第三十一話 人魚と魔女 <二日目>
~前回のあらすじ~
フィレは黒幕だった……?
………………<メドナ>
黒一色に染まった世界――夜の到来です。
わたしは学校が終わってすぐ仮眠をとり、万全の体調でサタン・ジェロカス城へ向かいました。
本来ならば、エーリ坊ちゃまに付き従い、お世話をしたいところですが……。これも立派な任務なので、泣く泣く、いや号泣して我慢しました。涙で枕を濡らしましたとも。
そんなメイドとしての苦悩を思い出しつつ、城まで足を動かします。
誰にも見られないよう慎重に行動を重ね、ノヴァ様からお借りした黒いローブを羽織って入口の門を突破して、聖女の使用している部屋の前までたどり着きました。
暗闇というのは中々慣れるものではありませんが、これは太陽が隠れちゃった単なる現象であり、恐怖を抱くものではないと自信を勇気付けることによって、暗闇を克服しました。
「……ふぅ」
ドアの前に立ち、深呼吸をします。昨日ぶりとはいえ、出会ってまもない間柄。失礼のないように振舞わないといけません。
数秒間瞑想し、気合を入れたところで、わたしはドアを静かに開けました。
「失礼いたします、メドナです。今日からよろし――く?」
「……へ?」
失礼のないよう、と心がけたはずですが、早速わたしはタメ口のようなものをきいておりました。
と言いますか、次の言葉が出なかったのです。
昨日見た通りの落ち着いた室内で、紅茶やお菓子で甘い香りが漂っていて、いい意味で魔女らしからぬお二人がいて……。
でも、昨日とは明らかに違うところがありました。そういう光景が目の前に広がっていたのです。
思えば、ヒントはありました。昨日飲んだ紅茶です。やけに瑞々しく潤いがある紅茶でした。水分量が多いといいますか、今思うと何かしら魔法がかかっていたような気がしました。
そして、そんな紅茶をノヴァ様、ラージャ様は何杯も飲んでいました。わたしの倍以上、おかわりしていたと思います。普通の人ならば、あんなには飲めないでしょう。
そう、普通の人ならばですが。
「ひゃわああああああ! めっ、メドナたんに見られたですうううううううう!」
「あ、いえ、あの、こ、これは?」
「……まぁ、いずれはバレるとは思っていましたが、まさか次の日とは」
黒いローブを羽織っておらず、必死にブラウスを引っ張って『あるもの』を隠そうとしているノヴァ様。対して『あるもの』を堂々と見せ、隠そうともしないラージャ様。
混乱する頭を抑えながら、わたしは状況を理解し始めました。
ああ、彼女達はこれを偽って暮らしているのだと。わたしから見れば、そういうものなんだなと思うだけでしょうが、彼女達からしたらきっと違います。
ノヴァ様の反応が、そのことを如実に物語っております。
「すみませんメドナ。隠すつもりはなかったのですが、中々言い出せなかったのです。いずれ言うつもりではありました」
「べ、別に謝られるようなことは」
「うわぁーん! こんな恥ずかしい姿を見られたからには、もうメドナたんと結婚するしかないですぅ!」
「発想が斜め過ぎます、姫」
幼い子供が泣くように声を上げ、涙をポロポロ流すノヴァ様。その側で、慰めているのはラージャ様。
そんな心温まる光景ですが、彼女達は……。
「『マーメイド族』、だったのですね」
「……そうです。ノヴァ達は人魚なのです」
下半身が、魚類でした。
「というわけで、ノヴァとメドナたんが無事結婚したところで、今日から新生聖女、頑張るですっ!」
「結婚していませんよ!?」
「じゃあノヴァの嫁になるです!」
「結局同じ意味じゃないですか!」
ドッキリハプニングを経て、時間と共にノヴァ様は落ち着きを取り戻し、この前と同じ席に座りました。
今はお二人共、普通の足が生えています。その上、黒いローブも着用しているので、偽装は完璧です。
他人にお二人がマーメイド族だと話しても、きっと信じてはもらえないでしょうね。
「この紅茶はマーメイドに必要な水分と、擬似的な足を作る魔法の紅茶なのです! あ、マーメイド以外が飲んでも害はないですよ?」
「どうりで、異常に潤いがあるなぁと思っていました」
「マーメイドは陸上で生活する際、水分を多く消費するです。だから、こういった飲み物でこまめな水分補給が必須なのです」
そう言いながら、ノヴァ様はあっという間に、カップに入った紅茶を飲み干しました。
わたしは、目の前に用意された紅茶を、まじまじと観察します。外見は普通の紅茶にしか見えませんが、これが魔法によるものとは……。普通の水ではなく、紅茶ということもポイントなのでしょうか?
「何故紅茶なんですか?」
「ノヴァが好きだからです!」
特に理由はないようです。いえ、好物ということも立派な理由になりますか。
「私達が魔女魔法を求めているのは、これが理由です」
「そうなのです。ノヴァ達マーメイドが長く陸上で生活できるような薬の精製……これが、魔女魔法を極める理由なのです」
「……そうでしたか」
確かに、薬に関しては魔女魔法を極めるのがいいでしょう。魔女は古来より、薬による身体強化・魔力上昇・英気回復等を行ってきたと言われております。万能薬を生み出す象徴でもあったのです。
そんな魔女による魔法……ノヴァ様達が目指す薬の精製は十分可能でしょう。
「ノヴァ様、ラージャ様が魔女魔法をそういった理由で極めているということは、他の聖女の皆さんも?」
「そうですね。同郷も私達と同じ目的でした。ですが……」
ラージャ様はそれ以上言わず、静かに紅茶を飲みました。わたしもなんとなく飲み、苦味を感じた気がしました。
言うまでもなく、同郷の方々は、今は戦乙女の下にいます。彼女達はノヴァ様とラージャ様を逃がす代わりに、犠牲になったのです。お二人の心情を察せない程、わたしは鈍感ではありません。
深く突っ込むことはせず、気になったことを尋ねてみましょうか。
「ふと気付いたのですが、もしかして、ラージャ様がノヴァ様を姫と呼んでいたのは……」
「ノヴァは自分の住んでいた海の、正統なる姫なのです。ラージャたんはその付き人なのです」
「ただのニックネームじゃなかったのですね」
「さ、さすがにノヴァは自分のことを、ニックネームで姫だなんて呼ばせないですよ」
ノヴァ様ならありうる、と思ってしまいましたが、口に出すことはしませんでした。
昔、アルンティーネのお屋敷で、マーメイド族には姫という立場の者がいて、群れを率いる歌声を持っていると聞いたことがありました。まさかその知識を、今ここで思い出すことになるとは思いませんでした。
遠路遥々海から陸へ、それも大都市までやって来たお二人。一体、どれだけ葛藤を繰り返してきたのか……平凡なわたしには想像すらつきません。
「ノヴァは姫として、同郷の皆を連れてやって来たですよ。外の世界に憧れていた皆とです。ノヴァには率いる力があるのです」
「群れを率いる歌声、というやつですか?」
「あぅー、メドナたん物知りです」
わたしの指摘に、ちょっと恥ずかしそうな顔のノヴァ様。きっと、これから自信満々に説明するつもりだったのでしょう。その機会をあろうことか、わたしが先に潰してしまったということです。
またわたしはやってしまいました。本当に、地雷を踏むのが得意ですねわたしは……。
「……すみませんでした」
「きゃーっ! メドナたんが一気にダークサイドに堕ちたです! どうしようどうしよう!」
「……姫、チャンスでは?」
「それもそうです! 今のうちに『アレ』を――」
「だから『アレ』ってなんですか!?」
危機を感じとり、わたしは一瞬で闇から這い上がることができました。割と本気で悔しがっているノヴァ様に、恐怖を感じずにはいられません。
それにしても、『アレ』という正体不明で恐ろしい言葉を使うことによって、ネガティブ思考からの脱出させられました。これはきっと、ラージャ様なりのわたしへのアシストなのでしょう。
わたしは、チラリとラージャ様に目を向けました。すると、ラージャ様は無表情のまま、ペロっと舌を出しました。
……え、えーっと。何故舌を出したのでしょうか。マーメイド族では舌をペロッと出すのが、ウインクのような目配せということになるのでしょうか。
分かりません。分かりませんが……何か意図があるのでしょうから、真似して意思疎通を図った方が良いでしょう。
なのでわたしも、舌をペロッと出して目配せならぬ口配せをしました。
これに対し、ラージャ様は……。
「……フフッ」
「違うのですか!?」
普通に笑われてしまいました。ラージャ様の舌ペロに、特に意味はなかったようです。わたしの早とちりだったのです。
は、恥ずかしい! なんて恥ずかしい行為をしたのでしょうわたしは! これはしばらく引きずりそうです……。
とにかく、ノヴァ様が姫であること、姫は歌声で群れを率いる力を持つ、ということを覚えておきましょう。何かの役に立つかもしれません。
「……」
「…………」
「………………」
しばらく、三人共無言になり、静かな時が流れました。和やかで落ち着いてはいますが、やはりどこか寂しさも感じます。
それもそうでしょう。こんなに広い部屋なのに、使っているのはわたし達三人だけなのです。どうしても寂寥感に襲われてしまいます。
「それにしても」
そこへ、空気を切り裂くように、ラージャ様の言葉が介入してきました。
「同郷の仲間はこの紅茶が飲めていないと思うので、早く助け出して飲ませてあげたいですね」
「えっ! それって大丈夫なんですか?」
わたしは狼狽え、問い詰めるように言葉を投げます。
随分とのんきにラージャ様は言っておりますが、人魚にとって一大事なのでは? 魚は水分がなくなると干からびてしまいますので、同じ魚類の下半身も干からびてしまうのではないでしょうか。
しかし、ラージャ様はわたしの慌てた様子に、頬を緩ませるだけでした。
「問題はありませんよ、メドナ。紅茶は水分補給もそうですが、あくまで『擬似的な足を生やして陸を長時間活動する』ためのもの。水分自体は水魔法でも補給できますし、足を生やさなくても歩けるんです。こう、下半身の魚部で滑るように進むんです」
そう言って、ラージャ様はローブを脱ぎ、一旦魔法を解除して足を消しました。
先程も見た独特のフォルムです。魚であって人ではない。人であって魚ではない。敷き詰められた鱗が、光を反射して輝いて見えます。
そして、ラージャ様は言う通りに、魚の部分で流れるように滑りました。まさに川を泳ぐ魚のように、優雅で華麗で美しさを感じました。この空間が水槽に思える程、滑らかだったのです。
わたしは無意識に手を叩いて、賞賛しておりました。
「そんな、拍手されるだけのことはしていませんよ」
「いえ、思わず見とれてしまう程の歩行でした。すごいです!」
「……そ、そうですか。ありがとう、メドナ」
照れてかすかに顔を赤くするラージャ様。思えば、クールで表情をあまり変えない彼女の照れた顔を見るのは、初めてかもしれません。随分と可愛らしい方だなぁと、失礼ながら思ってしまいました。
「の、ノヴァも! ノヴァも歩くです!」
対抗意識を持ったのか、ノヴァ様もローブを脱いで魔法を解きました。同じように、キラキラした魚部が露になります。ただ、ラージャ様と同じというわけではありません。姫だからか、尾っぽの先が淡いピンクの色をしておりました。
「ほら! 見るですよメドナたん! ノヴァの華麗な歩行テクニックを!」
ノヴァ様もラージャ様のように、美しく円を描くように歩きます。
しかし、わたしはその歩行よりも、今までローブで隠されてきた胸部の方に目がいってしまいました。
その胸はまさに山。白のブラウスを内から押し上げ、大きく屹立した二つの山があるではないですか。
「行くですよ~! ごーっ!」
「!?」
歩行に合わせて弾むお胸様。まるで二つの乳房が、各々意思を持って暴れているようにも感じます。
それの動きを妨げるように、ブラウスが押さえつけることによって、はち切れそうなくらいに胸が強調され、威圧感が増しています。
なんですかこの相乗効果! わたしは一体、何を見せられているのでしょうか!?
「さすがです姫。できればこう、上下に跳ねてもらってもいいですか?」
「? こう、です?」
「ああ、いいです。いいですよ姫!」
ノヴァ様の歩行は、ラージャ様にとっても魅入ってしまうくらい素晴らしいようです。女性という枠を超えた何かであることは、間違いないでしょうからね。
こうして、わたしとラージャ様はしばらく、ノヴァ様が上下するだけの様子を観察していたのでした。
目に焼き付けておきましょう。これが胸の、最終形態であるということを……。
「これに何の意味があるです?」
分かりません。わたしが涙を流している理由も、皆目見当もつきません。うぅっ……。
涙が枯れ果てた頃、わたし達は再びテーブルに付きました。お二人の足は、再び薬によって足が復活しています。魔法だと知っていても、それが偽物とは思えない程精巧です。
「まずはメドナたん、ノヴァの集団である聖女に入ってくれてありがとです!」
「ありがとうございます、メドナ」
「よろしくお願いいたします、ノヴァ様、ラージャ様」
お二人からの感謝の言葉を受け、わたしは頭を下げました。
わたしの役目は、お二人のサポートをしながら魔女の月の情報を収集すること。選挙で愛の羽にとって有利な状況を作り出すのです。これだけは絶対に忘れてはいけません。
例え彼女達を裏切るかもしれないとしても、です。
「早速、私達は魔女になろうと思うのですが、よろしいですか?」
「もちろんです。わたし、魔女になります!」
魔女になる。恐怖がないといったら嘘になります。でも、自分の選んだこの選択肢を大切にしたいです。
わたしの決意のこもった宣言に、お二人共触発されたようで、
「おおーっ! なんか演劇の主役みたいでカッコイイです! ノヴァも魔女になるです! キラリーン!」
「もちろん私も魔女になります。シャキーン」
と言って何やら決めポーズのようなものをとっていました。
なんでしょう。わたしもやれと目で合図されたのですが。先程の舌ペロは結局目配せの類ではありませんでしたし、多分わたしの勘違――
「メドナもやるです!」
あ、わたしもやらなければならないようです。ということで、
「い、いえ~い」
カッコイイポーズをとっている二人の横で、ピースして立ってみました。
……本当に、なんでしょうこれ。
「……というわけで、ノヴァ達は魔女になると決めたですが」
「スルー!?」
困惑しているわたしを置いて、何事もなかったかのように、お二人は席につきました。
わたしはというと、お二人のように平静を保てず、少々恥ずかしさを覚えながら席に戻りました。
無理です。自由奔放なお二人について行くことができません。まるで別の国に来てしまったような、酷いカルチャーショックを受けました。
しかしながら、逃げ出すわけにもいきません。少しづつ、少しづつこの雰囲気を覚えていきましょう。
「あぁ、羞恥しているメドナたんも可愛いですぅ……」
……何か聞こえた気がしますが、とりあえず仕切り直しです。
「魔女になる、とは言っても、具体的にどうすればいいのでしょう?」
「基本的には昨日言った通り、魔女になるには悪魔と契約する必要があるです」
ノヴァ様が紅茶を啜りながら、今日の本題に入りました。
「とはいえ、悪魔はそう簡単に会えるような存在ではありません。そもそもディメヴィア大陸には存在しないと言われています」
「そうですよね。ラミヴィア大陸に生息しているとは聞いたことがありますが……」
額面通り受け取ってしまうと、じゃあこの学園の魔女達はどうやって魔女になったのか、というもっともな疑問が発生します。
だから何か特別な方法があるのでしょう。ノヴァ様は真面目な顔で話を続けます。
「ノヴァ達のような魔女――この学園の魔女達は、悪魔の代わりに、悪魔を使役する魔女に契約してもらうのです」
「悪魔を……使役?」
「はい。この世界では『十大種族』というものがありますよね?」
「そうですね」
十大種族。それは、知恵を持ち、集団で生活している種族の中でも、個体数の多い十の種族を指す言葉です。主にこの大陸は、その十の種族によって営まれております。
ヒューマン族:主に人と呼ばれる種族。何をこなしても器用貧乏。個体数が最も多い。
エルフ族:耳が長く、若く美しい容姿をした長寿の種族。
ハーピー族:翼が背中にあり、くちばしを持った鳥のような種族。
ドワーフ族:体格は小さいがパワーがあり、男は老化が早く、女は反対に老化が遅いという。
オーク族:額に角を持った、体格のいい種族。知能が低く、無差別に暴れることが多々あり。
マーメイド族:女しか存在しない、海に住処を持つ種族。下半身は魚類の特徴を持つ。
ワーグ族:人と獣の特徴を持った種族。哺乳類にベースを持ち、身体能力が高い。
ノーム族:生まれてからずっと体格の小さい種族。自然を愛し、自然に生きる。
ジャイアント族:種族の中でも一番の大きさを誇る種族。見た目と違って穏やかな者が多い。
ゴブリン族:悪戯好きで有名な種族。奇抜な体色をしており、高い知能を持っていると言われる。
これら以外の種族は『十外種族』と呼ばれ、知恵が劣るか、個体数が極小か、忌み嫌われているかで除外されているのです。
更にその下は魔物と呼ばれ、完全に知恵を持たない種族がそれにあたります。
以上の種族を考えた上で、悪魔を使役する種族、と言うと……。
「十大種族ではない種族――つまり十外種族の一つ、『デーモン族』が、この学園にいるのです」
「……デーモン族ですか」
容姿はヒューマン族そっくりですが、額に第三の目を持ち、黒い尾を生やしていて、悪魔を使役できる種族。それがデーモン族です。
デーモン族は昔、魔物である悪魔を使役できることから、忌み嫌われた存在として叩かれていました。その結果、数は激減。現在、嫌う者はほとんどいませんが、数える程しかいないと聞きました。
そのデーモン族が、この学園にいると言うのです。
「デーモン族で、様々な悪魔を従えた魔女……通称『暗闇の魔女』。その方が、この学園にいる全ての魔女の生みの親です」
「暗闇の……魔女」
なんとも物騒な名前の魔女です。暗闇は先程克服したばかりですが、この暗闇はどうも克服できそうにありませんね。
「ノヴァ達が魔女になるには、暗闇の魔女に会って、悪魔との契約の魔法をかけてもらう必要があるです」
「そうでしたか。それで、暗闇の魔女はどこにいるのでしょう?」
暗闇の魔女は数少ないデーモン族です。自分の種族を滅ぼそうとした十大種族をどんなに憎んでいることでしょう。憎まないわけがありません。自分以外は敵だと認識しているくらいでしょう。
また、今は大体の十大種族が嫌っていないとはいえ、中には嫌悪している者もいます。そういった者が、襲ってくるかもしれないという恐怖を、どんなに感じていることでしょう。
そもそも、暗闇の魔女が何のためにわざわざ魔女を生み出しているのでしょう。憎悪の対象であるわたし達十大種族に対する何らかの作戦? それとも実験? 色々と推測することはできますが、真意が読めません。
そのような暗闇の魔女が住んでいる場所……一体どこなのでしょうか? きっと、容易に訪れることができない、人目を避けた山奥でしょう。幸い、この学園には山もあります。そのどれかに、暗闇の魔女は潜んでいるに違いありません。
わたしの問いに、ノヴァ様はあっさりと、
「隣の部屋です」
と言いました。
立て続けに、
「そう言えば昨日食べたマカロン、暗闇の魔女の差し入れだったです。手作りって言ってたです」
「上手いショートケーキの店を教えてくれたのも、暗闇の魔女でしたよ」
「そうですそうです。いやぁ~、暗闇の魔女は物知りです!」
「……」
と言いました。はい。
え、えーっと。……そうですね。
「ちょっと恥ずかしいので頭冷やしていいですか?」
……その後、わたしは低級・水魔法・『水の首狩り』を顔面に当てようとして二人がかりで取り押さえられました。




