疑問
ホウプキングダムの人間が私たちの世界に来たことはあるのだろうか。やっぱりシャイニングランドの伝説があるということは、誰かが扉の奥に行ったことになる。
「シャイニングランドに行ったことがある人はいるんですか」
私が尋ねると、エメラインは頭をひねりながら答えた。
「それが分からないんだ。三年ほど前に、七色の橋が架かっているのを見た人はいるらしいけど」
「え、七色の橋って?」
私が再び疑問を問いかけると、エメラインは少し驚いた顔をする。七色の橋とは虹のことではないのだろうか。
「七つの光が空に架かるんだ。僕は見たことがないんだけどね。言い伝えで、七色の橋が架かった時にはシャイニングランドとホウプが繋がるらしい」
なるほど……。三年前に誰かがホウプキングダムから私たちの世界に行った。もしくは、私たちの世界からホウプキングダムに行った、ということかな。
「ミユの髪、きれいな色だよね。ホウプの人は、みんなブロンドかゴールドなんだよ。ミユのいた所では、みんなブラックなのかい」
エメラインが興味深そうに私の髪に触れようとする。それと同時に、黙っていた横山くんが顔色を変えて叫んだ。
「触るな、貴重なんだから!」
え?
「今のどういう意味なの。日本人はみんな黒髪でしょ。全然貴重じゃないよ」
横山くんが焦った表情を見せる。彼の額に汗がにじんでいるのが分かった。
「ニホン人? ミユはニホンという村から来たんだね」
エメラインが一人で納得するのを横目に、私はじっと横山くんを見つめた。彼は何も言わない。目を合わさない。私には訳が分からなかった。横山くんのおかしな言葉には意味があるのだろうか……。