第9話 お姫様だからかな
異世界転生をしてから十二年。
私はお城の近くを散策中に、突如として巨大な水流に襲われてしまった。
水流に巻き込まれて気を失った私は、再び意識を取り戻した時、転生する前の世界に戻ってきていた。
前世でよく知っているおじいちゃん先生の家に居候をすることになった私は、十二歳ということで小学校に通うことになる。
私のよく知っている世界なのに、戻った世界では、転生前の私の存在が物的証拠が残りながらも、記憶からすっぽりと抜け落ちてしまっていた。
……私は一体これからどうなってしまうというのだろうか。
そんなわけで、私の小学生生活二日目が始まる。
朝に目を覚ますと、顔を洗って服を着替える。先日おじいちゃん先生たちと買い物に行った時に買った服だ。
よくよくその服を見返してみるんだけど、私、マーメイド族のお姫様になったせいか、ちょっと服装の趣味が派手になったようなが気がする。
地味なポロシャツにミドル丈のスカートっていうのが、前世の私の趣味だったと思うんだけどな。よく思えば、フリルのついた服を思いの外買っていた。
でも、海斗の妹である真鈴ちゃんは喜んでいたし、まあ問題はなかったかなって思う。
おじいちゃん先生の作る朝食を食べた私は、学校に向かうために玄関を出る。
「行ってきます」
「おお、気を付けて行ってくるんだよ」
私が外に出ると、外には意外な人たちが待っていた。
「よう、おはよう」
「おはよう、マイちゃん」
「お兄ちゃん、真鈴ちゃん」
そう、海斗と真鈴ちゃんの二人が、家の前で待っていてくれた。
小学校は集団登校とはいえども、その集合場所までは自分の足で歩いていかないといけない。
おじいちゃん先生は小児科の先生なので、今日の診察の準備があるので私を送り迎えすることができないのだ。そこでやって来てくれたのが、海斗と真鈴ちゃんというわけらしい。
「うんうん、マイちゃん、似合ってるよ」
「あ、ありがとうございます」
真鈴ちゃんに褒められて、私は照れくさそうに笑ってしまう。
一方、海斗の方はむすっとした表情で私のことを見ていた。なんだろう。今日の海斗はやけに険しい表情だなって思うよ。
集合場所まで送り届けられた私は、海斗や真鈴ちゃんと別れる。真鈴ちゃんは笑顔で手を振ってくれたんだけど、海斗の表情は終始むすっとした顔だった。どうしてなんだろう。
前世では幼馴染みで、私が一方的にいい感情を向けていただけの関係だったけど、今日のような表情を向けられたことはなかった。私には海斗が何を考えているのかさっぱり分からないけど、なんともいい気分でないのは事実である。
さて、集合場所で私は、初めて同じ地区の児童たちと顔を合わせることになった。見た感じ、同じクラスの子はいない。同じ学年はいそうなんだけど。
それにしても、揃いも揃って私の顔をじっと見つめてくる。
私の髪の毛はきれいなコーラルピンクだから、そりゃ目立つかなって思うわ。
「初めまして、波白マイって言います。波白小児科医院で暮らしています。よろしくね?」
私は自己紹介をするんだけど、誰も反応してくれない。それどころが私の顔をじっと見つめたまま動かなかった。
「うわぁ……、すっごくきれいな子」
「どこの国の子なんだろう」
「お姉ちゃんの髪、キラキラ~」
ああ、やっぱりそうなるのよね。
どうやら、私の見た目が目立ち過ぎていたので声がかけづらかったみたい。
一度話し掛けると、やっと緊張が解けたのか、打ち解けることができたみたい。
……さすがにスカートめくった子は叱ったわよ。
どうにかこうにか、集団登校の初日は無事に学校に到着することができた。歩いているだけで周囲から視線が集まっちゃって、私はなんとも落ち着かなかったかな。
正直こんなことしていないで、マーメイド王国に変える手立てを探すべきなんだろうけどね。
とはいっても、私はまだ十二歳の少女だし、前世の世界を楽しみたいって気持ちもある。だから、しょうがなくこの生活を送ることにした。
平日は小学生として頑張りながら、週末には転生先の世界に戻るための方法を探さなくっちゃ。
はあ……。こんなラノベみたいな生活、自分が体験することになるとは思ってもみなかったわよ。
「またね、新しいお姉ちゃん」
「うん、またね」
小学校に到着すると、下足場で私たちはそれぞれの教室へと別れていく。
6年2組の下駄箱に移動して、私は靴を履き替えようとする。
はらり……。
私の下駄箱から、何かが舞い落ちてきた。
(なんだろう、これ)
閉じる部分だけが青っぽい感じになったシンプルな封筒が落ちてきた。
……これって、漫画でたまに見るラブレターかしらね。
だけど、朝のホームルームまで時間がない。なので、私は封筒をポケットに入れて、読むのは後回しにした。
いやいや、さすがに昨日転校してきたばかりで、これはないでしょう。
これが本当にラブレターだとしたら、相手は一目惚れってことになる。
今の私は確かに美少女ではあるけれど、そこまでうぬぼれるつもりはないわよ。
教室まで移動した私は、そこでようやく落ち着いて手紙を開けることにしたのだった。




