蒼の剣士と紅の剣士
二つの国を分ける、大きく広大な森の上で、空を飛び交う蒼と紅二つの影があった。
強烈な刃震音を響かせ、火花を飛ばしな戦っている。雲はまるで戦場を用意するかのように丸く空を開け、洩れ陽がベールのように辺りを覆っていた。
蒼い羽織を着た青年と、紅の衣を纏った少女が高速で飛び交いながら、何度も剣を交差させ、空を斬り、すんでの所で避けていた。
「糞ッ!埒があかねえ!ちょろまか逃げずに正々堂々と闘えこの便所虫!」
蒼い剣士は鋭い目で少女を睨むと、空を蹴り、辺りの空気を弓のように鳴らしながら突進してきた。
「残念ながらこの世界には便所虫なんていないのよ!
単細胞は黙ってなさいよこの糞ノロマ!」
すんでの所でかわすと、すかさず剣を下から上に振り上げる。
青年はそれを火花を散らしながら受け止めると叫んだ。
「俺は蒼の国の期待一身に背負ってんだよ!てめえを殺せば戦争は終わる!テメェを八つ裂きに引き裂いて俺が終わらせてやるよ!」
「こちとら同じ事なのよッ!!死ねえええッ!」
二人とも強い勢いで飛ばされ合う。
青年は腕に小さな切り傷。少女は鼻血を垂らしていた。互いに今も殺し合いを始めそうな勢いで……実際殺しあってるのだが、憎悪の感情を込めて睨み合った。
そのとき二人とも、はっとしたように目を開いた。
「とりあえずはここまでね……あんたがあっちの世界で、事故かなにかで死んでくれる事を願うわ」
紅の少女は吐き捨てるようにそう言うと、剣を鞘に納めた。
蒼の青年は罵ろうと口を開いたが、既に遅かった。
世界は変わり、日常に戻る。舞台は学校へと姿を変える。