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出戻りマーメイド  作者: 未羊


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第97話 離れ小島へ

 私は真鈴ちゃんをじっと見つめている。

 恐怖を感じている私を目の前にして、真鈴ちゃんはくすりと笑う。


「田均命と波均命と交流のあるあんたなら、多少私のことを見抜けていたかと思うんだけどね。買いかぶり過ぎたかしら」


 真鈴ちゃんはそういうと、水辺に向かって一歩を踏み出す。


「ちょっと、危ないわよ!」


 私が止めようとした瞬間だった。目の前でとんでもない光景を見てしまう。

 真鈴ちゃんが、水の上に立っている。

 信じられない光景に、私は絶句してしまう。一体何が起きているというの。


「あんたは、私に対して違和感を持っていたはずよ。それなら、多少勘付いてはいたはずなんだけどね」


「それは、どういう……」


 私が驚いた反応を示していると、真鈴ちゃんは大きなため息をついていた。

 かと思うと、私の顔をしっかりと見てきた。その表情に、私は思わず引き込まれそうになってしまう。


「私は、田均命や波均命とは近い時代に生きていた人間よ。海の神を鎮めるためにいけにえにされたの。つまり、私は大昔の人間っていうわけ」


「えっ?!」


 真鈴ちゃんが話し始めた内容に、私は目を丸くしてしまう。

 一体、何の話を始めたというのよ。

 私の反応を見て、真鈴ちゃんは再びため息をつく。


「まだ分からない? あんたが別の世界へと送り込まれた高波は、私が起こしたものよ。すべては、お兄ちゃんの……あの人の魂を自分の手に取り戻すためにね」


「海斗が、なんなの……?」


「しょうがないなぁ。あの島に渡ってから全部話してあげる。あんたの声が大きいから、ここじゃ誰かに聞かれちゃいそうだからね」


 真鈴ちゃんはそういうと、沖にある小島の方へと視線を向けていた。

 その方向にあるものといえば、古びた祠がある離れ小島だ。何度か上陸した場所だから、気になるといえば気になる。

 でも、今の状況だと、向かって大丈夫なのかという気持ちが先に立ってしまう。


「心配しないでよ。もうあんたには手を出さない。正々堂々と、お兄ちゃんをかけて戦おうじゃないのよ」


 真鈴ちゃんはにこりと笑っている。

 その言葉は、まるで私の気持ちを読んだかのような物言いだった。


「さあ、あんたの気配を消す魔法を使ってちょうだい。さすがに水の上を歩いていたら、嫌でも目立ってしまうわ」


「え、ええ。分かったわ」


 私は真鈴ちゃんに言われるまま、ステルスの魔法を使う。私たちの姿が、ぼんやりとしていく。

 私の魔法の効果を確かめた真鈴ちゃんは、私に対して手を差し出してくる。


「さっ、つかまって。私と手をつないでいれば、私の呪術の影響を受けられるわ。いちいち服を脱ぐのも面倒でしょ?」


「う、うん。それじゃ」


 私は真鈴ちゃんの手を取ると、おそるおそる海に向かって足を踏み出す。

 驚いたことに、私の足は海面から沈み込むことなく、ちゃんと海の上に立っていられた。


「すごい……。海の上に立っていられるなんて」


「そうでしょ。あんたを殺そうとして、高波を起こしたことも、これで信じられる?」


「殺そうとしたことは信じたくはないけれど、まあ信じるしかないかしらね」


 真鈴ちゃんの話す内容のせいで、私はどう反応していいのか分からないわ。

 私の複雑な心境を思ってか、真鈴ちゃんの方もどうやら困っているらしい。

 そういう状況になったせいで、そこからの私たちは黙ったまま沖合の離れ小島に向けて歩き続ける。海の上を歩き続けるという感覚に慣れないので、なんとも不思議な感じだわ。

 真鈴ちゃんの方はとても堂々とした姿で歩いている。こういったことには慣れているということなのだろう。


「警戒しなくてもいいわよ。あんたを殺したいと思ったのは事実だけど、死にかけたあんたを見たら、すごく嫌になったからね。私は何もしないから、このまま一緒に小島までついてきて」


「……信じるわ」


 真鈴ちゃんが前を向いたまま声をかけてくる。その声は、どことなく優しさを感じるものだった。

 これなら信じてもいいかなと思い、それをわざわざ口に出す。真鈴ちゃんの体が、ちょっと震えたように感じたわ。


「真鈴ちゃん?」


「か、勘違いしないでよね。ちょっと寒くなっただけだから」


 私が声をかけると、真鈴ちゃんは前を向いたまま文句を言ってきた。ああ、これっていわゆるツンデレなのかな。

 私はつい微笑ましく感じてしまう。

 そんな感じで、なんとも和やかな雰囲気になりながらも、私たちは海を歩き切り、沖合の小島へと到着する。


「久しぶりだわね、ここも……」


 小島に到着するなり、真鈴ちゃんはなんだか懐かしそうにつぶやいていた。


『まったく、自分で来れるのなら、あたしに取りに越させようとしないで下さいよね……』


 そこへ、猫がひょっこりと顔を出してきた。


「あっ、よく見るトラ猫!」


『よく見るトラ猫で悪かったにゃ』


「喋ってる?」


 ぶすっとした表情を見せるトラ猫に対して、私は驚きを隠せなかった。

 いや、なんで真鈴ちゃんと一緒にいるのかしらね。


「驚かせて悪かったわね。こいつは私の下僕なのよ。中学生っていうのをしてて自由が利かないから、その代わりにこいつにあんたを監視させてたのよ」


『主、全部話してしまうんですかにゃ?!』


 真鈴ちゃんの話した内容に、私はもちろん驚いたけど、トラ猫も驚いてしまっている。

 一体、真鈴ちゃんは私たちをここまで連れてきて、どんなことをするつもりなのだろうか。

 私は改めて警戒を強めた。

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