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魔法によって飛んだ空  作者: 元祖ゆた
魔法学校編
16/64

第十五話 聖戦 前編

~前回のあらすじ~

破壊に特化したグループが誕生!


基礎魔法。

あらゆる魔法の基礎とされる魔法。四つの元素からなる魔法で、各々火、水、風、土となっている。この四つの元素が属性であり、他の属性の基本でもある。組み合わせ次第では別の属性を生み出し、また一点に極めることで別の効果を引き起こす。基礎を極めた者こそ、真の魔法使いを言えるかもしれない。





初授業は滞りなく進み、お昼の時間となった。飯の時間である。


「あー、腹減ったー」

「ですね。わたしもお腹減りました」


僕がうーんと伸びをし、掠れる様な声を出すと、隣のメドナがクスッと笑った。


「ご飯は食堂と購買と、賢者棟の外に出れば飯屋がたくさんあるそうですよ?」

「んー。初日くらいは賢者棟の食堂利用するかね」

「分かりました」


そうと決まったら食堂行くかー。そう思い、立ち上がろうとしたところで、気が付いた。

僕らの目の前にこのクラスの男子達が集まっていた。その中の一人、全身緑色のゴブリン族の男が、集団から一歩前に出ていた。多分、このクラスのボスだろう。


「おい、新入り。ちょっと顔貸せや」

「……はぁ」


思わず溜息が漏れた。

まったく。初日くらいは平和に過ごしたいっつーのに。血気盛んなことで。


「いいけど。なるべく早くね?」

「……お前次第だ」


僕は立ち上がった。メドナも慌てて立ち上がった。するとゴブリンは、キッとメドナを睨み付けた。


「女、お前はついてくるな。オレはこいつに用があるんだ」

「で、ですが!」

「いいよメドナ。すぐ終わるから待ってて」

「坊ちゃま……」


安心させるため、メドナの肩をポンポンと軽く叩いた。そして笑いかけた。


「待ってて」


更に、優しく声をかけた。メドナは僕の顔を見つめ、これ以上何も言えなくなり、


「……食堂で待ってますから」


そう言って渋々了承してくれた。最後にメドナの頭に手をのせてクシャクシャした。


「新入り、オレ達について来い」

「なるべくお手柔らかにお願いするよ」

「それも、お前次第だ」


僕はゴブリン達男子と共に、教室を後にした。

まさか初日に、異世界で絡まれるとはねぇ。やっぱり校舎裏かな? それとも屋上? 体育館倉庫もあるなぁ。

なるべく彼らには怪我をさせないようにしないと今後が大変そうだ。なんせ同じクラスでこれから過ごしていくのだから。

フッ、いいぜ。存分にかかってこいや。お兄さんが相手になってやる――。





「頼む! お前の力を貸してくれ!」


あ、アレー? なんか思ってた展開と違うんですけどー? なんかクラスメイト全員に頭下げられてるんですけどー?


「え、えーと。とりあえず頭上げてくれないかな?」


僕がそう言うと、彼らゆっくり頭を上げた。

これは一体、どういうことだろう? 確かに賢者棟の裏にある林に連れて行かれたが……。

予想ではクラスメイトに囲まれ、生意気だ、調子に乗るな、お前は今日からオレらのパシリだ的な展開かと思っていた。

うん、まず話を聞いてみるとしよう。そこからだ。


「これは一体何? 力を貸してくれっていうのは……」

「お、おう! そういや話していなかったな! オレとしたことが焦って本題から入っちまった!」

「は、はぁ」


なんだろう。慌てるゴブリンを見て戦う気が一瞬で萎えたよ。ま、向こうも戦う気がなかったようだし。これはこれで良かった。


「まず、自己紹介から。オレの名はリューイ・ガオーカ! そんでこいつらは『男子連合軍』だ! オレは男子連合軍のリーダーをやっている」

「は、はあ!?」


男子連合軍? 僕が見た限り、単にこのクラスの男子が集まっただけじゃ……?

そう突っ込もうと思ったが、リューイが楽しそうに話すもんだから止めた。


「オレら男子連合軍は毎日とある組織と争っている……それは『女子聖歌隊』だ!」


だからそれも、女子が集まっているだけじゃないの?

そう突っ込もうと思ったが、以下略。


「やつらは本当に恐ろしい。こっちの人数が十人しかいないのもあるが、初級魔法を使える奴が多いんだ! ありゃ反則だ!」


反則って……僕にとっちゃ魔法そのものが反則なんですが。元の世界にも是非欲しいです。


「というわけで、オレら男子連合軍には人手が欲しいんだ。勇気ある戦士が欲しい。そこで新入り、どうだ? 入ってくんねぇか?」

「どうって……」


うーん、そういうことだったか。とりあえず謎は解けた。

僕らが初めて教室に入った時争っていたのは、本当に男女で対立していたからか。だから教室でも左右へ綺麗に分かれていたわけだ。

とはいえ、この男子連合軍に加わるのはなぁ。男子間で仲良くはなるだろうけど、確実に女子とは仲良くはならない。僕としては、できるだけ男女共に仲良く過ごしたい。

だからと言って、男子と対立するのも嫌だな。別に馴れ合いをしたいわけじゃないが、なるべく穏便に学園生活を送りたいというのもあるし。むむむ。

そうだ! 理由を聞こう、理由を。対立するに至った原因を。それで判断しよう。


「なんで男女で争ってるのさ?」

「おっ! いいところ聞いてくるなぁ新入り!」


リューイが嬉しそうに手を叩いた。飲み屋にいるおっさんみたいなリアクションである。


「今から遡ること三ヶ月。それは突然のことだった」


急にシリアスな顔になるリューイ。僕も真面目に聞く姿勢をとった。


「あいつら、オレらが作った秘密基地奪って自分たちの基地にしやがったんだ!」


……真面目に聞いて損した。


「お疲れー」

「ま、待て待て! まだあるんだ! なぁヤスラ?」

僕の肩を掴んで引き止めるリューイ。ヤスラと呼ばれた褐色の少年が前に出る。


「ああ! あいつら男子をすっげぇ馬鹿にしてんだよ! 自分らが魔法の成績良いからって自慢しやがって!」

「そうだ! 『三闘士』に入っていない男子はダサいって言うんだよ!」


ヤスラが怒りの声を上げると、それに便乗して後ろの男子も声を出した。


「あ、おらはゲンジューヤ・スウダリ。ゲンジって呼んでくれ」

「はぁ。よろしくゲンジ」

「おっす!」


そう言ってまた引っ込んだ。ゲンジは、長いくちばしに背中には羽が生えていた。一言で言うなら鳥人間だ。以上の特徴から、彼はきっとハーピー族だろう。

そんな彼の発言で、気になることがあった。


「あ、ゲンジ。三闘士って何?」

「おう、それはな」


ひょこっと、頭だけ人垣から現れた。僕にはそれが、もぐらたたきのもぐらを連想させた。


「六つの学科の内、戦士学科・剣士学科・騎士学科をまとめて三闘士って言うんだ。三闘士は男子に人気な学科でね、この学校の顔とも言える学科なんだ」

「はぁー、なるほどね」


三つの学科ともある意味闘士だからね。それで三闘士か、カッコええな。男だったら三つのどれかになりたいものだもんなぁ。

ま、僕は魔法を極める賢者になりたいけどね!


「ちなみに、賢者学科・勇者学科・商人学科は三つ合わせて『三特化』って言われているんだ」

「うわぁ。なんか三闘士に合わせて無理やり作った感じがするねー」

「だよなー」


話し終わると、再びひょこっと頭が沈んだ。ああ、頭を叩いてみたい。


「と、とにかくだ! 女子聖歌隊はオレらを見下し、馬鹿にしてやがる! 男として黙ってられるか!」

「その通りだ! 今こそ奴らを叩きのめすんだ!」

「「「おーっ!」」」


雄叫びの声を上げる男子連合軍。盛り上がりも最高潮である。

しかしここにイマイチ盛り上がれない男がいる。僕だ。

なんだろう。別にフェミニストってわけじゃないんだけど、女子聖歌隊を攻撃する意味が僕にはないっていうか。

と考えていると、ふと目に入ってきた物があった。


「……これは?」

「あいつらに壊された土人形さ。良くできていたんだけど」


それは半分に折れた人形だった。ドラゴンの姿をしていて、男心を非常にくすぐる作品だ。

これを、女子は、折った?


「パープルドラゴンをモデルにした土人形でさ。皆で協力して作ったんだけど、基地に置きっぱなしだったせいで、女子聖歌隊が襲いかかってきた時に――って新入り?」

「……ああ、これはダメだ。こんなことはダメだ」

「おい、新入り大丈夫か? 顔怖いぞ……?」



ずっと昔、僕が小学生だった頃、なけなしの小遣いを持って近所のプラモデル屋へ行った。当時流行っていたロボットもののプラモデルを買うためだ。

無事商品を購入し、早速日夜制作に勤しんだ。作る過程も楽しくて、自分なりにアレンジして、自分の手で完成させるのが好きだった。

更に、僕がもっと好きなのは、完成品を眺めることだ。

あれは飽きない。一日中だって見ていられる。僕は完成したプラモデルを棚に飾って眺めるのが趣味になっていた。

そんなある日、学校で宝物を持ってこようという企画があった。僕は嬉々としてプラモデルを持っていった。友人も数人プラモデルを持ってきていた。宝物自慢会は恙無く進んだ。

しかし、事件は起きてしまった。

一人の友人のプラモデルが女子に馬鹿にされ、喧嘩になった。友人は思わず女子を殴ってしまい、泣かせてしまった。

女子達は怒り、片っ端からプラモデルを壊した。もちろん、僕のもだ。

あの日以上に怒ったことはない。キレて、辺り構わず暴れた僕は『プラモバカ』なんてニックネームが付けられるのだが、そんなことはどうでもいい。

人が一生懸命作ったプラモデルを、人形を、フィギュアを、ただぶっ壊す。

これだけは、僕にとっては、絶対に許せないことだ!



「血祭りだ! 血祭りにあげるしか女子聖歌隊は許せねぇ!」

「なんかスイッチ入った!?」


聖戦の始まりだコノヤロー!





………………

「というわけで、男子連合軍を倒したいの! 力を貸して!」

「な、なるほど。そういうことですか……」


賢者棟の食堂の一スペース。そこにはわたしメドナと、クラスメイトの女子が集まっていました。

女子聖歌隊という女子だけの組織は、近々男子連合軍相手に戦争を起こすのだそうです。女子聖歌隊は男子よりも魔法を上手く扱えるらしいのですが、魔法を無理やり力づくで突破されるとどうしようもないそうです。

だから、少しでも魔法または戦闘ができる人を組織に入れたいらしく、


「メイドってことは、最低でも護身術くらいは会得してるでしょ?」

「まぁ、主と自分の身を守るくらいは……」

「ならお願い!」


わたしにスポットライトが当たったという流れです。

ちなみに、わたしに懇願している女子の名前はケイシー・エナー様。女子聖歌隊のリーダーだそうです。エルフ族でショートヘアーの美しい金髪が特徴です。


「その、まずエーリ坊ちゃまに確認してみないことには」

「それもそうだけど……」


何をするにも、まずは坊ちゃまの判断を仰がないといけません。わたしは坊ちゃまの専属メイドなのだから。


「ホント、男子は最低よ! この前なんてスカート捲くられたわ!」

「あたしなんて水かけられたわ! もう嫌!」

「卑猥な言葉を言わされたの……」


女子達の文句が吹き出します。ここの男子は一体どれだけの悪事を働いてきたのでしょうか?

確かに、同じ女子としては許せないことばかりです。

そんな思いを感じていると、一人の女子が側にやって来ました。

彼女はリコプル・タティーシ様。ノーム族でわたしの半分位の身長なので可愛らしいです。黄緑の髪を三つ編みにしているところもキュートです。


「メドナちゃん、いいの?」

「何がですか?」

「このままにしておくことだよ」

「……ええと?」


どういうことだろう。わたしはしゃがんで顔を向かい合わせました。


「主人の言うことを聞くのはいいけど、それでいいのかなって」

「? それが主従というものでは?」

「そうだけどね、主人を導くのもメイドの役目なんだよ?」

「それもそうですが」


わたしには、彼女が何を言いたいのか分かりません。必死に無い頭で考えますが、浮かびません。

すると、リコプル様は真剣な顔でこう言いました。


「このまま主人を、男子達の所に置いておいていいの? あの、女子にセクハラする男子の所へ」

「! それって」


リコプル様の言葉に、体が震えるのを感じました。


「多分、主人様毒されちゃうんじゃないかな? いずれこのクラスの男子達と一緒に女子へセクハラを……」

「きゃあああああああ!」


わたしは思わず叫んじゃいました。男子達と一緒にセクハラする坊ちゃまを思い浮かべてしまったのです。あんなのわたしが好きな坊ちゃまじゃない!


「今主人は勧誘されていると思うんだけど……なんとなく言いくるめられて仲間になっているんじゃないかな? 主人まだ幼いでしょ?」

「え、ええ。まだ五歳です」

「じゃあヤバくない?」


わたしは、全身でこの事態の危険度を理解しました。鳥肌が総立ちです。

このままでは、坊ちゃまはエロおやじに……?


「どっ、どどどどどうしましょう!」

「落ち着いてメドナちゃん。簡単な話だよ。メドナちゃんが引き止めればいいんだよ」

「引き止める?」


焦ったわたしの両手は、リコプル様の両手で包まれていました。ちょっと冷たいリコプル様の手が、わたしを頭を冷静させてくれました。


「さっき言ったでしょ? 主人を導くのも――」

「わたしの役目、ですね!」


わたしは立ち上がり、ケイシー様の前に出ました。

迷いはもうありません。わたしは坊ちゃまの専属メイドとして果たさなければならない。あんな妄想の中で生まれたエロおやじ坊ちゃまにはさせない。妄想は妄想で終わらせる。


「わたし、入ります。坊ちゃまと、戦います」


聖戦を、始めましょう!





かくして、主人とメイドは血で血を洗う血祭りの血戦に身を投じることになるのだった……。

次回へ続く。

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