5.8 そこにラブはあるのかい? ひとつ屋根の下で
眠りを妨げないための防壁なのだろう。硝子か水晶のように透き通っている石の中で、先代女王サフィは眠り続けていた。
先代という響きから年上をイメージしていたが、見た目は俺たちとそう変わりない。実年齢はまた驚愕の数字なのかもしれないけど、素朴な印象に妙な安心感を抱いてしまう。
何処となく顔立ちが野々宮と似ている気がした。髪は空色で、少し長めなので、そっくりではないけど。
「ミーラブ、この青い結晶は何なんだ?」
「これは……拒絶の感情が固形化したものラブ」
「拒絶……?」
魔法の源が感情であることは理解してきたが、それでも拒絶という感情が魔法になることはイメージしづらかった。
戸惑いで言葉の出ない俺をよそに、ミーラブは説明を続ける。
「心が流した涙で溢れ出すと、魔力が結晶化して、その人は眠り続けるんだラブ」
ミーラブの語り口は静かで、淡々として素っ気ない。それなのに、なかなか解けない雪のように耳に残るものだった。
まるで古いおとぎ話を話すかのように、それも悲しい物語であるかのように、丁寧に言葉を音に乗せる。
「宝石のように硬く綺麗で、壊されることも汚されることもない場所で、眠り続けるラブ」
「……辛いことや悲しいことがあると、魔法使いはこうなるのか?」
「もしかして、チエがこうなると思ったラブ? それはないから、安心するラブ」
ミーラブは野々宮の肩からベッドのふちへと降り立つと、ゆっくりとした口調で語る。
「拒絶の結晶は空想の魔法と同じくらい難しい魔法ラブ。女王クラスの魔力じゃなければ発動しないラブ……というか、女王のために編み出された魔法なんだラブ」
「女王のために?」
ミーラブは結晶の上に飛び乗ると、眠るサフィの顔を見つめた。
「空想の魔法を使う女王が悲しみに囚われては、世界も悲しみに包まれてしまう。だから、悲しみが癒えるまで眠りにつく。そのための魔法が拒絶の結晶……ラブ」
「……この人は、何か辛いことがあったのか?」
「……さぁ、それはわからないラブ」
俺は軽い気持ちで訊ねたことを少し後悔した。魔法については無知も同然なのだから、仕方ないと言えば仕方ないのだけど、それでも後悔せざるを得ない。
後悔という感情も魔法になるのだろうか。なるとすれば、どんな魔法なのだろう。
サフィが感じたであろう悲しみに想いを馳せるが、同情という言葉が邪魔をする。また、安らかな寝顔を見て、こうして眠っている彼女は幸せなのかもしれないという感情も湧く。
仮に、今の感情を魔法にすればどうなるのだろう。何が起こるか分からない魔法になるのか、何も起こらない魔法になるのか。
「どうしました?」
野々宮が俺を心配するように首を傾げたので、慌てて手を振って否定する。
「何でもない。ミーラブの話を聞いて、大変だなぁと思っただけだ」
「そうですね……それにしてもミーラブ、物知りになりましたね。昔はわりと役立たずだったのに」
「ミ、ミーも魔法界でのんびりしてたわけじゃないラブ!」
野々宮は微笑みながら謝ると、優しくミーラブの頭を撫でた。
「この人が先代の女王様なんですね……」
「野々宮も初めて会うのか?」
「えぇ、何というか……普通の女の子ですね」
野々宮は何か言いたげな表情だったが、上手い言葉が思いつかなかったらしい。納得いかない顔のまま、サフィを普通の女の子と評した。
しかし、何となく言いたいことはわかる。かつて、魔法少女として活躍し、魔法の国の女王様になった人物にしては雰囲気が平凡すぎる。
「女王なのに縦ロールじゃないしな」
「縦ロールが女王の証みたいに言うのやめて下さい」
野々宮は難しい顔をやめて、ムッとした目つきを俺に向ける。うん、沈んだ気持ちで悩んでいる野々宮より、こっちの方が可愛い。
湿っぽいのはここまでにしよう。これからのことを決めなければならない。
「……まぁ、縦ロールはいいとして」
「よくないです」
ベッドの上には結晶の中で眠るサフィがいる。過去に心の許容量を超えるほどの絶望に襲われて、結晶の中で眠ることとなった女王だ。
先代となってもなお魔法界に影響を与え続けており、その身に何かあれば魔法界は終わったも同然だと野々宮は言っていた。
優秀で、尊敬されており、とても偉い人なのだろう。俺も敬うべき人なのだろう。いや、凄い人だとは認識している。
しかし、野々宮を休ませたい俺にとって、ベッドを占拠しているサフィは非常に申し訳ないことだが――邪魔だった。
「……退かせないかな、この人」
「えっ」
野々宮は、何を言っているんだこいつは、といった目をしている。俺は少し傷つきながらも、サフィの入った結晶に手をかける。
「んー……お、動きそうだ」
「ちょっとぉ!?」
「よし!」
俺は気合を入れると、結晶ごとサフィを持ち上げようとする。しかし、すぐに野々宮が全力で俺を止めた。
「や、やめて下さいっ! 先代女王ですよ!?」
「別に無礼を働こうってんじゃない。ちゃんと尊敬の念を込めて俺は、女王を床に降ろす」
「どんな尊敬なんですか!? ヒビでも入ったらどうするんです!?」
「壊れないし汚れないんだろ? 野々宮を床で寝かせるわけにはいかないし」
「だーめーでーすー! かすり傷一つでも責任取れませんよ!」
俺は真剣に言っているのに、何故野々宮はわかってくれないんだ。少しムカッとしてきた。
更に野々宮は追撃するように言葉を重ねる。
「どんなに慎重に降ろそうと、許せるわけが――」
「――そっと降ろしてもか!? 棚の上の豆腐を型崩れせずに床に置くくらいそっと降ろしても駄目か!?」
「床に置かないで下さいよ! テーブルに置いて下さいよ!」
「棚の上に置いてあった豆腐なんて誰も食わないんだから、床の上に置いたっていいだろうよ!」
「そもそも、どうして棚の上に豆腐を置いたんですかっ!?」
「棚からぼた餅って言うくらいなんだから、豆腐を置いたっていいだろうが!」
「ぼた餅だって置かないでほしいですよっ!」
「今は豆腐の話だろう!?」
「……はぁー」
深い、深い、溜息が響いた。ミーラブは肩を落とすどころか、全身をへこませて失望を表現していた。
俺と野々宮はハッとして、わけのわからないヒートアップをしていた己を恥じる。豆腐なんて今はどうでもいいじゃないか。
何と言って謝ろうかと考え始めて、俺はすぐに言葉を閃いた。しかし、それは謝罪の言葉ではなかった。
「……そうだ、さっきはありがとう」
「はい?」
「助けに来てくれただろ?」
「ああ……だって、起きたら外にアルバート王子が一人で寝てるんですよ? 何事かと思いますよ」
そう言うと野々宮は、先程の言い争いの怒りもプラスして、厳しい口調で俺に詰め寄る。
「どうして新藤さん一人で行ったんですか? 話し合いなら私か王子がいた方がいいでしょうし、それで済みそうにないなら……やっぱり、一人で行くべきじゃないです」
予想はしていたけど、実際に怒られると情けなくなってくる。一人で丸く収めれば皆が助かるだろう、なんて浅はかな考えだったなぁ、と反省する。
しかし、そんな格好悪いことを包み隠さず、野々宮に話せるわけもなく。
「あ、あー……わけは後で話す。とにかく今は休もう。王子とブラッドがどうなったかは心配だけど、今の俺たちが戻ったって迷惑になるだけだ」
ブラッドはアルバートに危害を加えるつもりはなかったように思えるし、アルバートもブラッドを傷つけることは望まないだろう。上手いこと膠着状態が続いてくれればいいのだが、と思う。
野々宮はまだ言いたいことがありそうだったが、諦めたように小さく息を漏らした。
「はぁ……わかりました。今はやるべきことをやりましょう」
「じゃあ、先代女王を退かして……」
「それは駄目ですってば!」
「うーん、ミーラブも反対か?」
「別に構わないラブ。どうせ寝てるんだから」
「えぇーっ!?」
嘘でしょう、と野々宮が固まっているうちに、結晶を持ち上げようと力を込める。だが――
「ん、ちょっと重いかな」
「そんなはずはないラブ。結晶は魔力の塊だから、見た目ほど重さはないラブよ?」
ミーラブはそう言うが、持ち上がらないのは確かだ。ただ、直接的な重さが原因というより、腕に力が入らない感じだ。魔法的な何かだろうか。
「というか、ミーラブが乗ってるからじゃないのか?」
「ミーはそんなに重くないラブ」
「じゃあ、先代女王が重いのか」
「重くないラブ!」
「そこまで怒んなくたって……」
持ち方が悪いのだろうかと考えていると、野々宮が何かに気付いたように俺の腕を掴んだ。
その瞬間、腕に鈍い痛みが生じた。
「っ……」
「あっ、ごめんなさい! でも、まだダメージが残ってるんですよ。無理しないで下さい」
野々宮が謝りながら手を離した。しかし、視線は俺の腕に注がれたままで、俺は何となく居心地が悪くなる。
いつの間にか気にならなくなっていたが、ブラッドに負わされた火傷が響いているようだ。満足に力を込めることができないのは、俺の身体の問題だった。
「新藤さんだって、休まなくちゃいけないんですよ? ベッドが空いたって、私は新藤さんに譲りますからね」
「お、おい、それじゃあ困る――」
「いいですから。二人仲良く、床で寝ましょう。クイーンサイズより広々です」
有無は言わせない、と言わんばかりの満足気な顔。上手いこと言ったとでも思ってるのか。溜息も出やしない。
俺は、野々宮はもっと我が侭でいいと思う。ベッドくらい使ったって、ばちは当たらない。魔法少女として魔法界を救おうとしているのに、報われないったらありゃしない。
それでも、野々宮はずっとこんな感じなのだろう。感謝の言葉を言えるはずもない、眠る相手をも気遣うような性格で生きてくのだろう。
こんな性格だから人助けをすることになったのか、人助けをしているうちにこんな性格になったのかはわからない。
とにかく心配だ。ずっと見守っていきたいと、思うくらいには。
「……ったく、しょうがないな。枕はミーラブでいいか?」
「……よくないです」
+ + +
それほど寒くもないのだが、眠気を誘うためにも暖かくした方がいいとの話になった。しかし、暖炉に火をつければ、煙が上がって居場所が知れるだろう。
ミーラブも、この家は気付かれにくいが、気付かれればすぐに来れる距離だと注意する。
どうせ俺は一晩、せめて数時間の仮眠さえ取れればいいのだ。これまでも休めば大抵の傷は治り、体力は回復した。そういうヒーロー補正があるのだろう、便利なものだ。
そういうわけで全力で隠れる必要はない。数時間しのげばいいだけで、それ以上は無駄な引き延ばしにしかならない。
つまり、時間を無駄にしないためにも、さっさと寝なければならない。眠くなるには暖かくした方がいい。だが、暖炉は使えない。そこでどうするか。
毛布でもあればよかったのだが、そういう類いのものはなかった。その後、すったもんだがあり、俺と野々宮は壁際で身を寄せ合って眠ることに――――
「って、寝れるかっ!」
「あ、もー……起きちゃったじゃないですかぁー、いい感じに夢見てたのにぃ」
「どうして、野々宮は寝れるんだよ……?」
「状況認識の差ですかねぇ、身体がぽかぽかしてきたのは確かですし……」
俺も休息を取るべき時間だということは認識しているし、身体も心もぽっかぽかだ。主に恥ずかしさで。
「ふわぁ……何処か知らない場所にいたんですよ……」
野々宮は何の前触れもなく夢の話を始めた。その口調はぼんやりとしていて、ほとんど寝ぼけているようだった。
余計な返事をして目を覚ましたら悪いので、俺は静かに聞くことにした。
「そこには皆がいるんです。皆が。お父さん、お母さん、春奈ちゃん、ミーラブさん、女王様……」
どうやら野々宮の知り合いが集まっているらしい。春奈ちゃんというのは、地元の友達なのだろう。
タイミングの悪い引っ越しで友達が減ってしまった野々宮には、幸せな夢に違いない。普通の友達であろう春奈ちゃんと魔法界の連中が同席しているのは変だけど。
「新藤さんがいて……」
俺もいるのか、ちょっと安心。
「神父さんがいて……」
「えっ」
思わず声が出てしまったが、野々宮は気にせずに続けた。
「健やかなるときも、病めるときも……」
「おいおいおい……」
だいぶ過程をすっ飛ばしたが、結婚式以外の何物でもなかった。隣で眠りかけている野々宮の格好は白いドレスで、ウェディングドレスに見えなくもない。否応がなしに意識してしまう。
「誓いの口づけをしようとしたとき……」
「ま、待て、心の準備が……」
「教会の扉が開いて……」
――卒業?
「アルバート王子が現れて……」
「……ま、待った。そのパターンはまずい!」
「王子が私に愛していると叫び……」
「夢だ。これはあくまで夢だ」
その展開では野々宮がアルバートにさらわれて、二人が愛の逃避行に――
「まぁ、私は王子を無視して結婚しちゃうんですけど……」
「……何で野々宮は王子にきついの?」
「十六歳ですからねぇ……結婚できますからねぇ……」
答えになってなかった。
野々宮の声はどんどん小さく、ぼそぼそと聞き取りづらいものになっていく。そろそろ深い眠りに落ちそうだ。姿勢が良いので、俺に寄りかかったりしないのが少し残念だったりする。
「新藤さんはできませんよぉ……男性は十八歳からですからねぇ……」
夢の中くらいファンタジーでいいのに、そこまできちんとしなくたって――ふと、疑問が浮かんだ。
「あれ? じゃあ、夢の中で隣にいるの誰だよ?」
「ふふふ……」
「おい、待て!」
「待ちますよー……」
その後、野々宮は微かな寝息を立てるばかりで、むにゃむにゃとすら言わなくなった。
俺は溜息をついて、早く眠ってしまおうと目を閉じる。しかし、視界が真っ暗になっても、野々宮の姿がまぶたの裏に焼きついていた。
「……あと二年、か」
待ってくれるのかと思うと、思わず頬が緩んだ。そのとき。
「ラブラブ……」
何もかも台無しにする冷やかしが聞こえて、俺は無言で足元のミーラブに手を伸ばした。
「ちょ、強く握りすぎ! 語尾! 口癖!」
「嘘つけ、たまに語尾が不自然になるの気付いてるんだよ」
ミーラブはじたばたと俺の手から逃れて、睨むような目つきで俺を見据える。
「……むしろ、語尾にラブが付いてる方が不自然だと思うラブ」
「開き直るなよ……問い詰めにくくなるだろうが」
「そんなことできるラブ?」
いざとなれば脅してでも聞き出す心構えだったのだが、ミーラブのあっけらかんとした態度に毒気を抜かれる。
俺は首の後ろに手を回すと、自分でも吹いてしまいそうなくらいむすっとした声で言った。
「俺はお前が何であろうと構わないけどさ……もし、野々宮をがっかりさせるような正体だと困るだろ。一応、知っておきたい」
正直な気持ちを打ち明けると、ミーラブはぽかんとした様子で口を開く。
「ミーがチエを騙しているとか、敵のスパイじゃないかってことを心配してたんじゃないラブ?」
「野々宮はあからさまな悪意は毅然と対処できるだろうけど、勘違いの善意だと相手を気遣って受け止めちゃうんだよ、だから面倒なんだ」
「……私はマサヒロの方が面倒だと思うなぁ」
「き、急に口調を変えるな! 余計に傷つく!」
ミーラブは小さく笑うと、野々宮の顔を覗きこみ、しっかりと寝ていることを確認した。
「まぁ、城で思わせぶりな話をした時点で、本気で隠そうって気もなかったけど。やっぱり、そこで気付いた?」
「それもあるけど……ブラッドと話していたときに、お前と野々宮が再会したと言ったら変な顔されたんだ。お前が昔のミーラブとは別の何かだって思ったのはそのときだ」
俺は昔のミーラブを知らないから、確信はできなかった。しかし今思うと、野々宮に対して聞き役に徹する姿勢とか、やけに魔法に詳しいこととか、気にかかることはあった。
俺でさえ違和感があったのだから、野々宮は既に感づいているのかもしれない。気付いてはいるが、怖くて確認できないだけかもしれない。
それなら野々宮には悪いけど、俺が先に聞いてやろうという気持ちになる。確認した結果、そこに悪意もすれ違いもないのであれば、心置きなく野々宮の背中を押してあげられる。
「お前、何者だ?」
俺は真剣な声色で訊ねるが、ミーラブは視線を泳がせて、自嘲するように笑みを零す。
「……チエの不安を紛らわせると思ってこの姿を借りたのに、ちょっと見ない間に君みたいな人がそばにいるなんて、馬鹿みたいだね」
「真剣に聞いてるんだ。誤魔化さないでくれ」
「ごめんね。チエと違って、私は我が侭で臆病なの。それに貴方が真剣だからって、私が同じだけの熱量を返せるとは限らない」
ミーラブの口からそんなことを言われて、俺はショックを受けていた。何とも嫌な気分だ。野々宮には味わってほしくない。
気を取り直して、少しでもマシな情報を求めて訊ねる。
「……本物のミーラブはいるのか?」
「いないよ。消えた妖精は生き返ったりしない。私はただ、姿を借りて話を合わせているだけ。私だって長い間、チエのことは見てきたから」
予想以上に、そして俺以上に捻くれた奴だけど、野々宮のことは本当に心配しているらしい。魔法界の住人は例外なく感情表現が下手というか、人付き合いが苦手なようだ。
こいつは人に善意を伝えることも、人の善意を受け取ることも下手なのだろう。
「……決めた」
「ん?」
「お前はミーラブだ。野々宮のためにも、今はとりあえずミーラブでいてくれ」
「うん、私もそのつもり。チエには心配かけたくないし……でも、私のやり方は貴方の言うとおり、勘違いの善意なのかもしれないよ?」
「幸せな嘘をつきとおして本物にするのがヒーローの役目だ」
覚悟を決めた。夢を貫く覚悟を。
魔法界の平和が理想だとしても、ミーラブの存在が虚構だとしても、そんな危うい幸せの綱を渡ることに決めた。
ブラッドのやり方は厳しすぎるけど、正しいかもしれない。ミーラブがいないことを認め、受け入れることは立派かもしれない。
だけど、俺はそんな正論を振りかざせるほど強くはない。大義なんて掲げられやしない。
精々、一人の人間を救えるか救えないかってところで、今回も野々宮だけで手一杯なのだが――
「ミーラブ」
そう呼びかけると、少し間が空いて――
「……何だラブ?」
「そろそろ寝るよ、おやすみ」
「おやすみラブ」
「ありがとう、野々宮を心配してくれて」
「……おやすみ」
もう一匹くらい、何とかなるだろ。
その決断をした途端、俺の意識は急速に眠りに落ちていった。




