湯上祐太郎と白串香織
紺色の学生服に身を包んだ湯上祐太郎は必死に勉強していた。
今日はテストだ。これで5割取れれば評定は4、取れなければ3、補習確定だ。
昨日の夜は結局ゲームして寝てしまった。あと一日……あと一日あれば……!と、祐太郎はそれこそ意味のない後悔をして過去の自分を責めた。
無慈悲にも時は過ぎ、チャイムが終焉の時を告げる。
昼遊びをして汗だくの姿の、祐太郎の友達であるコウジが教室に滑り込んだ。
「湯上、終わりの始まりだな!今日の範囲はその次の単元だぜ!」
友人のコウジが死刑を宣告する。
「死んだ……」
クソ短調でつまらない日常に、クソみてぇなテストの毎日。
祐太郎は伸びをすると、腕が薄っすらと切れている事に気付いた。
「っち、またか……」
どうも最近、紙かなんかで切ってしまう事が多いようだ。祐太郎は舌を鳴らすと、時計を確認した。
「先公おせーな……勉強できたじゃねーか」
祐太郎がコウジに言った。コウジは何か知らないが、目が輝いてる。
祐太郎は訝しんで、コウジの脇をつつく。なんだよォ、と声を漏らした。
「気持ち悪い顔してどうしたんだよ」
コウジが振り向く。
「朝センコーが、編入生が来るっていってたやん?アメリカに留学してたって奴。多分それじゃね?」
寝てたから知らなかった。
「まぁどうせ男かブスかアメリカンカルチャーに刺激された糞ビッチだろ。興味ねーわ」
机に顔を埋めて寝る体制に入る。
その時、ドアがガラッとあいた。と同時に、男子から静かなどよめきが上がった。
髪は少し茶色く焼けているものの、ポニーテールで纏められてる。
体はすらっとして引き締まっており、運動神経の高さを伺わせた。
顔も可愛い。
ただし、鼻にテイッシュを詰めている事を除けば。
少女は名前を述べたあと(祐太郎にはカオリという名前しか聞こえなかった)先生に誘導され一番後ろ、つまり祐太郎の席の隣までキビキビと歩いて行った。
コウジの言うとおり、確かに厳しそうな性格をしていそうだと、祐太郎は横目で見ながら、テスト用紙が配られるのを待った。
「今日のテストはちょっとトラブルがあったので、明日に持ち越しです。
その分範囲増やすから今日の授業はしっかり聞くように!」
祐太郎は感謝に打ちひしがれ、外を見つめる体制に入った。




