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ネズミに乗ったオヅマ -for get me not-  作者: みっち~6画
第2章 ヤサグレとちっこいモンキー。
9/10

⑨ヤサグレとちっこいモンキー。

「どうやら、我らハ捕まったらしいゾ」

 けっ、とやさぐれたつぶやきを取り落とし、相手はオヅマを背もたれ代わりに寄りかかってくる。

「捕まったって、どういう……あっ、ちょっと。もう少し向こうに、行ってくれよ」

「は? 無理ダ。こうも床が傾いていてはナ」

 もふもふした毛皮でも着ているのか、相手はやけに柔らかい。いや待てよ、と両手を突っ張って懸命に押しのけながら、オヅマはなおも目を凝らす。今の自分の置かれた状況。体長10センチほどの体。ルイの逃がした……アレ。

「ネズミ!」

「失礼だナ。ハムスター、ダ」間髪いれずに、もふもふした物体はオヅマに反撃を加える。

「それに、痛いゾ。おまえのその、青い……」

 尻ポケットに入れたままの壊れたケイタイ電話からぶら下がる、トンボ玉のストラップが、ハムスターの毛皮に食い込んでいるらしい。

「あっ、すみません」

 狭くて暗い闇の中で、ハムスターに頭を下げている状況がおかしくて、オヅマは肩を震わせた。くっ、くっ、くっ、とこみ上げてくる笑いをかみ殺していると、ハムスターは不思議そうにオヅマの顔をのぞき込んできた。

 暗闇に慣れてきたオヅマのひとみに、ハムスターのふっくらとした輪郭が映る。首輪代わりに巻かれたのだろう髪ゴムには、きゃしゃな星のチャームが揺れていた。まちがいない、ルイの逃がしたという的場君の飼いハムスターだろう。

 逃がした、とオヅマは口の中で繰り返す。ならばルイはハムスターを返すために、捕まえたということになるのだろう。

「おれは?」

 偶然、いっしょに箱に入ってしまったのか。それとも珍しい小人の姿を見て、手に入れたくなったのか。

「おい、ちっこいモンキー。聞こえないのカ」

「……えっ、何が」

 これだからモンキーはな、とやさぐれた口調のハムスターは続ける。

「モンキーとは、こんなに小さい種もいたのだナ。知らなんダ」

「いや」慌てて半身を起こす。「違う。おれは、モンキーじゃない。人間だ。小津 真という名前もある。子供たちは、オヅマと呼んで……あぁ、いや。そうじゃなくって、今の状況。……何ひとつ、分からない。どうしてこうなったのか、分からないんだ」

 ふひゅ、ふひゅ、ふひゅ。空気の抜けるような音を立てて、ハムスターはひとしきり笑い上げた。「オヅマ? なんだ、それハ」

「そんなに笑うことか? おまえこそ」一息つく。「トゥウィンクル・トゥウィンクルなんていう、似合わない可愛らしい名前を……」

「やメろ、言うな。それだけは言わないでくレ」



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