第三十話 毒のない真実 <二日目>
魔法学園編 登場人物
<愛の羽>
エーリ・アルンティーネ:主人公。六つの偽名を使い分ける。
メドナ:エーリのメイド。最近鋭い。魔力は全然ない。
シェーナ・エストーナ:仲間。平和を愛する優しき少女。
<神帝>
フォルエッタ・サンダリア・ミリアーカイズ:通称『法王女』。シェーナの友達。家族を生き返らせるためにシェーナを狙う。
モデ・ミニャー:風紀委院長。毒舌娘。今ではエーリに頭が上がらない。
ピサス:戦士学科の男。フレンシアと応接室前で争う。『王の城』という防御魔法を扱う。メドナに論破され、狙うの止めた。
音楽委院長:背の高い少年。エーリに助けられ、入隊の協力をする。結構したたか。
フィレ・ディーノ:男子寮の先輩。商人学科二年。ワーグ族で狐ベース。なんか怪しい。
<魔女の月>
ローニャ・エトーリア:通称『死女神』。戦乙女を率いる集団のボス。学園に眠る秘密の魔法を狙っている。
フレンシア・ガルドバルゴ:戦乙女ナンバー2。戦士学科三年。炎を纏う『業火の鉄拳』という魔法を使う。信じやすく素直な性格。ウサ耳。
ジェノーヴァ・ヴァンジーニ:愛称は『ノヴァ』。聖女のボス。騎士学科五年。語尾が特徴的。巨乳。
ラージャ・ウンディウス:聖女の副ボス。剣士学科四年。ジェノーヴァの付き人。紅茶をいれるのが上手い。
<クラスメイト達>
キリコッテ・ジャバッツ:ワーグ族。猫耳少年。可愛い。愛しい。
カテマ・ロフ:ジャイアント族。図体はでかいが、心はおおらか。
リューイ・ガオーカ:ゴブリン族。男子のリーダー的存在。スケベ。
ヤスラ・アービー:ドワーフ族。褐色少年。影が薄い。
ゲンジューヤ・スウダリ:ハーピー族。ゲンジ。
ケイシー・エナー:エルフ族。女子のリーダー的存在。エーリを可愛がるお姉さん的ポジション。
リコプル・タティーシ:ノーム族。三つ編み少女。何故かエーリをご主人と呼ぶ。
<その他>
アリア・ニグル・アクトゥース:レオの姉。担任教師。ノリがいい。
ドランソー・レアヴォワ:入学試験の試験官その一。ロマンスグレーのおじさん。
アン・ディシポ:試験官その二。沈黙。
チフェロス・ナナン・ルートス:学園の理事長。魔王のような風格。
~前回のあらすじ~
異種族幼馴染達の日常。
………………<エーリ>
二日目。外は相変わらず肌寒く、舞い散る木の葉が哀愁を誘う。
僕はいつものように授業をこなし、いつものようにキリコッテの猫耳を撫で、いつものように猫しっぽを触って過ごした。
たまにリコプルが魔法勝負を仕掛けてきたり、ケイシーにぬいぐるみのように扱われたり、アリア先生に昼飯奢ってもらったりした。
もしかしたら、今が一番のモテ期なのかもしれない。こんなに女子に囲まれることなんて生まれて初めてだ。しかも異種族。
シェーナとは昨日の口喧嘩? から更に仲良くなり、何か聞きたいことがある度に尋ねてくるようになった。
魔法の成績は男子では僕がトップ、女子ではシェーナ。そんなトップのシェーナには、僕に聞くことなんてないと思うんだけどね。
それからメドナは、相変わらず甲斐甲斐しい。専属メイドなのだから当たり前っちゃ当たり前だが、今日なんて僕が男子トイレに入るのにもついて来て、入ってから気が付いたらしく、顔を真っ赤にして慌てて出て行った。ちょっとドジっ子だよね、メドナって。
男子達とも遊んだ。カテマはその巨体に見合わずボードゲームが得意で、何回かお手合せしてもらった。
リューイは女子のスカートを捲ろうとして半殺しにされ、胸を揉もうとして半殺しにされ、魔法で服を濡らそうとして半殺しにされていた。まぁ、因果応報だとしかコメントできない。ヤスラは相変わらず影が薄い。
ゲンジは……そういや、ここ最近姿を見ないな。風邪か?
そんなわけで、非常にほのぼのした学校生活だった。だがここからは違う。
運営会長になるための戦い、引き続き始めよう!
放課後がやってきた。
準備が整い次第、僕は神帝の本拠地、カイズブルー城へ足を運んだ。
城門を通る時、左の塔にいた男が僕に向かって、
「良かった。無事だったか」
と呟いた。
その言葉を聞いて、僕は前日ここを通過する時、この男が『気を付けて』と忠告してくれたことを思い出した。
だから、僕も同じように小さな声で、
「おかげさまでね。ありがとう」
と言ってその場を去った。なんか……なんか、こういうのいいよね。
そんなカッコイイ自分に酔いつつ、腕に赤色のリングを付け、ケリ・マクルとして城内に入ったのだが、
「……うわー」
僕は思わず、感情のない声を漏らしていた。
「おーい! 誰か体育委院呼んでくれ! ここ人手足りないんだ!」
「こっちは金魔法使えるやつだ。資材が足りん」
「木魔法も。木材が欲しいわ!」
始めて城に入った時とは打って変わって、元気な声が飛び交って活気に満ち溢れていた。
壮麗な城のホールに、大体の目測で五十人はいる。様々な種族が、何かに追われるように慌ただしく走り回っている。ちょっと視線を上げると、二階のギャラリーにも数人いるのが見える。
皆工具を片手に持ち、時に魔法である材料を作り、またあるものとあるものを接着したり、しまいにはあるものを磨いたりしている。
何故、今日の神帝の人々はこんな忙しそうにしているのか。そもそも何をしているのか。あるものとは?
全ての答えは……すぐ目の前にあった。
何か巨大な力によってできた、クレーターである。ホールのど真ん中を占領し、見るのが痛々しい程に変形している。
「ったく、一体どうなってやがんだ! 城が半壊って!」
「天井ブチ抜くだけじゃなく、二階の床も通過して、一階のこのホールまで到達してるからなぁ。ホールもクレーターできてるしガレキが山になってるし。……誰か知らねぇの?」
「昨日は皆忙しかったから誰も見てないっぽい」
「こんな堂々と本拠地を狙うとは……太ぇやつだぜ!」
そんな会話が聞こえてきた。
そう、彼らは城の修理に精を出していたのだった。
砕けてしまった床を魔法で直したり、壊れた壁に新たな石材を接着させたり、傷ついた鎧を優しく研磨したりしているのだ。他にも修復しなければならない所が多々あり、忙しそうに走り回っている。実に大変そうだ。
……すいません。これの犯人、僕です。僕の翼竜落としが原因なんです。
昨日、モデにヒーリングをかけてあげた後、騒ぎを聞きつけて人が向かっているみたいだったので、逃げるようにしてその場から去った。だから直す暇がなくってさ。次の日にこんなことになるとは思わなかった。
でも、今更僕が犯人って絶対言えないわ。そんなこと言ったら速攻袋叩きだわ。
だからこの件は胸の内にしまっておこう。いつか懐かしいと思えるようになるまで温めよう。それが一番だろう。
どこかひとごとのように、修復作業へ勤しむ人達を見ていると、見知った顔が前方からやって来た。
ていうか、毒女だった。風紀委院長のモデ・ミニャー。
毒々しい紫色の髪を撫でながら、神帝の人々に指示を出しながら歩いている。もしかしたら、皆への指示出しも風紀委院の仕事なのかもしれない。
不意に、モデと目が合った。僕が軽く手を振ってみると、親の敵でも見るような目で睨みつけられた。やっぱり相当嫌われているようだ。
「あら、誰かと思えば諸悪の根源じゃない」
「半分くらいはキミのせいでもあると思うけど?」
「なんでよ! ウチはどっちかって言うと被害者でしょうが!」
「キミが無実な僕に毒撒かなきゃ、こんな魔法は使わなかったよ。だから共犯とも言えなくもないよね」
「何を飄々と嘘ついて……ッ!」
「おっと、僕に逆らわない方がいいんじゃ――」
「ッ! クッ!?」
モデが僕に掴みかかる前に、突然苦しそうに胸を抑えて膝立ちになった。
昨日彼女にかけた心の巣が作用したようだ。
僕は前屈みになって、彼女と目線を合わせてから、小さな声でヒソヒソ話を始めた。
「昨日キミに放った魔法は心の巣って言ってね、僕の言葉を絶対に守るようになるんだ。破ろうとすると、その名の通り、心に巣くった僕も知らない何かが、行動停止を促す。僕の言葉を守るために、体が拒絶反応を起こすんだ。だから、正体不明の苦しみを味わうことになる」
「そ、そんな……ふっ、きぃっ!」
苦しそうに呻く彼女を前に、僕は指を折って数える。
「キミの胸に刻んだ言葉は五つ。『キミは僕に逆らうな。命令だ』、『今日あったことは誰にも伝えるな』、『これから起きることに関して伝えるな』、『僕の不利益になることは何もするな』、『法王女について、全て洗いざらい教えろ』。キミはこれらを絶対遵守するようになる」
「な、なるほど……ね。アンタに毒ブチ込もうとしたら……こ、こうなった、からっ、そのよう、ね」
「毒ブチ込むとか物騒だなぁ。とすると、今キミが苦しんでいるのは多分、『僕の不利益になることは何もするな』に抵触したからだろうね」
心の巣はちゃんと発動し、モデを抑えてくれている。これで今後、僕が毒死してしまうなんて悲惨なことはなくなったわけだ。よかったよかった。
何より、情報が一切漏れないというのが助かる。僕の不利益になることは絶対にできないから、僕の正体や目的についても絶対暴露されないのだ。
昨日あったことも、モデは心の巣によって他人に言えなかったからこそ、今僕が城を壊した犯人として捕まっていないのだろうね。『今日あったことは誰にも伝えるな』が上手く働いているのだ。
ちなみにこの言葉、『言うな』ではなく『伝えるな』が、ポイントだ。『言うな』だったら物に書いて他人へ伝えることもできるが、『伝えるな』だとあらゆる手段を防ぐことができる。少しばかり頭を使わせてもらいましたよ。
「できるだけ、僕の言うことに素直に従った方がいいと思うよ?」
「だっ、誰がアンタなんか――な、くぅっ!」
「今度は『キミは僕に逆らうな。命令だ』に抵触したのかな? もう選択肢はないと思う」
残酷な話だが、僕を前にするとモデは詰む。抵抗できないのに、僕に従わなければならない。
本当は、こんなことに魔法を使いたくはないけど。
「……………………その、ようね」
観念したのか、力なく項垂れ、もう逆らうような態度ではなかった。体が拒絶し、受け入れるようになったということか。それとも、反抗すること自体が僕の不利益だと見なされ、反抗すらできなくなったとも考えられる。
まぁ、いくら考えても答えは出ないが。
「……はぁあ。あぁー」
未だに痛むのか、胸を摩って辛さを紛らわせようとしているモデ。精神的にかなり落ち込んでいるようで、表情は暗く、目のハイライトがないように見えた。
そんな姿を見せつけられ、僕は軽く自己嫌悪に陥った。こんなことは望んでいなかった。
でも、やったのは僕だ。愛の羽が勝つために、僕は悪になったのだ。こんなところで挫けてなんていられない。
……気を取り直そう。開き直ろう。僕はできるだけ明るく、モデに話しかけた。
「とりあえず移動して、昨日の続きをしたいんだけど」
「昨日の続き……?」
「ほら、法王女について話してもらうって言ったじゃん」
「あぁ、そうだったわね」
一刻も早く、ここから移動したい。落ち込んだモデを黙って見ていると、自己嫌悪が加速して、しまいには僕の目からもハイライトなくなっちゃうかもしれない。
「どこか密談に向いてる場所ないかな?」
「そうね……。今の時間だと風紀委院室がいいんじゃないかしら。修復作業で出払っているし」
「そっか。じゃあそこにしよう。案内して」
「……いいわよ。喜んで」
「どこが『喜んで』だよ。心が全然篭ってなかったじゃん」
「……」
無言。何か言うと、抵抗したと捉えられるから喋れないのだろう。
ああ、まだ抵抗してくれた方が良かったのかもしれない。毒舌が恋しくなるなんて、僕も相当心にきているようだ。
モデに案内されてやって来たのは風紀委院室。神帝の風紀委院が利用する部屋だ。
中は総院用の部屋のように金ピカではなかったが、それなりに豪華な部屋だった。なんて言うか、病院の病室をイメージさせる。真っ白で清潔で潔白だ。
風紀委院達は修復作業に行っているらしく、今は誰もいなく無人だった。丁度いい機会なので、しっかり施錠し、第三者の邪魔が入らないようにした。
これで環境は整った。それじゃ、当初の目的である神帝の情報を聞き出そうか。昨日は時間がなかったため、聞き出すことができなかったからな。
早速、側にあった椅子に座り、前の椅子にモデを座らせた。
心を襲う痛みは引いたらしく、辛そうな表情ではなかったが、僕に対して明らかに敵意を向けていた。
敵意も僕に逆らう意思と見なされるかもしれないというのに。
まぁ、僕も一々反応して時間を食うわけにはいかない。スマートかつショートにいこう。
「それじゃ早速、法王女について聞かせてもらおうか。キミは知りうる限りの知識を披露し、それに対し僕が質問したら答えるという形式を取ろう。いい?」
「……いいわよ。そもそもウチに拒否権はないし」
「素直でいいね」
「仲間を売るような真似はしたくないんだけれど。それも自分の所属するリーダーの情報を」
「でも話さないと――」
「分かってるわよ!」
不機嫌そうな態度のモデは、渋々了承した。しかし、次の瞬間には真面目な顔に切り替わっていた。
「まず基本的情報からいくわよ。法王女様――フォルエッタ・サンダリア・ミリアーカイズ。騎士学科四年のヒューマン族。インペラトーレ。自分の思い通りになる魔法を扱う」
「……嘘は?」
「ついてないわ。そもそも、嘘をつくことはアンタにとって不利益になるでしょうが」
「まぁね」
一応、嘘をついていないか確認と思って尋ねてみた。モデは嘘が不利益と理解しているようだから、信じていい情報だろう。
それより、無視できない情報が聞こえたんだけど……?
「自分の思い通りになる魔法を扱う、とは?」
「そのまんま。法王女様の言った通りに、世界が動くのよ。例えば、ウチが毒魔法を法王女様へ放ち、服毒したとしても、彼女が『実はモデの毒は人体に無害だった』と宣言するだけで、実際に毒は無害となってしまうの」
「……な、なんてデタラメな!?」
僕は思わず、大きな声を上げた。
自分の思い通りになる魔法……。こんな魔法があって許されるのか?
魔法自体が自分の能力次第でなんでもできるといえばできるだろうが、それとは訳が違う。
あらゆることが自由自在。全て手のひらの上。自分のさじ加減でどうとでもできる魔法なのだ。規模が、強度が半端じゃない。
ま、だからこそ神帝のトップとしてふさわしい魔法なのかもしれないな。
「そうよ。アンタが何を考えて法王女様の情報を求めているか知らないけど、アンタが敵うような相手じゃないわよ」
モデは多少自慢げに、僕に断言した。あのモデが、ここまで強さに信頼を置いている法王女。侮れない相手なのだろう。
しかし、ちょっと疑問が残るな。
そんな都合のいい魔法があるならば、それでシェーナの代わりを用意すればよいのではないか? またはその魔法で家族を生き返らせることも可能なのでは?
うーん。これは予想だが、法王女の魔法には、特定の条件や限度があるのかもしれない。もし法王女とかち合うようなことになったなら、そこら辺を考えて行動しないといけないだろう。むしろ勝機はそこにしかないと言っても過言ではない。
「んじゃ次頼むよ」
「分かったわ」
とにかく、もっと情報を得ておこう。この件で情報多寡になって困ることはないさ。
「性格は誠実で柔和。ただ、非常に疑い深く、自分の信頼の置ける三人に、授業や実験等を受けさせたりしているわ」
「誠実……ねぇ」
「何よその目は。嘘はついてないわよ。過大評価でもないし」
「なるほど」
そういう人物として演じているのだろう。私利私欲に溺れる人間が講じた、利口な手段だな。
疑り深いというのは、犯罪者心理だろう。大勢を騙して利用しようとしている罪悪感から、疑心暗鬼になっているのかな?
人の心ってのは、案外良心でできているからなぁ。
僕がモデの言葉を飲み込み、十分理解したところで、モデが次を話し始める。
「信頼の置ける三人は各々『司教院』、『司祭院』、『助祭院』という肩書きを持ち、特殊な立ち位置でもあるわ。また、肩書きごとに役割が違うの」
「こりゃまた堅苦しい肩書きだ」
「その分誇りになるわよ」
「それもそうだけど……あ、キミがその一人か」
この話をしている時に、やけにドヤ顔だったからピンときたよ。まだまだ表情に元気はないけど、コクリと頷いた。
「法王女に信頼されて、そんな肩書きをもらっているのに……。それなのにモデときたら、ベラベラと個人情報流しちゃって」
「アンタのせいじゃないのッ!」
僕の挑発に顔を真っ赤にして立ち上がり、僕に襲いかかろうとして……止めた。
「後で覚えときなさいよ……ッ!」
代わりに呪詛が呟かれたのでした。これで僕は心の巣を絶対解除できなくなってしまった。
「……ハァ。司教院は法王女のお世話係で護衛役。司祭院は法王女に変わって授業受ける影武者役。助祭院は法王女から指示を仰ぎ、代わりに神帝へ指示出しする代理役よ」
「へぇー。ちなみにモデは何?」
「ウチは司祭院。法王女に代わって授業受けたりしてるわ」
「要は代返か」
「そんな不正行為と一緒にしないで! ウチの役目は崇高な影武者なのよ!」
「……まぁ、そういうことにしといてやるよ」
「哀れんだ目で見るんじゃないわよ!」
本人がいいならいいけど、どう考えたって司祭院は代返だ。司教院はただの付き人、助祭院は操り人形。
法王女が、自分のために行動しているという前情報をフィルターかけると、こうも肩書きが歪んで解釈することができる。
哀れみの目で見るのは至極当然の結果だろう。
「他のメンバーは知ってる?」
「ええ、もちろん。ウチが司祭院で、風紀委院副長のピサス・ライネスは助祭院よ」
「ほう、ピサスか」
僕は思わぬ人物の名前が出て、ちょっと驚いた。
ピサスは有名人で、何かしら大きな職についているとは思っていたが、風紀委院副長で助祭院だったとは思わなかった。
しかしこれは幸運だ。副長、ということは、いざとなれば立場の強い院長のモデを使って、従わせることができるかもしれない。
ははっ、僕にいい風吹いてきたんじゃないか? このままいけば楽に神帝の内部を掌握できそうだ。
――そんな調子に乗ったことを、考えていた時だった。
「あと、もう一人。一番信頼を置いている司教院は……フィレ・ディーノ」
僕に意味深長な言葉を告げて、選挙への関心を抱かせた原因が、風を止めたのだった。




