狐、旅に出る
遅くなり、そして短くなりましたorz
皐とルーミアが台所で朝食───実際は御菓子だが───を食べ終わりのんびりと御茶を飲んでいると、妖夢が三人分の空食器をゆっくりと運んできた。
「よっ、寝坊助庭師」
「いきなりですか!? それと皐さん、料理上手いんですね! 美味しかったです!!」
「そーかー?」
二つの意味で驚く妖夢を皐はなんでもなさそうな表情を浮かべながら反応し、ルーミアは皐が新たに造り出したどら焼き───本人曰く、食後のオヤツだそうな───を食べつつ首を傾げながら見る。
「……って、何でルーミアが居るんですか!」
「今更だろ……というか、お前等って知り合い?」
「そーなのだー」
「そーなのかー」
「マネするなー!」
皐とルーミアのやり取りを途中から不思議そうに見ていた妖夢は思わず溜め息をつき、そんな妖夢をジーとルーミアが見つめる。
「……なんですか、ルーミア。言っておきますが私は食べ物じゃないですよ? それとも私の顔に何か付いてますか?」
妖夢の言葉にルーミアはウーンと悩むように首を傾げながら妖夢を見続ける。
「うーん……おいしそうだけど食べられない寝坊助庭師?」
「まさかの呼び方に悩んでたんですか!? というか切実に私の呼び方変えて下さい!! 私の呼び方は普通に妖夢で良いですから!!」
妖夢が涙目になりながらルーミアにお願いするが、妖夢を無視してツンツンと皐の服の裾を引っ張る。
皐は溜め息をつきながら能力でどら焼きを造り出してルーミアに渡すと、ルーミアは笑顔で受け取る。
「サツキ、ありがとー!」
「何故皐さんは名前で私は寝坊助庭師なんて呼び方なんですか!? 本当に私の呼び方を変えて下さい! お願いします!!」
遂に泣き出してしまった妖夢を見て皐は仕方無いような溜め息をつくと、子供をあやすようによしよしと妖夢の頭を撫でる。
そんな光景を見てルーミアは再び首を傾げる。
「……なきべそ娘をあやす母親なのかー?」
「んな訳ねぇだろうが!」
皐は妖夢をあやしながらルーミアの頭部に拳骨を食らわせる。
少しして何故か台所へやって来た小町は泣きべそな妖夢にあやしている皐、頭にたんこぶが出来ている状況で若干目元に涙を溜めながら美味しそうにどら焼きを食べているルーミアを見つけると溜め息をつく。
「こりゃ、なんてカオスかね……」
小町の呟きに反応する者は居なかった……。
◇◆◇◆◇
「んで小町さん、台所になんか用でもあるのか?」
おぼんに4つの湯飲みとクッキー数枚───勿論皐が能力で造り出した物だ───を乗せて来た皐が小町に訊きながら湯飲みを一つずつ席に座っている小町、妖夢、ルーミアに配り、最後に残った湯飲みを自分の座る場所に置いてから自身も席に座る。
御礼を言いながら湯飲みとクッキーを受け取った小町は湯飲みに入った御茶を一口飲む。
「この御茶は妖夢が淹れたのかい?」
「いや、俺だが?」
至極当然のような表情をする皐を見て小町は何度か目を瞬かせると、静かに御茶をもう一口飲む。
「……あんた何時でも嫁入り出来るね」
小町の言葉に皐と妖夢が席から転け落ち、ルーミアはクッキーをかじりながらウーンと唸りながら首を傾げる。
「……サツキは母親?」
「おっ、それは面白そうだねー!」
笑いながら言う小町に妖夢は笑うのを耐え始め、皐は盛大に溜め息をついた。
「俺、ちょっと旅に出ようと思う」
あれから時間帯は昼頃になり、居間で昼食を食べていた皐が不意に言った。
ちなみに昼食は炒飯に玉子焼きと味噌汁で、炒飯を作ったのは皐、それ以外は妖夢だ。
それとルーミア以外は箸を使って食べており、ルーミアはスプーンとフォークを使って食べている。
「突然ですね!?」
「流石のあたいも驚いたね……にしても、突然旅なんてどうしてだい?」
妖夢が驚く中、ルーミアと幽々子は美味しそうに玉子焼きを食べつつも横目で皐を見て、小町が味噌汁を飲みながら訊く。
「いや、俺って幻想郷の事とか全く知らないからさ。ちょっと見て回ろうかなーと」
皐の答えに小町と妖夢は納得し、ルーミアはそっと妖夢のお皿に残っている玉子焼きを取って食べ、幽々子は妖夢と小町の炒飯をそっと取って食べる。
「だけど、一人でかい?」
「一人旅には慣れてるし、問題ないと思うんだが?」
「そうなのかい?」
「なら、わたしがサツキについてくー!!」
ルーミアが玉子焼きの刺さっているフォークを持ったまま手を上げる。
その直後に、小町と幽々子もルーミアの真似───箸を持った手ではないが───のように挙手したのだが、
「幽々子様は駄目です!」
「と言うか、死神は働け」
「はたらけー!」
と周りから拒否され、渋々手を下げる。
一応妖夢も旅に着いて行こうとしたが、白玉楼に幽々子を一人にするのは駄目という理由で却下され、結局皐はルーミアと一緒に幻想郷を旅する事になり、翌日の早朝に白玉楼を発つ事になった。
「……って、いつの間にかあたいの玉子焼きが!?」
「私の玉子焼きと炒飯は一体何処へ!?」
「御馳走様ー」
「そーなのだー」
「やれやれ……俺の玉子焼きと炒飯やるから、それで勘弁してやってくれ……」