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出戻りマーメイド  作者: 未羊


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第54話 気になる猫

「えっと、波均命様。一体どうなされたんですか?」


 神社にやって来た私は、さっきから様子のおかしな波均命につい声をかけてしまう。だって、ものすごく気になるんだもの。


『あ、ああ、悪い。今の猫が気になってな……』


「あの猫がどうかしたんですか?」


『うむ。普通の猫ではないようでな。かなり薄いようだったが、何かこうもやもやとしたものを感じた。うーむ、もっとよく見ようとした矢先に逃げられてしまったゆえ、はっきりとは分からんかったな』


「そうなんですね。よく見る虎柄の子だと思うんですけど」


『前に見た時には普通の猫のように思えたんだが、うーむ……』


 波均命は、さっきの猫のことがかなり気になっているみたいだった。

 まあねえ、私も気になるといえば気になるもの。初めて会った時にはいきなり私にかみついていたしね。


『まあ、なんにせよ、先程の猫には気を付けた方がよいだろう。俺とて一応神の座に名を連ねるものだからな。忠告は聞いておいて損はないぞ?』


「はい、一応気をつけますね」


 波均命が強く言うので、私はその忠告を受け止めることにした。


「では、私は家に戻りますね。お昼も近いですから、おじいちゃんのためにお昼を作らないといけませんからね」


『うむ、そうするとよい。俺は引き続き海の中を調べさせてもらう。何か見落としがないか、念入りにな』


「お願いしますね。今の私は外を出歩くのも厳しいですからね」


『養生せいよ』


「ありがとうございます」


 私は波均命に頭を下げてお礼を言うと、ちょっと買い物してから戻ることにした。

 今日はまだ一月二日でほとんどのお店が閉まっている。なので、年中無休の全国チェーンのコンビニに寄るしかないんだけど。

 そう思って私が神社から足を踏み出すと、どこからともなく猫の鳴き声が聞こえてきた。

 ちらりと声がしたと思った方を見ると、そこにはさっきの猫がいた。


「あれっ? もしかして戻ってきたの?」


「みゃーん」


 私が声をかけると、猫は鳴いていた。まるで返事をしているようなタイミングの良さで。


「おいでおいで。ちょっと一緒に歩きましょう」


「みゃおーん」


 私がしゃがんで迎え入れようとすると、猫は逃げて行ってしまった。あら、嫌われてたかな?

 まぁ、嫌われたならそれでもいっか。波均命からは気を付けるように言われたし。

 逃げられちゃったのは仕方ないので、私は気持ちを切り替える。段々と寒さに体が悲鳴を上げ始めたので、私はさっさと用事を済ませて帰っていった。


 翌日の三日だった。


「マイや、駅伝も終わったことじゃし、買い物に行かんかの」


「うん、行く行く。よかった、冷蔵庫の中がなくなりそうだったから」


「ほっほっほっ。それでは、早速行くとしようかの」


 おじいちゃん先生が買い物に行こうというので、私はすごく喜んで、飛び跳ねながら返事をしていた。

 玄関を出て車のところにやってくると、そこには思わぬ来客があった。


「あっ、よく見るトラ猫!」


 私が声を出すと、猫は驚いたように跳びあがって去っていった。ありゃ、驚かせちゃったかな。


「なんだ、マイ。今の猫はよく知っている猫かの?」


「うん、私の周りに時々姿を見せるの」


「ふむ……。いや、あの猫、まさかのう……」


「おじいちゃん?」


 猫を見ていたおじいちゃん先生が不思議な反応をしている。その悩ましげな表情に、私はつい心配そうに声をかけてしまう。

 だけど、おじいちゃん先生はすぐに首を横に振って、運転席へと向かっていく。


「何でもない。似たような猫はいくらでもおるからの」


 なんだか気になることを言い始めていた。

 だけど、ここで話を聞いていいのか分からない。なにせ私は寒くて早く車の中に入りたい状況だしね。

 とりあえず車の中に入り、私たちはいつものショッピングモールへと向かうことにした。


「ねえ、おじいちゃん。今の猫って何に似ていたの?」


 車の中で私は思わず聞いてしまった。我慢できなかったわ、うん。


「ああ、わしがまだマイよりちょっと大きかった頃のことじゃ。その時に好きだった女性が飼っておった猫が、ちょうどあんな感じのトラ猫だったのじゃよ」


 おじいちゃん先生から飛び出したのは、予想もしない話だった。おじいちゃん先生の初恋の女性の飼い猫だったわけなのか、あの猫。

 でも、それって今から四~五十年も前の話じゃないの。猫がそんなに生きているわけないし……。

 もしかして、波均命が言っていたもやもやとした感じって、そういうことなのかしら。


「それだったら、その猫の子どもの子どもっていうこともあるのかしらね」


「考えられなくはないのう。最後は行方不明になって、捜しても見つからなかったそうじゃからな」


「そうなんだ」


 なんとも気になる話だわね。

 神様だっているようだし、もしかしたらもしかするかもしれない。今度、あの猫に会ったらちょっと問い詰めてみようかな。私はそんなことを思ってしまった。


「さて、ショッピングモールに着いたぞ」


「うん、おじいちゃん」


 考えごとをしている間に、買い物をするショッピングモールに着いてしまった。

 今日は海斗たちと出会うことはなかったけれど、買うものだけ買い込んだ私たちは家へと戻っていく。

 そんな中、ちらりちらりと雪が舞い始めていた。


「これは積もりそうじゃのう。マイや、夜はいつもより温かくして寝るんじゃぞ」


「うん、おじいちゃん」


 おじいちゃんの気遣いに、私は笑顔で返事をしていた。


 こうして、私が転生してから最初のお正月の三が日は過ぎていった。

 いつになったら元の世界に戻れるのか見通せないまま、いよいよ小学生最後の三学期が始まろうとしていた。

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