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Ⅱ
彼女は部屋を出ると直ぐに子供を探しだした。
「何処?何処にいるの?私の子、出てきて」
一部屋一部屋見ていくが見つからない。それ以前に、数が多すぎる。この調子では、日が暮れる。
何処からか、音が聞こえる。軽い、子供の足音だろうか?
「もしかして、いるの?いるのね?待って!!」
彼女は駆け出す。そして、ひとつの部屋へと入る。
だが、部屋には誰もいない。物音のひとつもない。ただ、中央のテーブルにマツムシソウが花瓶に生けられていた。
「花?」
不思議に思い手を伸ばす。確かに手に取ったはずだ。だが、彼女は触ることが出来なかった。
まるでホログラフのように、花は彼女手を飲み込んだ。
驚き手を引く彼女の耳に、また先ほどの足音が聞こえた。
確実に、この部屋にいる。なのに、見えない。
「いるの?ここにいるの?」
カタッと、音がした。そこにあったのは、扉。隣へと続く扉。
彼女は何の躊躇いもなく入っていった。閉められた扉は、最初からそうだったように鎖がかけられていた。