フレンシア様のような方が珍しいのです。こういった何か競い合いがあった時、敵は勝つために手段を選ばないものだというのに。
「(信じるのは聖女と自分のみ、ですね)」
わたしは、もう心を許すまいと、胸に刻み込みました。顔を持っていかれたというのも、きっと嘘でしょう。
「ところでメドナたん。他にあいつから何かされなかったですか? 『アレ』とか『コレ』とか」
「何か意味深な言葉が増えてます……ッ!?」
「これはもう、確認するしかないですね! 触診で!」
「手の動きが怖いです! 新たなトラウマになりそうです!」
「ハァ、ハァ、ハァッ!」
「もう自分以外信じられません!」
いつの間にか、ギャーギャーと騒いでしまいました。もしかしたら、一度トラウマを思い出してしまったわたしへの、ノヴァ様なりの配慮なのかもしれませんね。
「メドナたん! 好き好き~! 結婚するです!」
……多分、ですが。
こうして、わたしの必死な抵抗によって収束し、ラージャ様も戻ってきて聖女がちゃんと揃うことになりました。
いよいよ、という感じがします。メンバーが揃ったこともですし、何より……。
「……揃っているようだな。聖女諸君」
「来たですね、戦乙女」
戦乙女のトップ、死女神ことローニャ様がやって来たのです。傍らには、何故か衣服を乱したフレンシア様と、飄々としているツァーチ様。
目を惹きつける赤い髪は、いつか見た時とまったく変わらず、燃えるような色をしております。服装も真っ黒でヒラヒラとした、派手なドレスです。対照的に真っ白なタイツも健在です。
「あたしは前に言った。勝つのは戦乙女だと」
「それがどうしたです?」
「あの言葉は変わらない。勝つ。おまえらは負けてひれ伏す運命だ」
「なら、ノヴァ達は天命によって勝つです」
ノヴァ様が前に出て、ローニャ様も前に出て言い合います。
どちらも引くことなく、自身の意思を真正面から衝突させます。普段は穏やかなノヴァ様ですが、こういう時、ハッと息を呑む程力強い印象です。
マーメイド族でも姫と呼ばれる存在ですからね。
「ふ、なら最初の儀式でまず分からせてやろう。力の差をな」
「それがいいです。もっとも、力の差を感じるのはおまえの方ですが」
数秒間、お二人は睨み合い、同じタイミングで目を離しました。分かり合っている、そういう印象を受けました。
ある意味では、お二人は心が通じ合っているのかもしれません。決して口にはできませんが。
その後、フレンシア様とツァーチ様が、戦乙女の控え室へ戻っていきました。ただ付き添いで付いてきたようですね。
と、考えていると、
「……」
「ッ!」
残ったローニャ様が、わたしを見ていました。真っ直ぐに、両目で捉えております。
言葉にできぬ緊張が、背筋を撫でました。
「おまえ……名前は?」
「メドナ、です」
ローニャ様の口が、ゆっくりと開かれ、わたしに向けて言葉が発せられました。目に見えぬ重圧が、わたしにのしかかっていきます。
普段のわたしだったなら、萎縮して喋れなくなっていたでしょうが、今は違います。
隣でノヴァ様、ラージャ様が、見守ってくれているのです。こんなに心強いことはないでしょう。
ローニャ様は、わたしの名前を聞いて、
「そうか、メドナか……」
ただ一言です。無表情にただ一言呟いて、今度こそ去って行きました。
いつの間にか、拳を強く握っていたことに気が付いたのは、ノヴァ様がわたしを拳を両手で包み込んでくれた時でした……。
「第一夜・異端審問について説明いたぁします~!」
「ひゃああああああああああ!」「わーわーわー!」「パチパチパチ!」
「この儀式は、簡単に言うと仲間を捜すゲームです! 今この広い会場内には、真っ黒いローブに身を包んだ正体不明の魔女がたっくさんいます! この中に、戦乙女並びに聖女の代表者が同じように混ざり込みます! そしてそして、ゲーム開始の合図と共に、同じ集団の仲間を探してくださいなっと! 見事、相手集団よりも先に三人集まった集団が勝利となりますぅ! 簡単でっしょお? ただ~し! 正体が分からないようローブを纏ってもらい、混ざる時は会場の照明落としてどこから入ったか分からなくしちゃいまぁ~す!」
「ここで注意だ。ルールがある。一つ、ゲームが始まってから、ローブの脱衣及びそれに類する行為を禁ずる。二つ、代表者以外の魔女は歩行以外禁ずる。三つ、代表者は魔法の使用を許可する」
「一応補足で言っときますが~、良識ある行動をとってくださいねぇ? 魔法使えるからって会場の皆滅殺とかやめてね~。蒼海の魔女ブチギレちゃいます!」
「というわけで、早速始めてもらおうか? 闇夜の殺戮儀式を……くふふふ」
わたしは、静かに呟きました。
「オープン」
魔女による魔女のための宴、開幕です――。
「なるほど。そういうことがあったんだね」
「はい」
「いや、中々面白そうだね魔女の夜会。僕が女だったら参加してみたいところではあるなぁ」
「……はい」
「で、メドナ」
「…………はい、なんでしょうエーリ坊ちゃま?」
「結果は?」
「………………」
結果、敗北。




