表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
出戻りマーメイド  作者: 未羊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/45

第6話 懐かしの町を行く

 翌日、買ってきた服を早速着て、おじいちゃん先生と町の散策を行うことになった。

 知らない町じゃないんだけど、おじいちゃん先生からしたら、私はどこから来たのか分からない子どもだからね。案内しないと気が済まないみたい。

 私は孫娘のふりをするということで了承をしていたので、おとなしくおじいちゃん先生のお散歩に付き合うことにした。


「おじいちゃん、どこから見て回るの?」


「そうじゃなぁ。まずは海岸から歩いてみるか」


 私が尋ねると、おじいちゃん先生はそう答えていた。

 なんとなく理由は分かった。私が倒れていた場所を見せようということだと思う。

 そうやってやって来たのは、昨日も車で走り抜けた道。私の高校時代の通学路だった。

 昔は国道だったっていう大きな道路だけど、今はバイパスができた関係で市道にまで格下げになっている。

 その道路の歩道まで、私たちはやって来ていた。


「おじいちゃん、ここは?」


「ああ、ここが君の倒れていた場所だよ。海斗のやつは早朝、ここを散歩するのが日課になっていてな、その時に君を見つけたそうだ。わしのところまで抱えてきた時は驚いたぞ」


「そうだったんですか」


 早朝だったとしても、こんな大通りで連れて歩いてたら結構目立ったんじゃないかな。

 というか、ここって私が高波にさらわれ場所なんだけど。私が消えた場所から、私は戻ってきたっていうことなのね。不思議だわ。


「おじいちゃん、もっと近くに行ってもいい?」


 私がお願いすると、おじいちゃん先生は困った顔をしている。

 多分、目の前がすぐ海だからだろう。足場も不安定なので、私が海に落ちないか心配しているんだと思う。

 でも、そんな心配要らないんだけどね。今の私はマーメイドのお姫様なんだから。

 それだけ私のことを家族だと思ってくれてるってことかな。

 だけど、私が目をうるうるとさせると、おじいちゃん先生はいよいよ折れてしまった。

 ちょっとだけという条件で、私は私が発見されたという場所まで向かうことになった。

 私が発見されたという場所からちょっと離れたところに、海岸に降りる階段がある。そこから海岸に降りて、再び戻ってきた。


「……だめ、魔力が感じられない。私は魔法の力でこっちの世界に飛ばされたんじゃないの……?」


 まったく海岸や海からは魔力らしいものを感じ取れなかった。

 こっちの世界に魔法がないのは分かってる。でも、私は自分の尾びれを脚に変えることができた。だから、魔法は使える。

 だけど、魔法の痕跡がない。私は、どうやってこっちの世界に戻ってきたっていうのかしら……。


「事情はよくは分からんが、この目の前の海に、君に関係した何かがあるということでいいのかな?」


 しゃがみ込んで落ち込む私に、おじいちゃん先生が語りかけてくる。


「分からない……。でも、私がここで発見されたというのなら、この海の中に何かあるかもしれないって思うの」


「ふーむ……」


 私が落ち込みながらいうと、おじいちゃん先生が真剣に悩み始める。


「いや、おじいちゃん。無理しなくてもいいからね! 私の推測だから、おじいちゃんが気を揉む必要ないからね?」


「むぅ、そうか……。残念じゃのう」


 私が必死に止めると、おじいちゃん先生はやっと止まってくれた。

 孫のふりとはいっても、おとといに会ったばかりの私のためにあれこれやろうっていうのは、さすがにおかしいと思うわ。おじいちゃん先生は小児科の先生なんだから、医者をしてくれてればいいのよ。


「お、おじいちゃん!」


 私は気を逸らそうと、おじいちゃん先生の腕をつかんで大きな声で話し掛ける。


「むっ、なんじゃ?」


「他の場所……、他の場所も案内してほしいな。私、この町は初めてで分からないことが多いから、お願い」


 案内の続きをしてもらおうと、私は元女子高生のプライドを捨てて、全力で十二歳の少女を演じる。

 私は知ってるんだから。お年寄りは孫に甘いっていうことを。


「そうじゃのう。元の場所に戻る方法が分かるまでは、ここで暮らすんじゃもんな。さて、次はどこがいいかの?」


「ど、どこでもいいよ。私、何も分からないんだから」


「そうかそうか。それでは、適当に散歩するとしようかの」


 おじいちゃん先生は笑いながらそう言うと、私の手を引いて次の場所へと移動していく。

 道路渡ってしばらく歩くと、ちょっと高くなっているところに神社があった。


「ここは?」


 知っているけれど知らないふりをして尋ねる。


「ここは海の神様を祀っている神社じゃの。漁の解禁日の前には、漁師たちがこぞってお参りにくるような場所じゃよ」


「へえ、そうなんだ」


 おじいちゃん先生と話をしている最中だけど、私はこの神社からひしひしと変わった魔力を感じていた。

 人間だった時にも何度か訪れてはいたけれど、こんな感覚を覚えたのは初めてだわ。やっぱり、私が海に関係した種族になったからかな。なんとも不思議な感じがする。

 せっかくなのでお参りしていくことにする。

 おじいちゃん先生とお賽銭を入れてお祈りをする。一応やり方は知っているけど、おじいちゃん先生の方をちらちら見ながらやり方を真似る。

 う~ん。何も起きなかったわね。

 真剣に元の世界に戻れるように祈ってみたんだけどな……。こっちの世界の神様じゃ、私の願いは叶えられないのかな。

 私はちらりと目をやって、神社を後にしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ