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東方狐想記  作者: 畏無
2/7

狐、白玉楼の住人とサボりな死神と出会う

「──貴方に《自由》を差し上げます。代わりに一つ《お願い》が有ります。それは──」


◇◆◇◆◇

 狐の青年が目を覚ました翌日──白玉楼の幽々子の部屋では、幽々子と灰色の狐の青年が対峙するかのように座って居た。

 但し、狐の青年の服装は昨日とは異なり洋服───正確には執事服───を着ていた。


「……この服はなんだ」


「自分で着といて? その服は以前私の友人が偶然手に入れた外の世界の服らしいわよ? おねむな狐君」


 狐の青年の疑問に口元を開いた扇で隠しつつも笑っているような雰囲気を出しながら答えた幽々子に、狐の青年は服の端を引っ張りながら納得したような表情をする。


「そうか……それと語尾を延ばしながらおねむな狐君と呼ぶな、西行寺」


「なら私の事は幽々子と呼んで? 幽々子ちゃんでも良いわよ?」


 狐の青年は幽々子の言葉を聞き、溜め息をつくと灰色の獣耳をピクピクと動かしながら頭を掻く。


「……妥協案として『さん付け』をさせてもらう」


「仕方無いわねぇー」


「仕方無いのか……?」


 幽々子は言いながら扇を閉じる──直後に再び開いて口元を隠す。


「そう言えば、幾つか訊きたい事があったのだけど……訊いて良いかしら?」


「(何故一旦扇を閉じたんだ……?)……答えれる内容による」


 狐の青年の答えを聞いた幽々子は狐の青年に幾つもの質問を始めた。










「……さて、今日はこれ位にしましょうか」


 西行寺家の専属庭師兼幽々子の警護役の妖夢は、庭師の業務である庭の手入れを終えると、思いっきり背伸びするように体を後ろに反らす。


「御疲れさんだね」


「はにゃっ!?」


 体を後ろに反らした直後、目の前に出てきた小町の顔を見て妖夢は驚きながら尻餅をつく。


「中々可愛い悲鳴だね」


「こ、小町さん!? 驚かさないで下さいよ!! それと、なんで此処に居るんですか?! それにいつもの鎌は?」


 尻餅ついた妖夢を見て笑う小町だったが、妖夢の言葉を聞いた直後に目が泳ぎ始めた。

 それを見て妖夢は目頭を押さえながら盛大に溜め息をつく。


「また仕事サボったんですね……いつかクビになるんじゃないんですか?」


「そんな事は無いよ──多分」


「多分なんですか!?」


 小町の言葉に驚く妖夢を見て、小町は笑いながら妖夢の頭を撫でる。


「まぁ、何とかなるって。それにサボったのは冗談で、本当は今日休みなんさ」


 頭を撫でながら言う小町に妖夢は若干頬を膨らせるが、そんな妖夢を見ながら頭を撫で続ける小町は、ふと思い出したかのように妖夢に訊く。


「そういや、あの狐の妖怪は目を覚ましたのかい?」

「あっ、はい。つい昨日ですが」


 妖夢が答えた直後──突如屋敷の方から女性の悲鳴が聞こえてきた。


「な、何事だい!?」


「──幽々子様ぁ!!」


 小町が驚く中、妖夢は屋敷の中へと飛び込むように走り出す。

 小町は慌てて妖夢を追い掛けながら、愚痴るように小さく呟く。


「──これからは休みの時にも鎌を持っておいた方が良いかも知れないね。となると……」


◇◆◇◆◇

 屋敷の廊下を走る妖夢は刀を一本だけ右手に抜刀すると、幽々子の部屋の襖を勢いよく開く。


「幽々子様ぁ!!」


「あら妖夢、どうしたの?」


 妖夢が見た幽々子の部屋の中では、左手を頬に当てながら嬉しそうな顔をした幽々子と右手を頬杖をつき、灰色の尻尾を揺らしながら口に煙草のようにくわえつつ黄金こがね色の棒状の御菓子をポリポリと食べている狐の青年、そして──机の上いっぱいに乗った御菓子の山だった。


「ゆ、幽々子……さま? なにを……というか何故御菓子の山……?」


「おやおや、こりゃどういう状況だい?」


 幽々子達を見てポカンとなる妖夢の後ろに追い付いた小町が部屋の中を見て呆れながら訊く。

 それに対し幽々子が嬉しそうな顔を浮かべたまま答える。


「この御菓子の山ねー、彼の能力なのよー」


「この御菓子の山が能力なのかい?」

「正確には『御菓子を造り出す程度の能力』だがな」


 幽々子の言葉に思わず聞き返す小町に、狐の青年が溜め息混じりに答えながら、何も乗ってない右手を握るように閉じてから次に開くと、右手の平に小さな白い饅頭が二個乗っていた。

 狐の青年は右手に乗った饅頭を妖夢と小町の方へ差し出す。


「食ってみ?」


「じゃ、じゃあ……」


「頂こうかね」


 饅頭を差し出された妖夢と小町は、座ってから妖夢が恐る恐る、小町が興味深そうに饅頭を受け取って食べる。


「お、美味しい……!」


「中々旨いねぇ!!」


 二人の反応を見て狐の青年は安堵の溜め息をつき、幽々子は笑顔を浮かべたまま机の上の御菓子に手をつけていた。










「ところで幽々子様、先程の悲鳴はなんだったのですか?」


 妖夢が煎餅を食べながら訊くと、笑顔でモンブランを食べている幽々子の代わりに、頬杖をついたまま先程より少し大きめに灰色の尻尾を揺らしながら新しく造り出した黄金色の棒状の御菓子を口にくわえつつポリポリと食べていた狐の青年が答えた。


「俺が自分の能力の事を使いながら話したら、幽々子さんは歓喜の悲鳴を上げたんだよ」


「歓喜の悲鳴、ですか?」


「だって、その能力なら何時でも御菓子食べ放題だと思って……」


 狐の青年の言葉にキョトンとなる妖夢に、幽々子は恥ずかしそうに言う。

 そんな中、話を聞きながらクッキーを食べていた小町が狐の青年に訊く。


「なぁ、あんた。幾つか訊いていいかい?」


「答えれる内容による」


 狐の青年の対応に幽々子はクスッと笑い、そんな幽々子を見た妖夢は少し首を傾げる。


「あんたの名前と、あんたの食べてる御菓子の名前。この二つだよ」


 小町の質問に妖夢も反応して、狐の青年は溜め息をつきながら頬杖を止める。


「先程幽々子さんにもしたんだが、改めて自己紹介させてもらう。俺の名前はさつき、種族は灰色に見えるかもしんないが、銀狐だ。それからこの黄金色の御菓子は『芋けんぴ』と言って俺の好物だ。……んで、あんたらは?」


 狐の青年──皐が自己紹介を終えると、再び頬杖をつき妖夢と小町に訊く。

それに対し妖夢と小町も自己紹介をし始める。


「私は魂魄妖夢です。西行寺家の専属庭師兼幽々子様の警護役をしてて、能力は『剣術を扱う程度の能力』です。それから、その……種族は、人間と幽霊のハーフです……」


「あたいは小野塚小町。種族は死神で、能力は『距離を操る程度の能力』だよ」


「私は西行寺幽々子。此処白玉楼の主にして、冥界の管理人よ。種族は亡霊で、能力は『死を操る程度の能力』よー?」


 妖夢と小町、そして何故か幽々子の三人の自己紹介に皐は灰色のような銀色の獣耳をピクピクと動かしながら同じく灰色のような銀色の尻尾を揺らす。


「……ま、まぁ、い、一応だが、宜しく」


「照れてんのかい?」


 皐の不自然な言葉遣いに小町が指摘すると、皐は顔を真っ赤にしながらフンと顔を背ける。

 そんな皐の態度に妖夢と小町がクスッと笑い、幽々子は微笑ましく皐を見るのだった。

本作初感想を頂けました!


九尾の白狐様、感想有り難うございました!

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