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魔法によって飛んだ空  作者: 元祖ゆた
異世界冒険編 
11/64

第十話 怪鳥マモン 後編

またまた後編がちょっと長くなりました。

~前回のあらすじ~

最初のボス戦!


貴族領域にある華やかな広場。僕が行くと、仲間たちがワイワイ遊んでいた。


「あれ? エーリじゃないですか。珍しいですね、こんな時間に」

「エーリ!」


レオが僕に気付き、その声でラズも気が付き駆け寄ってきた。


「どうちたんでちゅの? いつもはお昼寝ちてまちゅよね?」

「うん、ちょっと事件があってね」


あの丘でライルたちを待機させて別れた後、変装を解き、ユーヒからエーリになって貴族領域へ帰ってきた。

僕の『事件』という単語に、ラズは目を輝かさせた。


「事件! 事件でちゅの?」

「そう、事件だ」


僕は出来うる限り真剣な顔で皆を見渡した。そして、


「頼む! 僕に協力してください!」


頭を下げた。

僕はどんな世界でも、真摯な思い、懸命な願いは叶うと思っている。

だって、そうじゃないと生きてはいけないよね?

ラズが、僕の肩に手を置いた。


「そんなの、協力するに決まってまちゅわ!」


そう言って僕の顔を上げさせた。ラズの顔はとても嬉しそうだった。


「そもそもわたくち達はなんでちゅの?」

「そうですよ、元々ある目的で結成されたじゃないですか」


レオも、どこか機嫌が良さそうだ。彼のフットマンであるウィートも……いや、ごめん。無表情で分からないや。

ラズのフットマンであるガラトは、ちょっと自信なさげな感じ。まぁ、彼はその顔がデフォルトだからね。

とにかく、皆僕に協力してくれそうだった。

くぅっ! なんて友達思いの熱い奴らだ! 僕が四歳の時にはそんな友達いなかったというのに。 

ラズは皆の顔を見た。そして大きな声でビシッと指をさした。


「化物討伐隊として、事件を解決ちまちゅわよ!」

「「了解!」」「……」「りょ、了解!」


待っててねライル、ティノ、ベルル! すぐに僕が害鳥を連れてきてやるから! 





僕は皆に、マモンという魔物が暴れているということ、それが貴族のペットであること、今貴族領域のどこかにいるということを説明した。


「……なるほど。つまり私たちはその怪鳥を退治すればいいと」

「いや、退治はしなくていういいんだ」

「? 違うのですか?」


不思議そうな顔をしているレオ。まぁ、普通は退治だと思うよね。


「マモン退治については、とある人達が請け負ってくれている。だから僕らはマモンを退治しなくていいんだ」

「えぇー。じゃあ何をするんでちゅのー?」


ちょっと面白くなさそうに頬を膨らますラズ。その反応を予想済みだ。

だから僕は、ラズをやる気にさせるよう言葉運びをする。


「退治自体は簡単さ。ただ、僕らにしかできない仕事がある。そう、僕らにしか、ね」

「! わたくち達にしか?」

「うん! 僕らだけ! 世界中でこの化物討伐隊だけだ!」

「そ、そうでちゅか! ふふ、腕がなりまちゅわね!」


ふっ、人を煽てるのは得意だぜ。

レオはやれやれといった風なポーズをしているが。


「僕ら化物討伐隊の仕事は三つだ。一つ目はマモンの居所を見つける。二つ目はマモンの飼い主を捜す。三つ目はマモンを連れてくる。たったこれだけだよ」

「あら、聞いた感じ難しくないでちゅわね」

「マモンは大きな鳥だから、ここの上空を飛んだとしたらかなり目立つますね。飼い主も井戸端会議をしているおばさんに聞けば情報が得られそうです。問題は――」

「ああ、三つ目は大丈夫。何とかなるから」


誘導魔法のパワーコンダクトでもう一度移動させてしまえばいい。効果があることはもう分かっているからね。


「ということは、私たちはマモンを捜すこと、飼い主を捜すことをやるのですね?」

「うん、そうだね」

「なるほど」

「分かりまちた!」


レオはズボンのポケットに手を突っ込んで頷いた。ラズはフンフンと腕を回している。


「これらは一人では決してできなかった。キミ達が手伝ってくれるからできることだ。本当にありがとう! そしてよろしく!」


もう一度、深々をお辞儀をした。皆にはもう足を向けて眠れないな。

早速、僕らは『マモン捜索チーム』、『飼い主捜索チーム』の二つのチームに分けて、事件解決に望むことになった。





………………

「さぁ、移動しましょうか」

「……はい」


私、レオーニ・ニグル・アクトゥースとそのフットマン、ウィート・シレマは、『マモン捜索チーム』として、広場を後にした。


「やはり捜査は足で稼がないといけません。昔劇場で見た演劇で、探偵役の方がそう言ってました」

「そうですか」


貴族領域にある小さな劇場。そこに各地を転々としている有名な劇団がやって来て、披露した演劇に立ち会えたのは僥倖だった。

劇の内容は『魔法探偵ドゥーレンとその助手エバ』。難事件に挑むドゥーレンの爽快な推理には舌を巻いたものだ。


「マモンは貴族領域の南西の方で姿を消したらしいです。ならばその周辺を聞き込みすればいいですね。行きますよウィート」

「……御意」


私は右のポケットから小さな杖を取り出し、左のポケットから魔法陣が書かれたカードを取り出した。

この世界で魔法陣は貴重だ。何故なら、魔法陣を書く媒体がないからだ。紙やスクロールを持っているものなど数少ない。だから大抵の者は詠唱によって魔法を使うのだが……。


「(詠唱など時間がかかって仕方ない。そもそも詠唱は喉を潰されたら終わりだ。そんなものに頼る人の気が知れない)」


私は紙をトランプのカードのように加工し、そこへ魔法陣を書き込んだカードを携帯していた。

杖は『誉れ高き王の右腕』という名の一級品。魔力をストック、フローすることができる優れ物。


「(確かに、詠唱ならば決まった魔式を読み上げ、魔力を込めるだけで魔法が実現する。ただそれだけだから金は必要ない。対して魔法陣の方は書く手間や、媒体に金がかかる)」


私は杖に意識を向ける。魔法陣の書かれたカードが青く光る。


「(なら、金さえあれば皆魔法陣を選ぶだろう。そして私にはその手段がある。選ばないわけがない!)」


カードに書かれた魔法陣は『風の運び屋』の魔式。その効果は、


「(対象を風で包んで目的地へ運ぶ!)」


私とウィートは、足元で生じた竜巻に乗って、文字通り風のようにその場を去った。





「ふぅ……。さすがに疲れましたね」

「……そうですね」


南西付近の住宅地帯を聞き込みした結果、有力な情報を得ることができた。


「しかし聞き込みがこんなに疲れることとは思いませんでしたよ。同じことを一人一人に一から説明しなくてはいけないこと。私は探偵というものを侮っていたのかもしれませんね。貴様はどうでした?」

「……はい、疲れました」

「ですよね。疲れましたよね」


私が人に話しかけ質問をし、ウィートはそれをメモする。

最初はまるで探偵と助手のようだと浮かれていたのだが、今は疲労感が体を蝕んでいる。


「けど良い情報を得ることができました。できました……が」

「……」

「この情報をエーリに言うのは気が引けますね」


私は苦笑いを浮かべずにはいられなかった。





………………

『飼い主捜索チーム』であるわたくち、ラズナティーニ・シュガーネ、フットマンのガラト・ムチリー、そして依頼人で仲間のエーリ・アルンティーネ。


「よーし! 行くでちゅわよ!」

「はっ、はいっ!」

「……」


わたくち達は飼い主捜しのため、飼い主のことを知っていそうなおばさんを捜しに広場を離れたのでちゅが……。


「ちょっとエーリ! 黙ってばかりでどうちたのでちゅか?」

「あ、うん。考え事をね」

「……むー。そうでちゅか」


エーリはずっとこの調子。わたくちとちてはなんかつまらない。


「そ、そう言えばエーリ様。なんでメドナさんを連れてないんでしょう?」


わたくちの様子を察し、ガラトがおずおずとエーリに質問をした。ガラトはわたくちがつまらないと癇癪を起こすことを知っているので、それを避けるため質問したのでちゅわ。生意気!


「実は、こっそり出てきたんだ。だからメドナはいない。て言うか秘密ね」

「そうでしたか。分かりました、秘密にします!」


ふーん、あのエーリがメドナに隠し事とは……。

主従関係にあるから当たり前でちゅが、いつも二人は一緒だったのに。

何かあったのでちゅかね?


「あと、飼い主の捜索って、何か意味あるんでしょうか? 責任を取らせるとか、しようと思っているのですか?」

「いやいや、責任なんて取らせないよ。て言うか取れないと思う。前に僕らが解決した化物騒動あったじゃん? あの井戸のやつ」

「ティンダロスですね」

「そうそう」


ティンダロス。長い舌に大きな目。背中がイボだらけで気持ち悪い見た目をしている。

でも、実際ペットとして飼ってみるとこれが可愛いのなんの。うちのティンダロスはラブリーちゃんって言うのでちゅが、一つ一つのさり気ない仕草がいちいち愛らしくてもう……たまりまちぇんの!

……じゃなくて、ティンダロスの話題が出たので、会話に参加することにちまちた。


「それで、ティンダロスがどうちたのでちゅか?」

「あの事件で飼い主が追放されることになったじゃんか。きっと貴族達は恐怖しただろうね。自分のペットも放置とか誰かを攻撃したりとかしたら同じように追放されると」

「でちょうね。あの一件以来、どうも貴族がペット用の生き物を買っていかないと、ペットショップの人が言っておりまちたわ」


わたくちがペットショップへラブリーちゃん用の餌を買った時に聞いた話だった。

ちなみに、ラブリーちゃんは隅っこが好きで一日中部屋の角に縮こまっていまちゅの。


「ペットを飼っている貴族としては、自分のペットが原因で追放だなんて嫌だろう。だからきっと、貴族達は何らかの抜け道を用意していると思うんだ」

「抜け道……実は自分のペットではないと言ったみたり?」

「まぁ、ちょっと強引な気がするけど、そういうのもあるかもね」

「ひ、酷いですね」

「でちゅわ!」


自分のペットをなんだと思ってまちゅの! そういうの、一番許せまちぇんわ!

わたくちは心の中で憤慨せざるを得なかった。


「飼い主を捜すのは別の理由だよ。マモンについて聞こうと思ってね」

「何か気になることでもあるのですか?」

「うん。どうやら今暴れているマモンは、魔法を使うみたいなんだ」

「「ま、魔法!?」」


思わずガラトと被って発言してしまった。

だって魔法でちゅわよ! わたくちは魔法使えないのに、ペットであるマモンが使えるなんて……なんて不公平でちゅの!


「そう、魔法だ。飼い主なら少しは魔法について知っているかなと」

「な、なるほど。そうでしたか」


わたくちたちが話ちながら歩いていると、目的の人物達がいまちた。いつも木陰で立ち話をちているおばちゃん達でちゅの。

早速聞き込み開始でちゅ!





………………

「へぇ、中はこうなっていたのか」

「……」


私とウィートはマモンのいると思われる場所にやって来た。やって来てしまった。

エーリに話すのが躊躇うとか言っておきながら、つい来てしまったのだ。


「(ホントは場所を見つけて、エーリ達に報告するだけでいいのでしょうけど……)」


ここは林と言うには鬱蒼としている場所、通称ペット用の林。その入口付近。

エーリへ言うのに気が引けたのは、マモン目撃情報がここら辺だったからだ。ここはペットの飼い主以外は立ち入り禁止で、林と言うには広い。ここでの捜索は骨を折ることだろう。


「(まぁ、私なら可能ですが)」


私の索敵用魔法とウィートの気配読みによって可能だろう。それならじきにマモンも見つかる。

そう、見つけることができる。私達にかかれば。


「(これは……チャンスでしょう)」


この依頼を聞いた時、私は非常にワクワクしていた。

怪鳥マモン。昔名前を聞いたことがある。兄様が小さい頃、戦ったことがあると言っていた。

これはチャンスだと思った。自分も、兄様のように、マモンと戦いたい。

だから私は得た情報を基に、マモンに挑んでみることにした。


「(ま、無理はしないつもりですが)」


これでも、自分の実力は見極めているつもりだ。無理だったら早々に逃げ出すことにしよう。

今後の方針を立てたところで、思考を中断した。


「ウィート、周囲に気配はありますか?」

「……」


ウィートは黙って首を振った。ふぅ、ペットはいないか……。

それでも、最低限の注意は残しておく。油断した時こそ、絶望はやって来るものだから。

私たちは慎重に歩を進め、目撃ポイントへたどり着いた。


「これは……いますね」

「……はい」


林の中に突如現れる洞穴。付近にはマモンの羽が数枚落ちている。その内の一つには傷があった。


「さて、見つけましょうか」

「……分かりました」


私は左のポケットからカードを取り出す。記されたるは捜索魔法『狩人の追跡』の魔法陣。

ウィートは、右手にはめたブレスレットを外した。するとウィートはガクンと前に折れ曲がり、数秒もしないうちに元の姿勢に戻った。

普段力を抑えるためのブレスレット。これを取ると、ウィートは五感が数倍まで跳ね上がる。


「大きい気配が一つ。間違いなくマモンです。ついて来てください」

「了解。詳しい場所はこの魔法を使いましょう。……おっと、鼻血出てますよ」

「……ん、すいません」


ツーっと鼻から垂れた血を、私はハンカチで拭ってあげた。

ウィートは生まれつき感覚の鋭い子だった。生きていく上ではあまりに大変なので、それを抑えるために鎮静作用のあるブレスレットを常時付けている。そうでもしないと今みたいに感覚についていけない体が拒否反応を示してしまうのだ。ブレスレットがなければ危なかった。

ただ、ブレスレットの副作用で感情表現があまり上手くない。


「(優秀な物にはその分デメリットがつきものですが……これは痛いですよね)」


私はウィートの後に続いて洞窟を歩いた。中は意外にも明るく、上から日が差していた。良く見ると、天上に無数の小さい穴が空いてあった。まるで夜空の星である。


「すごくマモンを感じます。この奥から」

「奥って……」


ウィートが止まった先には、更に穴が三つ。どれかにマモンがいるらしいが……。


「……すいませんレオ様。匂いが分散していてこれ以上は」

「なるほど、賢いですね」


匂いを追跡されるのを防ぐために、わざわざそれぞれの穴の奥に匂いのつくものを置いているのだろう。

ならばと、私はここでようやくカードに魔力を込めた。

狩人の追跡。範囲は超狭いが優秀な捜索魔法。対象を指定すると、範囲内を隈なく捜し、自動的に誘導してくれる。

魔法発動によって、空中に右手が現れた。右手だけである。地味に不気味だが。

宙に浮いた右手は、ある一つの穴を指差していた。


「この先のようです。行きますよ」

「御意」


私たちは右手について歩く。私は常に杖を構え、ウィートは短剣を持っている。

狭い道をゆっくり歩き、やがて私達は到着した。マモンの巣である。


「おお! これが……」

「……」


少し広くなった空間に、マモンはいた。私達の存在を嗅ぎつけたのか、既に臨戦態勢だ。


「グギュグウウグガアアア!」


マモンが最初に仕掛けてきた。大きな羽で風を起こし、強烈な突風が襲いかかる!

……が、私達には届かなかった。


「ふぅ、荒いですね。もうちょっと紳士的にいられないのでしょうか」


既にカードで魔法を発動している。

火魔法『炎の防壁』。燃え盛る炎は周囲の空気を喰らい尽くす。


「さ、バトルを楽しみましょうか」





………………

「ここか……」


わたくち達は聞き込みによって得た情報から、とある貴族の邸宅の前にやって来た。

『オーリコ・エシュカ』。珍しい生き物を集めるマニアとして有名。マモンもその一匹らしいでちゅ。


「なんて言うか、すごい家だねぇ」

「で、ですね」

「うわぁ! すごいでちゅわ!」


わたくちはその家の見た目にビックリちまちた。

古びたお城みたいな外見で、伸び放題のツタが外壁に巻きついている。窓ガラスなんかは割れたまま放置。なんて言うかお化け屋敷みたいでちゅの!

そう、すっごく探検しがいのありそうな家でちゅわ!


「よち、飼い主を呼びまちゅわよ!」

「なんかテンション上がってるね」

「そりゃそうでちゅわ! こんなに面白そうな家は探検するしかないでちゅの!」

「怖いもの知らず!」


わたくち達の後ろで「ひぃ~」とか呻いているフットマンは置いておいて、わたくちは思いっきり息を吸って、


「こおおおおおんんんんんにぃいいいいいいいいいいちわああああああああああああ!」


そう叫びまちた。隣にいるエーリが両耳塞ぐ程の声量でちたわ。ガラトはひっくり返ってピクピクちていまちたが。

しかし、後に残ったのは静寂で、誰も出て来まちぇんでちた。


「お留守かちら」

「かもねー。情報が欲しかったけど……しゃーないか」

「作戦失敗?」

「いや、少なくとも家に飼い主はいないという情報は得ることができた」


わたくち的には大失敗なのでちゅが、エーリは納得した顔でちた。

わたくちはエーリのこういうところを尊敬ちていまちゅの。自分なりの着地点を見つけて降りている……みたいな感じでちゅの。


「か、隠れているかもしれませんね」

「まぁ、居留守使う可能性もあるよねぇ」

「侵入ちまちゅの?」

「アホか」

「でちゅわっ!?」


わたくちがワクワクしながら尋ねると、エーリがチョップちてきまちた。痛くはありまちぇんでちたが。


「なんでちゅのーっ!」

「侵入はダメだよ。下手したら不法侵入とかで貴族間の問題に発展するかもしれない」

「で、でちゅの……」


エーリに言われ、その可能性があることを思い知らされまちた。やっぱりエーリはすごいでちゅ!

わたくちが尊敬の目で見ていると、エーリはちょっと恥ずかちそうでちた。


「いないならしょうがない。少しでもマモンの魔法について知りたかったが……後は実践で見極めるしかないか」

「実践?」

「いや、こっちの話さ」


わたくち達がそうして家の前から移動しようとした時、事態は動きまちた。

不意にわたくち達に影が差し、頭上を見てみると……


「あ、あれは!?」

「ひっ! ひぃ~っ!」

「なんでちゅのーっ!」


大きな鳥が激しく羽を羽ばたかせ、家の周囲を旋回しだちたのでちゅ。





………………

一目見て、すぐに分かった。こいつはマモンだ。

刺し傷、切り傷、打撲痕……体中傷だらけである。さっきまで相当激しい戦闘をしたのだろう。フラフラ飛行している。


「飼い主の所へ戻って来たのでちゅわ!」

「で、でもなかなか降りてきませんね?」


ラズとガラトが興奮して話している。まぁ、こんな大きな鳥見たことないだろうし、テンション上がるのも分かる。

このマモン、降りてこないのは僕がいるからだろう。現にチラチラこちらに視線を送っている。


「(流民領域の畑で僕が誘導魔法使って無理やり移動させたからなぁ。そりゃ警戒するわ)」


だから降り立ってもいいものか、降りた先にまた罠があって、捕縛されるんじゃないかと警戒しているのだ。


「(これはチャンスだ)」


またとないチャンスだと、僕は思った。ここでひと押ししたいところだ。

と思っていると、突然、飛んでいたマモンに向かって何かが飛びかかった。

良く見ると、あれは……ウィート!?


「グギギギャアアグウグ!」

「……おらァ!」


空中に躍り出たウィートは、右手に持った短剣で、マモンの右羽根を切り裂いた。

更に、その動きに続いて左足で顔を蹴り飛ばした。四歳児とは思えない程の威力の蹴りである。

マモンは飛ぶこともできずクルクルと回ってオーリコさん家の庭に落ちていった。

僕を含め、ポカーンとした顔で見ている三人。そんな三人の前にいつの間にかレオとウィートがいた。


「あれ、皆いたのですか。これは痛いところを見られました」

「……」


至って普通の二人。いや、普通ではあるんだけどね?


「すいませんエーリ。貴様には居場所の情報を得て報告するつもりでしたが……つい欲が出て戦いを挑んでしまいました」

「あ、いや、うん。いいけどさ……」

「ありがとうございます。優しいですねエーリは」


僕はチラッとウィートを見て、


「大丈夫なの? ウィートは」


そう言うと、ウィートはいつものように無表情で頷いた。確かに見た目は多少汚れているぐらいで怪我はなさそうだな。

あの身体能力、魔法か? 恐ろしい威力のキックだったなぁ。

どちらにしろ、只者ではなさそうだ。

レオが、代わりと言ってはなんですが、と前置きを置いて話し始めた。


「どうやらマモンは魔法を使うみたいなんです。初級の魔法は全て効きませんでした」

「! マジで」

「はい、本当です。だから肉弾戦に移ったのですが……ここに逃げられてしまって」

「それはここが飼い主の家だからだろうね」

「へぇ! そうだったのですか! なるほど」


感心しているレオを尻目に、初級魔法が効かないという情報を咀嚼していた。

まいったな……。ライル達には初級魔法しか教えてないんだよね。どうしよう……。

悩んでいると、いつの間にかマモンが体調を整え、空を飛んだ。

いや、考えている暇はない。また逃げられてしまう。今も待ち続けている皆にマモンを届けないと。

僕は皆に振り返り、


「化物討伐隊の皆、僕に協力してありがとう! おかげでマモンの居場所が分かり、飼い主が分かり、まさか弱らせることにも成功した! これは全部キミ達のおかげだ! 本当にありがとう!」


そう言って、礼をした。

本当にこいつらに会って良かった。そう思う。

討伐隊メンバーは、


「どういたちまちて!」

「い、いや、恐れ多いです!」

「貴様の役に立ったのなら何よりです」

「……」


一人は仁王立ちで誇らしく、一人はヘコヘこと頭を下げ、一人は爽やかな笑と共に、一人は無口な代わりに何度も頷き、反応を見せてくれた。

僕は最後にもう一度礼をして、その場を走り去った。

こっそり、誘導魔法パワーコンダクトで誘導しながらね。





大きな木がある丘。

エーリの格好からユーヒへと入れ替わり、僕はやって来た。

移動しながらのパワーコンダクトだったので、多少精度は落ちていたが、何とか届けることができた。

既に、木の前には三人の友達が待ち構えている。


「! 来た! ユーヒ!」


ライルの声が僕に届く。僕も全力で声を出した。


「皆! こいつに魔法は効かない。ぶん殴れッ!」


そう言って、マモンを地面に叩きつけた。

声を聞いた皆は、最初杖を構えていたが、すぐにしまって、代わりにその辺に落ちている木の枝を拾った。


「ハッ! 魔法が効かねぇとか、おれ達の魔法修行はなんだったんだって話だな」

「そうね! でも物理攻撃とか」

「わたし達向きなの!」


後は見るに耐えない光景だった。ただひたすら三人にボコられるマモン。

元々マモンはライル達の攻撃、レオとウィートの攻撃、僕のパワーコンダクトによる叩きつけによってほぼ瀕死だったのだ。リンチになるのは当然である。

が、何故か僕の心は、清々しかった。





後日譚。

マモンは無事退治され、荒らされることはなくなった。

飼い主のオーリコは結局行方知れず。もしかしたら、オーリコがいなくなったからマモンが捜していたのかもしれないとか考えて、ただの妄想だと打ち捨てた。

魔法を教えるという目的がなくなったのだが、未だにライル達とは会って一緒に遊んでいる。魔法も継続して教えている。

化物討伐隊も同じだ。毎日一緒にいて遊んでいる。ラズが隙あらばオーリコ邸に侵入しようとするので、その度にガラトが大変そうだった。

そうそう、お守りも無事ロベラに渡すことができた。その時のロベラと言ったら……すごい喜びようで何度も頬ずりされたものだ。

そして、この件に関してノータッチだったメドナはと言うと、


「はぁ……どうせわたしなんて蚊帳の外ですよ。そうですよ……うぅ」


なんか面倒くさいことになっていた。僕が力の限りフォローしたから、なんとか立ち直ってくれたけど。

こうして、僕の四歳が終わり、遂に五歳になった――。





………………

「あぁ、心配です。大丈夫でしょうかエーリとメドナは」

「ちょっと、落ち着いてディーベ。ああ見えてエーリはちゃんとしてるし、メドナも要領がいいわよぅ」

「でもですねロベラ。寮とは言え一人暮らしですよ? 手の届かない所に行くのですよ? 不安じゃないわけがない」

「そうねぇ、不安ねぇ。でも、あなたも見たでしょう? あの子達の目。期待に満ちた目を」

「……」

「大丈夫よ! なんせわたし達の子供なんだし! 遠くにいても頑張ってくれるわ!」

「……ですね。私達の子供なら心配はいりませんね」

「そうよ!」


そう、あの子達なら精一杯頑張り、新生活を楽しむことだわ!


「入学おめでとうエーリ、メドナ」


エーリの生まれた秋の季節。五歳になった季節。

彼らはロズー村を離れて、ジンピューロ王国一の都市、『大都市ピレオス』へ旅立った。

そこで六年間、学校で魔法を学ぶために――。

ここまでで一つの区切りです。次からは魔法学校編です。

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