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出戻りマーメイド  作者: 未羊


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第82話 誘いこまなくちゃ

 波均命に頼まれたこともあって、私はその日のジョギングで早速海斗を神社まで連れて来ることにしたわ。

 何のことかよく分からないけれど、神様が何かを感じたのなら、何かあるってことなんだと思うからね。

 ただでさえ信仰を失いつつある神様だから、私が信じてあげなくちゃダメだわよね?

 家へと戻った私は、夕方のジョギングに備えてしっかりと体をほぐしていく。

 多分、今日も海斗にガンガン置いていかれるだろうから、そのためには少し体を温めておかないとね。

 そんなわけで、海斗とジョギングをする約束にしている夕方の五時まで、とにかく私はしっかりと準備をしておいた。


「おじいちゃん、今日も走ってくるわね」


「うむ。気を付けて行ってくるのじゃぞ」


「うん!」


 おじいちゃん先生に挨拶をして、私は軽く走りながらいつもの待ち合わせの場所へと向かっていく。

 その最中、以前からよく見る猫を見かける。


「にゃーん」


 のんきに鳴いてはいるけど、私はちょっと思うところがあったので、猫に向けて魔法を放つことした。


「ちょっとお話いいかな~? アクアバインド」


「みゃっ!?」


 私がにっこりと微笑みかけながら魔法を放つと、猫はものすごく驚いていた。

 逃げようとするけれど、あれだけ反応が遅れて逃げられると思うのかしらね。


「みゃー……」


 ばしゃりと水の輪っかが猫の体を捉えている。

 水を嫌がったのか、猫はそのまま地面に転がってしまう。

 私は地面に転がった猫を抱え上げると、その顔をじっと見つめている。

 私がじっと見つめていると、猫はなぜか知らないけれど目を背けていく。しかもゆっくりとだ。これはまるで人間のような行動だわね。


「ちょっと、私を見なさいよ」


「みゃっ?!」


 私が顔を近付けて大声をかけると、驚いたようで体を伸ばして硬直させている。


「あなた、妖怪らしいわね。なんでこんなところにいるのか聞いてもいいかしら」


『し、知らないにゃあ……』


 改めて迫ると、やっぱりゆっくりと顔を背けていく。その時、ちょっと声が聞こえたような気がする。

 その声にちょっと力が緩んだ時だった。


「あっ!」


 魔法を解いてしまったこともあってか、私の手から猫が逃げ出してしまう。ぴょんぴょんとかなり距離を取られてしまった。


『あんたに捕まるわけにはいかないにゃ。さらばにゃ!』


 猫はがさがさとどこかへと姿を消してしまった。


「あっちゃあ……。逃げられちゃったわ」


 捨て台詞のようなものも耳に残っていたので、やっぱり、あの猫は人語を話せるっていうことなんでしょうね。妖怪ってことで確定だわ。

 でも、なんでここにいたのか気になるわ。絶対いつか捕まえてとっちめて話しを聞き出してやるんだからね。

 私は猫が逃げていった方向を眺めながら、強く思った。


 逃げられちゃったのはしょうがない。私は改めて海斗がやってくるまで、ストレッチをしながら待っていた。

 まだ二月の下旬に入ったばかりなので、寒いといえば寒いんだけどね。最近体を鍛え始めたおかげか、以前よりは寒くなくなったわ。

 体を動かして待っていると、目の前から海斗がやってくる姿が見えた。置いていくことは増えたけど、ちゃんと時間になったら来てくれるあたりまだ大丈夫っていう感じかな。


「今日もいるんだな」


「当たり前だよ、お兄ちゃん。約束したんだし、こないだみたいなことはないからね」


「まあ、好きにしろ。それじゃ、走りに行くぞ」


「あっ、お兄ちゃん待って」


「なんだよ」


 やって来た海斗と話をしていたら、さっさと走り出そうとするものだから、私は慌てて呼び止める。


「今日はちょっと寄りたいところがあるの。いいかな?」


「ああ、構わないよ。なら、今日はマイに合わせるか」


「うん、ありがとう、お兄ちゃん」


 私は両手をぴたりと合わせてお礼を言う。その姿を見た海斗は、やれやれという感じでため息をついていた。

 とりあえず、これで海斗を波均命の神社に連れていけそうだわ。

 でも、波均命って何が引っかかったんだろうなぁ。

 私の中では、ずっとあの時の態度が引っかかり続けているわ。


「おい、そろそろ走るぞ」


「あ、うん」


 海斗が耐えきれなくなったのか、走りたくてたまらないみたいだわ。私に急かすように話しかけてきたので、私はこくりと頷いて一緒に走り出す。

 今日の海斗は、さっきの宣言通り、自分だけですいすいと進んでいこうとしていなかった。こういう有言実行をしてくれるあたり、海斗に対する好感度っていうのはいいのよね。だから、海斗と一緒にいるのは心地よかったのかもしれない。

 はあ、転生してから気が付くなんて、本当に自分ってば愚かだなぁって思う。

 いろんなことを思いながら、私は海斗と一緒に夕方の街を走っていく。

 そして、海岸近くの道から私の家の方向へと向かう頃になると、私は海斗に声をかける。


「お兄ちゃん、ここからはこっちの方に進んで欲しいの」


「うん?」


 ちょうど信号待ちで引っかかったのを利用して、私は海斗に声をかける。

 私に合わせてくれるといいながらも、ここまで声をかけてこなかった。なので、本当に今しか声をかけるタイミングがなかった。


「こっちって確か……」


「うん、途中にある神社でちょっと休憩したいの、いいかな?」


 私がお願いするように声をかけると、海斗は渋い顔をしつつも了承してくれた。

 私は心の中で「よし」と思いつつ、波均命のいる神社へと向かって再び走り出した。

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