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出戻りマーメイド  作者: 未羊


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第70話 気になってしょうがない

「ただいま」


 私は学校から帰ってくると、靴を乱暴に脱ぎ捨てて部屋へと戻ってくる。


「うみゃっ!」


 どたどたといううるさい足音を立てたせいか、部屋で寝ていた猫はぴょんと飛び上がってびっくりしていた。


「はあ、よかった。家で待っててくれたのね」


 私は驚いてきょろきょろとしている猫に手を伸ばし、拾い上げてぎゅっと抱き締めている。

 驚いている猫だけど、思ったよりもおとなしく私に抱きかかえられていた。

 猫は驚いてはいたものの、私の腕の中で気持ちよさそうにごろごろとしている。まったく、初めて会った時にかまれた時はどうしたものかと思ったけど、やっぱり猫は可愛いなと思っちゃうわね。


「だいぶ体は回復しているみたいだけど、もう一日くらいは様子を見た方がいいかしらね。波均命様に見せようかと思ったけど、病み上がりに無理をさせるのはよくないものね」


 私はそう思ったので、猫を再び床に寝かせて、寒くないように毛布でくるんでおいた。

 だけど、私はもはやランニングが日課になっているので、これをさぼるわけにはいかない。

 そんなわけで、あんまりうるさくしすぎないようにしながら、私は走り込み用に服を着替える。


「それじゃ、ちょっと出かけてくるから、もう少し一人で我慢してね」


「うみゃあぁ……」


 私が体を撫でてあげると、猫は気持ちよさそうに鳴きながら再び夢の中のようである。

 なんとも幸せそうな寝顔を見た私は、なんともいえない満足感でもって、再び玄関へと向かっていった。


 まだ海斗との約束の時間まであったので、私は昨日の今日で波均命の神社へとやって来ていた。きっと波均命も、昨日の猫について心配しているだろうという考えからだ。

 そうやって波均命の神社へとやって来た私だったけど、やはり第一声は予想通りのものだった。


『おう、来たか。どうだ、昨日の猫の様子は』


 波均命は、ストレートに私に猫の様子を聞いてきた。


「ええ、昨日の夜にはすっかり回復していて、もう大丈夫っぽい感じでした。ただ、様子を見てまだ家の中で休ませてますけど」


『ふむ、その方がいいであろう。それよりもだ。あの猫がなぜ海岸に倒れていたのか、その状況が分かった』


「ええっ?!」


 波均命がとんでもないことをさらっと言ってくるものだから、私はものすごく大きな声で叫んでいた。


『ええい、大きな声を出すな。ここは人の来ぬ神社とはいえ、近所には誰がおるか分かったものではないぞ』


「あ、ごめんなさい」


 波均命に注意されて、私は素直に頭を下げて謝っていた。


『とりあえず、調べて分かった状況を話そう。言うておくが、他言無用だぞ?』


「は、はい」


 私はしっかりと返事をすると、波均命はあの猫がどうして真冬の海岸に倒れていたのかということを説明し始めた。

 波均命が調べたところでは、どうやらあの猫は沖に浮かぶ小島へと向かっていたということだった。

 ところが、真冬の夜の寒さにやられ、体が動かなくなって海岸へと押し流されて倒れていたということらしい。普通なら死んでいるところだけど、猫又という妖怪であることが幸いして、生き残って発見されたというわけなのだという。


「そうだったんですね」


『うむ。ただ、なぜあの小島に向かっていたのかは分からぬ。あの小島は俺の結界とは反発し合う力が宿っているのは間違いなのだが……。もしや、去年何かが入り込んだことと関係しているのかもしれぬな』


「えっと、私が波にさらわれる前くらいのことですかね」


『時期的にはそうだな。ただ、それがどういったもので、どういう影響があるかというのは分かっておらぬ。これからも調査を続けるから、小娘は普通に生活しておれ』


「分かりました」


 冬の海では、私もほとんど無力に近い。冷たさは軽減できても、限度っていうものがあるからね。

 でも、あの猫があの島に向かっていたということが、どうしても心に引っかかってしまう。

 波均命の神社を去って、海斗とランニングをしている間も、どうしても気がかりになってしょうがない。


「どうしたんだよ、マイ」


「えっ?」


 ランニング中に海斗に声をかけられて、私はびっくりして顔を向ける。


「考えごとをしながら走るのは危険だぞ。今は走ることに集中するんだ」


「あ、うん……」


 私は海斗から思いっきり注意されてしまう。どうやら考え込んでいたことを見抜かれてしまっていたみたい。


「ふう……」


 私は大きくため息をつくと、両頬をパンと打つ。


「おい、どうしたんだよ、突然」


「えへへ、気合いを入れ直しただけだよ、お兄ちゃん」


 びっくりしている海斗に、私は頬をひりひりとさせながら笑って答えていた。

 だけど、海斗は怪訝そうな表情をずっと私に向けていた。


「なんでもないんだよ、お兄ちゃん。さっ、さっさと走り終えなくちゃね」


「お、おう」


 私は明るく振る舞って、海斗の言う通り考えることを一度やめることにした。

 何かあったらそれの方が問題だものね。


(うん、家に帰ってから考えればいいし、何なら自分で調べてみるのもいいわね)


 反省したかといえばそういうこともなく、そんなことを思いながら私は気持ちを切り替えてランニングを続けたのだった。

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