冷酷な女王
女王の後ろには、がっしりとした体形の剣や斧を持った男たちが並んでいた。女王の身を守る手下だろう。それにしても、女王たちはどこに向かっているのか。まっすぐに私と横山くんに近づいている気がするような……? 女王が、少し前にこの世界にやってきたばかりの私たちに用があるとは思えない。
しかし、女王は恐ろしい顔で私たちの近くに来たのだった。いったい何の用事だろう。
間近で見る女王は気高くて美しい。私は何気なく横山くんに視線を移した。彼の口角がわずかに上がっている。エメラインと一緒にいたときよりも表情が緩んでいるような……?
私はさっぱり理解できず、女王に目を戻す。女王は一瞬だけ笑みを浮かべ満足そうにうなずいた。その時、横山くんも微かにうなずいた気がする。何かの合図だろうか。横山くんは女王と知り合いなの? そんなことは有り得ない。でも、私は彼について何も知らないのだから彼が何者かなんて分からないよ。
「そなたたち、泥棒の仲間なのか」
女王の低くて悍ましい声が辺りに響いた。泥棒なんて知らない。私はゆっくりと首を横に振った。ホウプキングダムを支配している女王が目の前にいる。何か言おうと思った。エメラインたちの想いを、女王にぶつけてやりたい。しかし、ギラッと光る女王の瞳が恐ろしくて声が出なかった。
「わたくしは見たのだ。そなたたちが盗人と共に歩いているところを!」
私たちが盗人と一緒に歩いていた? もしかして、その泥棒って……。
「そこに男がいたであろう。わたくしの宝石を盗んだ男だ。まだ認めぬか!」
女王が持っていたムチを頭上に上げる。私がとっさに目を瞑ったのと同時にムチを叩きつく音が聞こえた。目を開けると、横山くんが肩を押さえていた。そっか、横山くんが私を守ってくれたんだ。
「美由は絶対に守る」
横山くんの言葉からは力強い意思が感じ取れた。
「ありがとう、横山くん」
私が率直にお礼を言うと、横山くんは優しい笑顔を向けてくれた。