第96話 読めない正体
真鈴ちゃんからお誘いを受けた私は、波均命に相談しに行っていた。受け入れたのはいいんだけど、なぜか妙に引っかかるからよ。
あれだけ私に対して敵意をむき出しにしていた子だからね。そんな子が用事があるなんて言ってきたら、警戒して当然というわけよ。
『ふむ。おぬしの想い人の妹と名乗る人物からのお誘いか。そりゃまあ、気になるよな』
神社へとやってきた私へのひと言目はそれだった。
どうやら、波均命も同じような意見みたいね。それが聞けて、私は自分が正常だったんだなと安心したわ。
「波均命は、どう思うの?」
『おぬしに執着しておるのだろう? ならば、最悪も考えられると思うぞ』
「やっぱり、そうかぁ……」
私が改めて感想を求めると、波均命はそのように答えていた。
最悪ということは、私を殺そうとしてくるということだ。
恋愛感情が存在しているのなら、ありえなくはない話だものね。私も納得はするわよ。
でも、あの時の真鈴ちゃんの様子は、ちょっと違っていたように思える。
なんというか、私のことをしっかり見ようとしていたような感じだった。
うーん。真鈴ちゃんの表情が気になって仕方ないわ。
『ふむむ……。どうやら、おぬしの中では気になることがあるようだな。まあ、どうせ俺には止められはせぬから、おぬしの好きなようにすればよいであろう』
私が悩んでいると、波均命は相談に乗ることをやめてしまったようだ。
まあ、そっか。私と真鈴ちゃんとの間のことだから、波均命は入り込めないもんね。
「うん、分かったわ。どのようなことになるかは分からないけど、私、できるだけやってみるわ」
『うむ。では、俺の方は引き続き海の中を調べさせてもらうからな』
「ええ、そっちはお願いしますね」
結局私がどうにかするしかないという結論になって、私は波均命の神社から去っていった。
それからというもの、朝と夕方の二回真鈴ちゃんと顔を合わせるわけなんだけど、特に変わった様子はなかった。
いや、真鈴ちゃんが以前よりよく話しかけてくれるようになったくらいかな。
とにかく、真鈴ちゃんとの関係はいい方向に進んでいるみたい。
でも、海斗とは相変わらずなんだけどね。なんというか、真鈴ちゃんと同じで妹みたいな感じにしか見られてないわ。あははは。
そんなこんなで時は過ぎていき、いよいよ春休みに入る。
卒業式とはいっても、ほとんどが中学校で顔を合わせるので、これといった悲しみのようなものはなかった。半年間だったせいか、先生にもあんまりなじめなかったしなぁ。
「おじいちゃん、今日はちょっと出かけてくるね」
「おお? どこに行くのかな?」
「真鈴ちゃんのところ。もしかしたら泊まってくるかもしれないから、その時は連絡するね」
「うむ、分かったぞ」
服を着替えた私は、おじいちゃん先生に伝えてから家を出ていく。
海斗の家に行くと、呼び鈴を鳴らして反応を待つ。
『どちら様で?』
反応したのは海斗だった。
「あっ、お兄ちゃん? 真鈴ちゃんはいるかな?」
『マイか。真鈴に用事か? ちょっと待って……おい、真鈴?!』
私が用件を伝えると、海斗が真鈴ちゃんを呼ぼうとしている。
けど、直後になんかおかしなことになってるわね。何があったのかしら。
どういうことなのだろうかと思っていると、玄関が勢いよく開く。
「待っていたわよ、マイ」
玄関から顔をのぞかせた真鈴ちゃんは、どういうわけか呼吸が荒くなっていた。まるで待ち構えていたかのような感じだわ。
「う、うん。真鈴ちゃん。それじゃ、約束通り、出かけようっか」
「ええ、それじゃ行きましょう」
玄関では、出てきた海斗が事情をのみ込めないで立ち尽くしていた。
その海斗に私たちは出かけてくることを伝えると、隣り合って歩き始める。
しばらくは黙ったまま歩いているんだけど、向かっている方向は海みたいね。
「真鈴ちゃん、海で合ってる?」
「ええ、合ってるわ。あんたにはいろいろと話さないといけないことがあるからね。人に見られるわけにはいかないわ」
私が確認すると、真鈴ちゃんはそんな怖いことを言ってくる。
表情を引きつらせた私を見て、真鈴ちゃんはイラッとした表情を見せる。
「勘違いしないでよね。あんたのことを殺してやりたいとは思ったことはあるけど、そういう状況じゃなくなったのよ」
「いや、今ものすごく怖いことをさらっと言ってのけてるじゃないのよ」
真鈴ちゃんが話した内容に、私は即ツッコミを入れてしまっていた。
そしたら、真鈴ちゃんってばおかしく笑い始めていた。
「やっぱり、あんたは気に食わないわ。でも、お兄ちゃんのことを思うと、正面切ってから戦った方がいいと思うのよ」
「ど、どういうことなの? ちゃんと説明してよ」
真鈴ちゃんの話がまったく理解できない。
私は混乱したまま、真鈴ちゃんの案内で浜辺へとやってきた。
「ここは……」
「あんたがマーメイドに戻る時に使っている、用水路でしょ。ここなら、周りからの目は気にならないわ」
「ど、どうしてそれを……」
真鈴ちゃんの言葉に、私は恐怖してしまう。
私の一つ上の女の子のはずなのに、なにかしら、この威圧感は……。
私は冷や汗を流しながら、真鈴ちゃんをじっと見つめている。
真鈴ちゃん……。あなた一体何者なの?




