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洋館の主  作者: 風蒼
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 その部屋は、子供部屋のようだった。小学生低学年くらいだろうか?そのくらいの子供が使う小さな机、小さな椅子。小さなベッド。そのすべてが真新しいが、なぜかほこりにまみれている。一度も使われなかったかのように。


 「ここは、あの子の部屋?いつ、家に戻ってきたの」


 外を見ると、日が暮れているのか何も見えない。


 彼女は、部屋の様子には何の疑問も持っていない。これが、普通なのだろう。

人の気配のない、冷たい部屋。誰も使っていないかのようなこの場所が。


 「ここに、何の用だ?」


 振り向くと、そこにいたのは


 「あきら!」


 彼女は嬉しそうに顔を輝かせると、『あきら』に抱きついた。


 「やっと見つけたわ。さあ、一緒に帰りましょう」


 そう言って掴んだ彼女の腕を、彼は振り払った。


 「どうしたの、あきら?」


 『あきら』は何も答えない。ただ、眉をしかめているだけ。


 「怒っているの?そうよね、ごめんなさい。もっと早く迎えに行ければよかったんだけど、お父さんに止められていたの」


 『あきら』はそれにも答えない。彼女は、何か言い様のないものを感じて言葉を続ける。


 「お父さんもお祖父ちゃんも、お祖母ちゃんも、みんな止めるの」


 「早く見つけなきゃならないのに、あきらはいないって」


 「ここにはいない、眠っているんだ、て。だから、探すのは諦めろ、それがあの子のためだと」


 「だけど、そんなの嘘よ。あの人たちは、私が嫌いなの。だから、私からあなたを引き離した」


 「でも、やっと見つけた。もう離さないわ」


 いつの間にか、家族への怨嗟となり、狂気を宿していた。彼女の『あきら』を見る目は、恐ろしく優しくそして、虚ろだった。


 「そこまで、時間です」


 彼女に水を指すようにかけられた言葉。


 「何を言っているの?ここは私の家よ、何であなたなんかにそんなことを言われなくちゃいけないの?」


 いつの間にそこにいたのか、『レイリ』が扉の前にたっていた。


 「あなたこそ、何をおっしゃっているのですか?ここは、屋敷の中ですよ」


 「何を言っているの?ここは、私の家よ!!」


 叫ぶ彼女に『あきら』は、静かな声で告げた。


 「ここは、俺の家だ」


 「そうよ。私たちの家よ」


 「ここ来る前、花を見たな。何の花だ」


 『あきら』の言葉は、およそ子供のものとは思えなかった。なのに、彼女は何の疑問も感じない。彼女は素直に答える。


 「そうね、あれは確か、マツムシソウ・・・」


 「マツムシソウの花言葉は、不幸な恋、恵まれぬ恋、そしてわたしはすべてを失った」


 「何を、いいたいの?」


 「まだ気づかないのか?お前の子は『     』」


 急に、音が消えた。何かをいっているのはわかる、でも内容がわからない。わかりたくない。


 あの子が、あきらが存在ないなんて。

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