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東方狐想記  作者: 畏無
3/7

狐、庭師と食後の運動をする

 御菓子を食べながらの自己紹介が終わってから数時間が経ち、皐は相変わらず煙草のように芋けんぴをくわえながら、妖夢の案内で白玉楼内を歩いていた。

 そして白玉楼の広い庭に着くと皐は庭を数秒間見続けると、突然妖夢の頭を撫で始め、撫でられた妖夢は驚きながら皐の顔を見る。


「いっ、いきなり頭撫でないで下さい!!」


「いや、悪い悪い。この広い庭を見てると、庭師である魂魄がどれだけ頑張ってるかと思ってな?」


「……妖夢で良いですよ、皐さん」


 皐の言葉を聞き、妖夢は頬が少し紅くしながら皐を見て言うと、皐も少し頬が紅くなっていた。


「顔紅いですよ、皐さん」


「慣れてない事は言うもんじゃないな……てか、妖夢も紅いが?」


 妖夢に指摘されは皐は妖夢の頭から手を離すと、突然顔を背けた。

 妖夢はどうしたのかと心配そうに首を傾げるが、皐は顔だけ妖夢に向けて話し掛けてきた。


「そ、そういやさ、妖夢って二刀流なのか?」


「えっ、あ、はい」


 妖夢は返事をして皐を見ると、皐は一瞬だけ懐かしそうな目をしていたが、直ぐに何事もなかったような目になる。


「なら、ちょっと食後の運動でもしないか?」


「食後じゃなくておやつでしたけどね」


 庭にあった広いスペースを親指で指差しながら皐が言うと、妖夢は微笑みながら訂正し、皐も思わず笑い出した。








 場所は変わり幽々子の部屋では、幽々子と小町が御菓子を食べながら雑談を繰り広げていた。

 そんな中、小町が思い出したかのように手の平をポンと叩いた。


「それ古いわよー?」


「悪かったね……いや、実は前に四季様が言ってた事を思い出してさ?」


 小町の言葉に湯呑みを持ちながら幽々子は興味津々な表情になる。

 小町は人差し指で眉間をトントンと叩きながら話し出す。


「えっと……確か1ヶ月ちょっと前辺りに、ある亡者の裁判中で使った浄玻璃の鏡に映った内容の事で四季様が珍しくあたいに会いに来て話してね?」


「あら、どんな内容だったの?」


 小町の話に驚きながらも幽々子は続きを催促する。


「確か……『二匹の血塗れの狐の前に黒い何かが居て、周りに無数の死体と武器が落ちている状況で、もし貴女が血塗れの狐の片割れならどうする?』だね」


「どうするって……普通なら逃げるとかじゃないのかしらー?」


 幽々子が首を傾げながら訊くが、小町は煎餅を一口かじりながら答える。


「あたいも最初は四季様にそう答えたんだけどねー。四季様も『大抵はそういう答えですよね』と言ってたんだけど……」


 次の小町の言葉を聞いた直後、幽々子の手元から湯呑みが落ち、小町は慌てて湯呑みをキャッチした。


◇◆◇◆◇

 時間は少し戻り、庭の広いスペースでは左腰に備えた刀──白楼剣の柄を左手の逆手で掴み、何時でも抜刀出来るような状態で構えた妖夢と、煙草のようにくわえた芋けんぴを上下に揺らしながら腕を組んだ状態の皐が対峙していた。


「んじゃ、始めるか」


「では──参ります!」


 妖夢が一歩踏み込むと、次の瞬間には皐に目の前に逆手で白楼剣を抜刀した状態で斬り掛かっていたが、皐は慌てずに腕を組んだまま体を少しずらして白楼剣を避ける。

 それと同時に皐は右膝蹴りを妖夢の横腹へと放とうとするが、妖夢は片足で地面を蹴って空へと飛び、紙一重で回避する。


「やりますねっ!」


「まぁな。……だが、まだまだ!」


 妖夢が白楼剣を逆手から持ち変えながら言うと、皐は笑みを浮かべながら芋けんぴを噛み砕きつつ、右足を地面に着け、そのまま右足で地面を蹴り跳躍して浮かんでいる妖夢に近寄ろうとする。


「させません!」


 妖夢は白楼剣を振るい複数の斬撃を放ち、皐は斬撃が前髪の先端に何度か掠りながらも斬撃を避ける。


(厄介な斬撃だな……だったらっ!)


 皐は両手に妖力を纏わせて斬撃を一撃一撃確実に破壊する。


「斬撃がっ!?」


(これで一応斬撃は対処出来るが……全く埒が明かないな。……仕方無い!)


 斬撃が破壊される事に妖夢が驚く中、 皐は斬撃を破壊しながら地面へと降下し始める。


(何故降下を……?)


 妖夢は降下している皐に斬撃を放つのを止め、白楼剣を構え直す。

 そして皐の左足が地面に着く直前に妖力が左足に纏われ、左足と地面が接触した瞬間、地面が抉れながら皐が妖夢の目の前にまで一瞬の内に移動していた。


(転位!? 違う、妖力を加速装置のように使っての跳躍ですか!!)


 妖夢が目の前で起きた現象を分析しつつ白楼剣を振るおうとするが、皐は白楼剣を握っている左手首にチョップを食らわせ、その場で身体を回転させながら妖夢の腹部を尻尾で叩く。


「くっ!!」


 妖夢はチョップされた際の痛みで白楼剣を落としてから腹部の衝撃によって吹き飛ばされ、皐から距離が開く。

 空中で体勢を戻した妖夢は何処からか一枚のカードを取り出す。


(カード……? 一体なんだ……?)


「──餓王剣「餓鬼十王の報い」!」


 皐が内心不思議がっていると妖夢はカードを皐へと向け、その直後皐の目の前には隙間のないような無数の弾幕が突然現れ、皐へと迫ってきていた。


「んなっ!?」


 突然出現した弾幕に驚いた皐は対応出来ず、無数の弾幕は容赦なく皐との距離を縮め、皐は弾幕に呑み込まれた……。










 何度か咳き込みながらも深呼吸をした妖夢は、弾幕に呑まれた皐を警戒していた──が、ふと自身のを持っていたカードへ視線を向けた。


「(そう言えば、皐さんって幻想郷を知らなかったような妖怪……と言う事は──)か、解除!!」


 妖夢が慌てながら皐の方を見て叫ぶと弾幕は一斉に消え、妖夢は弾幕の先を心配そうに見る。

 すると──


「何故かは知らんが、全て消えたか……」


 身体中傷だらけでありながら、白楼剣を持った皐が頭から血を流しつつも浮かんでいた。


「良かった……(けど、何故白楼剣を……?)」


 皐が一応無事だった事に妖夢がホッとすると、皐はゆっくりと眼を閉じ、白楼剣を握ったままふらっと背中から地面へと自由落下し始めた。


「さ、皐さんっ!?」


 妖夢は落ち始めた皐を見て気を失っている事に気付き慌てて近寄ろうとするが、身体中に痛みが走り動けなくなる。


(しまっ……!!)


 内心後悔しながらも妖夢が無理矢理動こうとした次の瞬間──気を失っている皐は小町に抱かれていた。

 ……お姫様抱っこで。


「こ、小町さん!!」


「やれやれ……そろそろ帰ろうと思えば、これは一体どういう事だい?」


 小町に目を細めながら訊かれた妖夢は頬を紅くしながら苦笑いを浮かべた。


◇◆◇◆◇

 屋敷内に運び込また皐は妖夢が最初に会った時のように全身包帯を巻かれた状態で布団の中で静かに眠っていて、そんな皐の隣には皐と同じく包帯を巻かれ布団に横たわりながら起きている妖夢と、妖夢の隣に小町と幽々子が並んで座って居た。


「全く……妖夢、あんたやり過ぎだよ? あたいの能力が『距離を操る程度の能力』だったから皐は地面に衝突せずに済んだけどさ。あのまま衝突してたら今以上に傷が増えてたよ?」


「全くその通りねー」


「済みません……」


 小町と幽々子の言葉に妖夢は恥ずかしがりながら顔の下半分を掛け布団で隠しながら謝るが、小町は妖夢の額をデコピンする。


「あたい等より先に謝る相手が居るんじゃない?」


 妖夢は額をさすりながら隣で眠っている皐を見る。

 静かに眠ている皐は、完全に女性が寝ているように見える。


「……皐さん、本当に済みませんでした」


「寝てる相手に謝るのはどうかと思うんだけどー?」


 寝ている皐に謝る妖夢へ幽々子が訊くと、妖夢は目の下にまで掛け布団を上げながら小さな声で答える。


「勿論皐さんが起きてからも謝りますが、今は……」


「けど、妖夢が恥ずかしがり屋さんだったのはちょっと意外だねー」


 小町が微笑みながら言うと妖夢は顔を真っ赤にしながら掛け布団で頭を隠し、 そんな妖夢を見て幽々子は微笑んでいた。

 それから少しして小町は帰っていき、妖夢は眠りについた。

 その夜──自身の部屋から月を見上げていた幽々子は疲れたような溜め息をつきながら呟く。


「本当なのかしら……『もう片割れを救う為に、自らの存在を無かった事にして黒い何かを消し去った』なんて……」










 その夜、とある鴉天狗が幻想郷で発行している『文々。新聞』という新聞の号外版が幻想郷中に配布された。

 その号外版に書かれていた見出しは『悪魔の妹、脱走!?』で、白玉楼にその新聞が届いたのは、翌日の朝の事だった……。

もう二話ほどしたら、皐は白玉楼から出る予定です


そこで皆様にアンケート

『皐が白玉楼を出てから最初に向かう場所』

候補は以下の通りです


①博麗神社

②妖怪の山

③人間の里

④太陽の丘


期限は一応今月中旬か下旬と考えてます


御協力宜しくお願いします

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