第十九話 闘争の幕開け <一日目>
* ………………<人の名前> は、その人視点で話が進みます。
~前回のあらすじ~
異世界リア充満喫中。
………………<エーリ>
十二月が始まった。
そう、今月は運営会選挙の開催月だ。一週間後に選挙が実施されるのだという。つまり七日後。
なら今日は一日目だと言える。運営会選挙がゴールだとしたらだが。
「ふーっ、はーっ」
僕は今、寮の部屋にいた。正確には部屋のベランダだ。
時間にして深夜。絶賛夜ふかし中である。五歳の体にはちとキツイ。
日をまたぐ程の夜ふかし、体力を消耗してまでして、果たして何をしているのかというと……。
「……やぁっ!」
右手を振り下ろす。すると、遥か頭上で一筋の光が生じた。光はいともたやすく闇夜を切り裂き、飛行機雲のように細長い線を描いて消えた。
他の人が見たら流れ星程度にしか思わないだろう。しかしこれは魔法なのだ。
そう、僕は夜ふかしして魔法の訓練を行っていた。
「うんうん、発動から顕現までいい感じだ。次は……」
もう一度魔法陣を思い浮かべるが、今起こした魔法の魔法陣とちょっと違う。
これからが本番だ。この魔法ただ流星を起こすだけではない。
右手を挙げ魔力を込めた。そして、
「おらッ!」
再び右手を振り下ろす。すると、また流星が――。
……来ない。僕の声が虚しく響く。
でも、これは失敗ではない。
「……10、9、8」
僕はカウントダウンをとった。その間何も起きない夜空を眺めている。
この魔法の真価はここからだ。
「7、6、5、4」
先月、フィレ先輩にロビーで散々脅された僕は、自身を守るために魔法を訓練し始めた。
僕自身、魔法大全の知識があるからと調子に乗っていた。事実、今まで魔法大全の知識だけでやってこれていた。
しかし、これからどうなるか分からない。知識はあくまで知識だ。使ってみなければどうか分からない。
この学園には一流魔法使いがゴロゴロいるし、魔法無効石なんてアンチ魔法的アイテムも存在する。ぶっつけ本番で使うより、多少なりとも訓練したほうがいいに決まっている。
降りかかる火の粉は全て払い、安息の生活を手に入れる。
「3、2、1……」
魔法大全の中から有用だと思う魔法を選び、僕なりに改良し、練習する。
それがここ最近の日課だった。
「ゼロ!」
十秒経過した。その時、変化が起きた。
突如、空中を光線が突き抜けていった。先程同様の流星である。後には残光がキラキラと輝き消えていった。
僕ははぁぁぁぁ、と大きく息をを吐き出した。
「あはは、成功したぁ~」
この魔法の真の能力は遅延。先に魔法陣へ時間を設定して発動してしまえば、何があっても時間通りに発動してくれる。今後大いに活躍してくれるだろう。
まだ名前のないこの魔法、名づけて、
「『勝利の星』だ!」
どうか僕に、勝利を与えてくれよ?
「(あ゛ー。すっげぇ眠い)」
場所が移って学校。時間も移って午前。
十二月ともなると、外はすっかり寒くなった。それによって、室内では火魔法による暖房でポッカポカ。
それが丁度いい感じに眠気を誘うんだよなぁ……。寝不足の体に染み入る温度だ。
「おれ『法王女』様に投票するぜー」
「あぁ、お前法王女様の組織入ってるんだっけ」
「おう! お前もどうだ?」
「そうだなー。そうすっか」
「私は『死女神』様に投票するわ! 貴方は?」
「わたしもー。ていうか組織入ってるし」
「そうなの? 一緒ね!」
「法王女様か死女神様か……迷うねぇ」
「なんだお前、無所属かよ。法王女様んとこ入れよ!」
「何言ってるのよ! 死女神様一択でしょ!」
「え、えぇ」
「「どっち!?」」
「う、うぇー……っと、法王……神様?」
「「結局どっちなの!?」」
机に突っ伏せていると、クラスメイト達の会話が耳に入ってきた。
内容はどれもこれも一週間後の運営会選挙のもの。組織やら法王女様やら死女神様やら意味深な単語が飛び交っている。
今のところ、フィレ先輩と話してから、組織への勧誘はない。そもそもあれ以来フィレ先輩と会っていない。
ただ僕をからかっただけだったのかもしれないと、今更ながら思い始めた。
「よぉ、エーリ。お前は誰に投票するんだ?」
「ん? リューイか」
目を擦っていると、ゴブリン族のリューイが話しかけてきた。今日も艶々した緑色の肌が眩しいね。
「立候補してるのって誰なの?」
「おいおい! お前それすら知らねえのかよ!」
かーっと言いながら頭を横に振るリューイ。
「法王女こと『フォルエッタ・サンダリア・ミリアーカイズ』様と、死女神こと『ローニャ・エトーリア』様だぜ。超有名人だろーが」
「へぇー」
「無関心かよ!」
リューイの全身を使ったツッコミを眠たげに見ていながら、
「(……まぁ、知ってたけど)」
そう心の中で呟いた。
知らないふりをしたのは、自分の情報に齟齬がないか確認したかったからだ。一応、その辺に関しては調査済みだ。
「そういや、今日の授業外だってよ」
「うへぇ、こんな寒いのに外かよー」
僕は外を見る。時折風が吹いているようで、木の葉が舞い散っている。
子供は風の子、なんて言葉があるが、高校生の僕にとっちゃ微妙な言葉だよな。
ふわぁと欠伸をしていると、メドナとリコプルがやって来た。
「坊ちゃま、次外らしいですよ?」
「眠そうだねご主人。……はわぁ」
リコプルに欠伸をうつしつつ、起立した。あぁ、もうちょっと寝ときゃよかったぜ。
「じゃー移動するかー」
「ですね」
僕らはのそのそと歩き始めた。外に出て、第一魔法実習館へ向けて進む。
その足取りは重く、先行する三人の後ろをゆっくり歩いた。
「そういや、リコプルはどこに投票するんだ?」
「リコは死女神様にするの。メドナちゃんは?」
「え? うーん、まあ、誰でもいいのでその場の雰囲気で」
「まぁ、それもありだよな」
三人の会話を聞きながら、疑問を感じていた。
フィレ先輩は組織間で闘争が起きていると言っていた。しかし蓋を開けてみれば学園は至って平和。
組織に入っているクラスメイトも、無所属の人を無理に勧誘するということはなく、個人の主張を尊重している。
やっぱりからかいたかっただけなのか? そう結論づけても良さそうだが。
「正直おれどっちでもいいんだよなー」
「リコも」
「お二人共雑ですね」
……うん、やっぱ僕が気にしすぎただけなんだ。いくらなんでも、組織間で争ってるのにこんな会話にはならないだろう。ったく、フィレ先輩にはいいように手のひらで遊ばれたぜ。こりゃ後で文句言いに行かないとな。
と、考えていたところだった。
「あ?」
一瞬だ。一瞬だが、シェーナの後ろ姿を見た気がした。今は建物が壁になって見えなくなってしまった。あの薄茶ボブカットはシェーナだと思うんだけど。
普通だったら気にはしないが、これから授業というのに第一魔法実習館とは逆方向に向かうのは気になる。
……ちょっと魔法使ってみるか。
僕は低級・強化魔法・イビルアイを発動させた。いつだったか、化物退治の時に井戸の中で使った魔法だ。その効果は自身の目の強化。
早速透視と望遠し、建物をすり抜けてシェーナの姿を見た。
その姿は、何かから逃げているように見えた。そしてシェーナの口が、『た・す・け・て』、と動いているのに気が付いた。
「……待ってろ」
いつの間にか、僕の足は全力で駆け出していた。
空っ風が全身を突き抜けていく中、たどり着いたのは戦士棟だった。
戦士学科の生徒が利用している校舎で、中央棟を中心にして北東にある棟だ。燃えるように真っ赤な色をしている。熱血って感じ。
普段訪れる機会のない棟の側で、僕は考えていた。このまま突入するのは得策じゃないということだ。
一刻も早くシェーナを助けたいが、何も考えず突っ込むのは良くない。例えば……。
「(この学生証、とかな)」
僕は右腕に付いた緑色のリングを一瞥した。
これは自分が賢者学科だということを知らせるリングなので、相手に僕が賢者学科だということを知られてしまうのだ。
この時点で、僕はシェーナを襲っていたのはここ学生だと考えていた。何故なら、僕の透視が、シェーナを襲う何かを捉えられなかったからだ。低級以上の防御魔法を使っているのか、そういう防具を着けているか……。
とにかく、相手は襲うのを前提で装備しているのだ。だから、リングに付いて考えを巡らすことになっていた。
リングについては外せばいいだけだ。しかし、外すと受付を通れなくなるという大きなデメリットが。
なるべく自分の正体を戦士学科の人に知られたくない、しかし通るには正体を知らせる必要がある。この矛盾、どう解消するか。
「(ふっふっふ、いいだろう。やってやろうじゃないか)」
随分と久しぶりだ。僕は頭の中に懐かしい魔法陣を浮かべ、とある魔法を使用した――。
「……おい! 今誰か通ったぞ!」
「透明化か……魔力をサーチしろ!」
「オッケー!」
ドタドタとうるさく騒ぐ受付の人達を、上の階から高みの見物。奥の廊下に消えていくのを見送り、胸を撫で下ろした。
僕は矛盾を解消するために、隠密セットを使った。ロズー村に住んでいた頃、平民領域へ侵入するためによく使っていたミラージュコート、サーマルセイブの魔法だ。ミラージュコートは周囲に姿を溶け込み、サーマルセイブは周囲の温度に自身の体温を合わせる魔法である。これならば、正体を知られず侵入できる。
そう、正体を知られず侵入できるのだ。だというのに、何故受付の人に見つかっているのか。それは僕の右腕のリングが答えだ。
今僕の右腕には、緑色のリングではなく赤色のリングが付いている。戦士学科を示す学生証である。
受付を通った際、受付の机にこれが置いてあったのが目に入り、欲が出てしまったのだ。透明人間状態で物を取ったら、そりゃすぐバレるわな。
だがおかげで、堂々と棟内を歩けるようになった。これは非常に大きい。正体も隠せる。
すぐに低級・強化魔法・バキュームノーズでシェーナの行方を探る。対象の匂いを辿る魔法によって、シェーナは一階にいるようだ。
廊下を全力で駆ける。多少魔法で身体能力を上げているので、普段の二倍は早いだろう。
あっという間に匂いの元にたどり着いた。目の前にあるプレートには『応接室』の文字が。入学試験のことを思い出す。
低級・音魔法・サウンドスティールを発動する。室内の音を聴き取るつもりだったが……。
「(……魔法が解除された。魔法無効石か)」
外部からの対策に万全なようだ。突入するか、別の方法か、そう考えていると……。
バアアアアアアアアアン! という激しい音と共に、激しく燃え盛る炎が飛び出してきた。
咄嗟にバックステップで回避し、廊下の角へ姿を隠した。炎は今まで僕が立っていた地点を焼き焦がし、一緒に吹っ飛んだと思われる扉に食らいついている。
少しでも反応が遅れたら……そう考えてゾッとした。
「……危ないことをする。もう少し穏便にできないものか?」
「うっさいわね! なんでピンピンしてんのよ!」
「そういう魔法だからな」
「ムキイイイイイイイ!」
一人混乱していると、応接室の中から二人の人が現れた。両者腕に赤リングを装着している。戦士学科の生徒だ。
一人は長身にがっしりとした体格の男だ。頭を坊主にしていて、厳つい顔をしている。まさに歴戦の戦士を思わせる姿。
そんな戦士に対し、もう一人はというと、華奢な女の子だった。頭の右側だけ結っているサイドテール。薄い橙色をした髪に、活発そうな姿をしている。
……なんか頭にウサギ耳を付けているけど。
「邪魔すんじゃないわよ! あたい達が先よ!」
「先も後もない。手にした方のものだ」
「あくまで邪魔をするつもりなのね……」
二人の人はお互い構えて対峙する。男は右手にナックルダスターを、女はグローブを装着。
両者が装着したのは魔法道具だろう。要は杖や指輪みたいな媒介のことだ。どちらも戦闘に特化しているようだな。
ということはだ。この二人はこれから、ここでおっぱじめる気なんだ!
「『業火の鉄拳』!」
「『王の城』」
女の拳が、一瞬で真っ赤に燃え上がる。それに合わせて周囲の温度も上がり、床や壁が溶け始めている。
これに対して男は、自身を囲むように長方形の薄黒いオーラのようなものが出現させた。
両者が激突する。
「うらああああああああああ! 燃え上がれええええええええええ!」
「……ふん」
炎の拳は火花を散らしながら男に放たれる! ……が、その攻撃は謎のオーラによって防がれた。びくともしていない。
舞い踊る火の粉、歪んでいく壁。圧倒的熱量にやられ、僕の方まで熱波が押し寄せる。
「もっと、もっと燃えろおおおおお!」
女が叫ぶ。するとそれに呼応して爆発的に燃え盛る。範囲は拳だけだったが、いつしか女全身を包むように炎が噴き出ていた。これじゃまるで火ダルマだ。
「あんたの魔法、打ち破ってやる!」
「できるならな」
再び激突する両者。二人の争っている場所は、もはや原型を留めていない。
ひ、ひぇー! なんて奴らだよ。戦士学科ってこういうばっかなのか? やっぱり脳筋しかいないのか? パワーこそ最強なのかぁ!?
目の前の戦闘にブルブル震えていると、偶然見つけた。
戦っている二人を、応接室入口でおっかなびっくり見学している人を。シェーナだ。
隠密セットを使って、すぐに駆け寄る。二人に見えない位置で魔法を解除。
「! ひゃ、ひゃ――」
「しーっ。僕だ。エーリだ。ちょっと静かにしててくれよ」
「え、う、うん! って、ひぃっ!」
そのままシェーナをお姫様抱っこし、エアロスターで空を飛んだ。
エアロスケイルも一緒に発動。これで快適に空が飛べる。
「クソッ! 相変わらず堅いわねっ!」
「それほどお前と心が離れているということだ」
争っている二人の上を飛び、問題なく玄関まで進む。が、
「(見張りがいやがる……ッ!)」
先程僕が起こした騒ぎのせいか、入口に警備員みたいな人が警戒していたのだ。ここをシェーナを抱えて通るのはキツいか。自分で蒔いた種とはいえ、これは本当に最悪だな。
仕方なく、僕は別の方向へ飛んでいった。無人の廊下をスイスイ飛んでいく。
その間シェーナは、赤面したまま、
「……ひゃああああ」
とか細い声を出していたのだった。
「……ふぅ、ここならまず安心か」
『音楽室』というプレートが掲げられた部屋に、僕とシェーナは潜んでいた。
この教室は三階にあり、ちょうど無人だったので潜ませてもらった次第だ。良く分からない楽器が並んでいる。下手に触れないほうがいいだろう。
時間は既に授業の始業時間を過ぎている。欠席だ。
「あーあ、授業サボっちまった」
せめて一言残してから来るべきかな。まぁ、そんな余裕なかったと思うけど。
「……あの」
腕を伸ばしてリラックスしていると、シェーナが恐る恐るといった感じに話しかけてきた。
彼女は僕が助け出してからずっと無言だった。僕も無理に聞き出そうとせず、話し出すのをのんびり待っていた。
「その、ありがとう。助けてくれて」
「いえいえ」
ヒラヒラと手を振る。重く捉えて欲しくなかったから、あえて軽い動作で示した。
するとシェーナは、突然、
「……っ、うっ、グスッ……」
泣き始めてしまった! これには僕も大慌てである。
「ど、どうしたの? どこか痛くなった? 怪我したなら見せて欲しいんだけど!」
子供あやし方なんて僕知らないし、これは困った。どうしようどうしよう!
……そうだ。
「ちょっとごめんよ」
「うっ、うぅ……ッ!」
とりあえず、抱きしめて頭を撫でてあげた。シェーナより体格の小さい僕がやるとちょっと滑稽だが。
これは僕が昔、元の世界にいた頃、母さんによくしてもらったことだ。
小さい頃僕は泣き虫で、ちょっと転んだだけでよく泣いていた。そんな時、母さんは僕を抱きしめ、頭を撫でてくれたのだ。
抱かれていると安心感と幸福感を覚え、僕はすぐに泣き止んだ。
いつも母さんは言っていた。
「抱きしめるとね、心がちかくなるでしょ? だから抱きしめてあげるの。私が持っている幸せを、少しでも抱きしめた相手に分けてあげられるようにね」
母さん、僕は今、この子に幸せを与えてやれてるかな……?
しばらくそうしてあやしてあげていたら、シェーナは泣き止んでくれた。
「落ち着いた?」
「……うん。もう、大丈夫」
シェーナはいつものような笑顔を浮かべた。目元はすっかり赤くなっちゃたけど。
「何があったか、話せる?」
僕がシェーナの顔を覗くと、彼女は小さく頷いてくれた。
「長くなるけど……いいの?」
「何時間だって付き合うさ」
「……ありが、と、ひっく」
それから、数分経過し、
「私、友達がいるの」
彼女はポツポツと呟くように話し始めた。
………………<シェーナ>
ちょっと私の昔話になる上に、長くなるけど、ごめんね。
この学園に来る前に、私には友達がいたの。
元々私はこのナフィー帝国ではなく、ルムーン公国という小国に住んでいたんだ。友達もそこで暮らしていたの。
幼い頃から私と友達は一緒で、一日中よく遊んでいたわ。お互いに魔法の練習をしてみたり、近所の森を探検してみたりした。今思うと、毎日がすごく充実していた。
そこでの暮らしは本当に楽しかった。あ、今は楽しくないってわけじゃないのよ? 本当よ? ここの皆優しいしいから。
とにかく、四歳くらいまでルムーン公国に住んでいたの。一生この国で生きていくんだろうと、幼いながらも思っていたわ。
でも、そうはならなかった。
……戦争が起きてしまったの。大きな戦争が。
ルムーン公国を従属国にしようと、ソラセット帝国が攻めてきたの。正しくはソラセット帝国の命令でボルマー王国が攻めてきたの。
その戦争で……私の、家族は。
……、うん、大丈夫、大丈夫だから。吹っ切れることはないけど、背負っていけるから。
すぅー、はぁー、こほん。
その……、私の家族は皆死んじゃったの。戦争に巻き込まれての即死だった。
私だけ、私だけが家族の中で生き残った。
すごく後悔したわ。なんで私だけ、私だけが生き残ってしまったのか。自殺も考えたけど、そんな勇気もなくて。私は流されるように、いつの間にか戦災孤児として、ジンピューロ王国にある小さな農村の孤児院で暮らしていたの。
友達も、そこで暮らしていたわ。私と同じように……家族を失ったの。
それでも私達は喜び合うべきだったと思う。たとえ家族がいなくなったとしても、命が無事だったお互いを支え合うべきだったの。
でもね、私達は以前のように遊ぶことはなかった。私はずっと落ち込んでいたし、友達はずっと勉強に明け暮れた。いつの間にか心の距離ができてしまっていた。
友達は本当に狂ったかのように、友達は魔法の勉強を始めた。なんだか良く分からない本を日がな読み、手を真っ黒にする程古紙に文字を書き続けた。その光景は正直かなり不気味だったことを覚えているわ。
そんな友達に、私は一言でも声をかけるべきだった。けれど私は、特に接することもなく過ごしていた。自分のことで精一杯だったの。
だから私は、いつの間にか友達がいなくなっていたことに、気が付かなかった。
薄情よね、私。あんなに仲が良かった友達のことを忘れていたなんて。
……うん、ありがとうエーリくん。でも実際、私自身薄情だって思っているから。平気。
話を戻すね?
やがて私は、元気を取り戻していった。
時間が、環境が、少しずつ私を癒してくれたの。孤児院の皆甘すぎる程優しくて、のどかな景色は気持ちを落ち着けてくれた。思考停止を止めて、自分の意思で行動できるようになった。時間はかかり、元の性格のようにはならないけれど、それでも私は生きていこうという意思を、持つことができた。
意思を持った私は、将来のことを考えた。今は孤児院の先生方が助けてくれているけど、いつまでもここでお世話になるわけにはいかない。私に何かできることはあるだろうか。したいことはあるだろうか。折角助かった命だから無駄にはしたくなかった。
そこで私は、昔から練習していた魔法を、ちゃんとした機関で学ぼうと思ったの。魔法は人を幸せにする術のはずだから、戦争なんかに使うための力じゃないと思うから。
早速、私は孤児院の先生に頼んで、ジンピューロ王国のアブルーニャ学園へ入学試験を受けさせてもらうことになったの。
なけなしのお金を叩いて、送り出してくれた先生達のために絶対入学してやるって息巻いていたの。
うん、エーリくん達と会った時のことね。あの時すっごくやる気があったの。
えっ! そうは見えなかった? そっかぁ、のんびりしている風に見えたかぁ。
まぁ、試験内容が才能を測るだけだったからやる気も何も関係なかったんだけどね。
とにかくねエーリくん。今まで自分の昔話を長く語っちゃったけど、その入学試験での成績が、全ての原因なんだ。
そう、私は入学試験で、レベル10インペラトーレを出してしまったことから、全ては始まった――。




