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東方狐想記  作者: 畏無
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狐、宵闇の妖怪と知り合う

 翌日、眠たそうに目を覚ました妖夢は布団から上半身を起こし、目をショボショボさせながら隣で寝ている筈の皐へと顔を向けが、隣には綺麗に畳まれた布団があり、皐は居なかった。


「……ふぇ?」


 妖夢は寝惚けた状態で少しの間キョトンと眠たそうに目を擦ると、再び布団の中に戻ろうとする。

 すると、


「ん? やっと起きたのかい? お寝坊さん」


 寝惚けた妖夢が声のする方へ顔を向けると、襖を開けながら部屋に入って来ているる小町が居た。


「……サボり死神、何で居るんですぅー?」


 目をショボショボさせた妖夢の言葉に小町は足下が滑ったかのように転けそうになるが、何とかバランスを取った結果、転けずに済んだ。

 ふぅ、と安堵の息を吐いた小町は寝惚けている妖夢に言う。


「誰がサボり死神だい!? それと今日あたいが居るのは仕事だよ」


「そーですかぁー……」


 小町は寝惚けている妖夢の反応に目頭を押さえる。

 そんな小町の行動に再びキョトンとしながらも妖夢は、布団の中にもぞもぞと戻っていく。


「(こりゃ、仕事の前に色々やらないと駄目かもね)やれやれ……」


 小町は布団の中に戻っていく妖夢を見ながら溜め息をついた。


◇◆◇◆◇


「なんでさ……」


 執事服の袖口から包帯が微かに見えている皐は台所で溜め息をつきながら蓋付きの鍋の火加減を見つつ、包丁を使ってキャベツを千切りに刻んでいた。

 皐が鍋の火加減を見たりキャベツを刻んでいる──基料理をしている理由は、幽々子が駄々っ子のように皐に朝食を作るよう頼んだからである。


「本来なら妖夢の仕事……って、妖夢は庭師か。それに俺はそんな妖夢のせいで重傷なんだがなー……」


 一人愚痴りながらキャベツの千切りを終えると、刻んだキャベツを四枚のお皿に分ける。


「さっき小町さんから聞いた所だと、妖夢はまだ寝てるみたいだしな……てか、何故に小町さんの分も作らないといけないんだよ……朝飯くらい食べてから仕事やれっての……」


 皐は再び溜め息をつき、蓋付きの鍋の蓋を開ける。

 鍋の中には沸騰したお湯で茹でられているブロッコリーが入っており、皐は火を消してから網状の入れ物に入れ替えて湯切りする。

 湯切りしたブロッコリーをキャベツを乗せた四枚のお皿に再び分ける。


「ん〜……後は玉子焼きでも作っとくか。ついでにミニトマトも付けとくか。鮮やかっぽいし」


 先程まで愚痴っていた皐も何気に料理を楽しんでいるようで、底の深い入れ物に卵を四個入れ、その中に砂糖を少々加えてから橋で混ぜ始める。

 そしてフライパンに火を掛けて少ししてから油を引くと、フライパンに馴染ませてから混ぜた卵を少し流しては焼きながら巻いて、また少し流しては焼きながら巻いてを繰り返す。

 そうして出来た玉子焼きを包丁で十六分割して、四つずつお皿に分ける。

 最後に水で洗ったミニトマトからへたを取ってキャベツの上に乗せた。


「うっし、こんなもんか」


 皐がお皿を二回に分けて運ぶ事にして一回目に二皿を運ぶと、二回目を運ぼうと台所に戻って来ると──


「おいしいのだー」


 残っていたお皿の片方を素手で食べている黄色に近い金髪に襟付きの白い服と赤いネクタイ、その上から黒い袖無しの服とスカート、そして髪の毛に赤いリボンを巻いている幼い少女が居た。


「……誰だ?」


 皐が声を掛けると、少女は玉子焼きを手に持ちながら皐を見る。


「……あなたは食べてもいい妖怪?」


「んな訳ねぇだろうが。てか、勝手に人の作った料理食べんなよ」


「そーなのかー……おいしそうなのだー……」


 少女の言葉に即答した皐に対し、少女は落胆しながら持っていた玉子焼きを食べる。


「だから食べんなっての」


 皐は呆れながら少女の頭をチョップする。

 少女は頭を痛がりながらもお皿に残っている玉子焼きに手を近付ける。

 そんな少女を見て皐は溜め息をつく。


「……ちゃんと野菜も食べろよ」


「わかったのだー!」


 皐は少女に言った後、少女を台所に残し、残っていたお皿を運ぶ事にした。










 再び台所に戻って来た皐はキャベツの千切りを素手で食べていた少女に訊く。


「なぁ、お前誰だ?」


「わたしはルーミアだよー」


 少女──ルーミアは答えてから最後に残ったブロッコリーとミニトマトに触れようとはするが、全く触れる気配がない。


「ちゃんとトマトとブロッコリーも食べろよ?」


「うぅ……」


 皐に指摘されたルーミアは渋々ミニトマトとブロッコリーを食べ、ちゃんと食べ終わったのを見て皐はルーミアの頭を撫でる。


「よく出来たな。御褒美やるよ」


「あなたを食べて良いのー?」


 皐の言葉にルーミアは目を輝かせながら言い、皐は溜め息をついた。


「俺じゃねぇっての……ほら、コレが御褒美だ」


 能力を使って御菓子──どら焼きを造り出すと、どら焼きをルーミアに渡す。

 どら焼きを若干落胆しつつも受け取ったルーミアはどら焼きを一口食べる。


「……おいしい!!」


「そりゃ良かった」


 ルーミアが喜ぶのを見た皐はホッとした表情をすると、再び能力を使って芋けんぴを造り出すと食べ始め、ルーミアもどら焼きを食べるのを再開する。

 少しして、御互いに食べ終わるとルーミアが皐に声を掛けた。


「ねぇ、美味しそうだけど食べられない妖怪」


「俺の名前は皐だ。それと美味しそう言うな」


「そーなのかー」


「そーなのんだよ」


「マネするなー!」


 ルーミアとのやり取りに思わず溜め息をついた皐に、ルーミアが首を傾げた。


「この幻想郷ってのは、色んなのが居るよな……お前とか」


「そーなのかー?」


「そーなんだよ」


「またマネしたなー!」


 ルーミアの反応に皐はルーミアの頭をポンポンと叩きながら言う。


「まぁ落ち着けって。どら焼きの御代わり要るか?」


「いるー!!」


 ちゃっかり皐に餌付けされていたりするルーミアだった。


◇◆◇◆◇


「玉子焼きちょっと甘!」


 皐の作った朝食を食べた幽々子と小町、そして妖夢が偶然声を揃えて言った第一声だった。


「……意外に美味いわね」


「何気に料理上手いね、皐は」


「褒めてるのか、けなしてるのか判りませんね……」


 幽々子と小町の感想に妖夢は苦笑しながらも皐の作った朝食を食べる。

 そして少しして、三人が朝食を食べ終えると妖夢が小町を見る。


「……で、何で小町さんは居るんですか?」


「またかい!? だから、今日あたいが居るのは仕事だよ!!」


「そうですか。……またって何ですか?」


 妖夢の言葉に小町は机に顔を俯せにして溜め息を吐き、幽々子は扇を開いて口元を隠しながらも笑っている雰囲気を出していた。


「それで、仕事とは?」


「その前に、妖夢と幽々子はコレを読んだかい?」


 顔を上げた小町は話題を変えるように足下からある物を取り出した。


「あら、それってデマの多い『文々。新聞』じゃない。それがどうしたのー?」


 幽々子が扇を閉じながら訊くと、小町は『文々。新聞』の見出しを妖夢と幽々子に見せる。

 見出しには『悪魔の妹、脱走!?』と書かれており、妖夢は不思議そうに小町の顔を見た。


「またデマですか……? にしては何とも今まで以上にデマっぽいですが……」


「どうやら本当らしい。この記事によると、突然紅魔館で爆発が起きて、紅魔館の中から出てきたのを門番が見たんだそうだ」


 小町の説明に妖夢は恐怖心から息を呑む。

 小町は、それで、と続きを説明し始めた。


「そして出てきた妹は一直線に何処かへ飛んで行ったようさね」


「何処かへ、ですか……」


 小町の説明が終わり、妖夢が険しそうな表情を浮かべていると、幽々子が突然閉じた扇を妖夢に向ける。


「なら妖夢、小町と皐の三人で何とかしてくれる?」


「……はいぃぃぃ!?」


「あたいもかい!?」


 妖夢と小町が驚く中、幽々子は閉じていた扇を開き、口元を隠す。


「小町については私が映姫にお願いしておくから、宜しく頼むわねー?」










「──ハックシュン!!」


「風邪なのかー?」


「いや、違うとは思うんだがな……?」


「そーなのかー?」


「そーなのんだよ……多分な」


「またマネするなー!」

未だアンケートを募集しています。

お題は『皐が白玉楼を出てから最初に向かう場所』


候補は以下の通りです


①博麗神社

②妖怪の山

③人間の里

④太陽の丘


期限は今月末までにと変更させていただきます


御協力宜しくお願いします

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