第5話 お買い物
翌日のお昼、私はおじいちゃん先生の運転する車で出かけることになった。海斗も一緒にやって来たんだけど、うん、女の子が一緒についてきてる。
「こんにちは」
「あ、こんにちは」
女の子が挨拶をしてきたので、私は挨拶をし返す。
あれっ、海斗に彼女か妹かいたかな?
私は記憶を必死に引っ張り出そうとしている。
「あっ!」
私はポンと手を叩く。
思い出した、妹の真鈴ちゃんだ。
いけないいけない。異世界転生している間に、一部の記憶がすっぽり抜け落ちちゃってるみたいだわ。確か、今年中学一年生だっけかな。
「どうしたんだ。いきなり手なんて叩いて」
「あ、なんで女の子がいるのかなと思ったんです。私のためなんですね」
私の見た目は小学生くらいの女の子だもの。男二人で連れ回すには絵面が犯罪的になりかねない。そこで、中和剤として妹を連れてきたってわけだわ。
あと、私の買い物につき合わせるのなら、女の子がいた方が都合がいいものね。
「まぁそうじゃな。女性ものの服も買わねばならんじゃろうから、わしらが一緒ではきつかろう?」
「そうですね」
私は即答してしまう。ずっとそれを考えていたせいで、何も考えずに口を突いて出てしまっていた。
私は気が付いてしまったと口をふさぐものの、おじいちゃん先生は笑っているだけだし、海斗も反応が薄い。笑っているのは真鈴ちゃんだけ。どうやらあまり気にしていない感じかな?
「ほっほっほっ、正直でよろしい。では、出かけるから車に乗るといい」
「はい」
その後、私と真鈴ちゃんは互いに自己紹介をしておく。やっぱり中学一年生だったみたい。うん、意外と記憶はしっかりしている。
少しばかりの話を終えた私たちは、おじいちゃん先生の運転する車で街へと繰り出した。
転生してから十二年。
意外な形で帰ってきた町は、私が前世で最後に見たままの光景だった。
海辺に近い道路を走り抜け、やって来たのは大きなショッピングモールだった。ここなら服から食料品まで何でもそろうからね。
車で移動中、私は後部座席に座らされていたけど、これといって話しかけられることはなかった。ただ、真鈴ちゃんがじっと私を見つめてくるくらいだった。何か顔についてるのかな?
一言も話さなかったから、どうして私を見ていたのかまったく分からない。
なんともくすぐったく思いながらも、私はよそから来た人間らしく振舞っていた。
ショッピングモールに来たら、おじいちゃん先生ってばいきなりスマホを持たせてくれたんだけど。もちろん、おじいちゃん名義で。
私がいつまでいるか分からないのに、こんなのをポンと持たせてくれるなんて、おじいちゃん先生は気前良すぎないかしら。
私がびっくりしている間に、購入手続きが終わってしまう。
「さあ、次は服じゃな」
無事に購入すると、今度は子ども服売り場へと移動していく。
さすがに女性の服となると、おじいちゃん先生は平気かもしれないけれど、海斗はかなり気にしている様子だった。
そのため、エスカレーターを降りたところで、私たちは別行動を取ることになった。
「お兄ちゃん、私に任せておけば大丈夫だよ。三十分で買うもの決めるから、先生はその時にお支払いをお願いしますね」
「うむ、分かった。真鈴や、あまり自分の趣味は押し付けるでないぞ」
「分かってますよ~だ」
子ども服売り場で、私と真鈴ちゃんは、海斗とおじいちゃん先生と別れる。
私は真鈴ちゃんに手を引かれて、服を見て回ることになった。
まだまだ暑い日が続くので、夏服をメインに見ていくことになる。
「あっ、すみませ~ん!」
真鈴ちゃんはいきなり誰かに声をかけている。
「はい、何でしょうか」
「この子のサイズを測ってもらえませんか? 服を買おうと思うんですけど、分からないので困っているんです」
「かしこまりました」
対応してくれた店員に、真鈴ちゃんはそのように伝えていた。
そういえばそうだ。今の私はマーメイドのお姫様なので、特に下半身のサイズがさっぱり分からない。靴とか買おうとしたら、分からないと話にならないものね。
むむむ、結構しっかりしているわね、真鈴ちゃん。
私は店員さんに連れていかれ、試着室の中で次々とサイズを測られていく。メジャーがくすぐったい。
「どうなさいますか? サイズが分かりましたので、私の方でお選びすることができますけれど」
「あっ、友だちと来ているので、彼女と一緒に選ばさせてもらいます」
私がそう答えると、店員さんはちょっと残念そうな顔をしていた。
私が試着室から戻ってくると、真鈴ちゃんと合流して服を見ていくことになる。
肌着から服、靴やアクセサリーなど、様々なものを一緒に選んでいく。
その間も、真鈴ちゃんはずっと私の顔をじろじろと見ていた。一体どういうことなんだろうか。
気にはなるけれども、先に買う服を決めておきたい。おじいちゃん先生との約束もあるからね。
そうして、約束の時間まであと五分くらいになった時、ひとまず買う服は決まったのだった。
「あとはおじいちゃんたちを待つだけだね」
「うん、そうだね」
私が話し掛けると、あごに手を当てて考え込むような仕草のまま、真鈴ちゃんは返事をしていた。
「う~ん、あなたの顔、どこかで見たことがあるような気がするのよね」
顔を向けてきたかと思うと、真鈴ちゃんはそんなことを言い始めた。思わずドキッとしちゃったわよ。
「でも、そんなきれいなピンク髪の子なんて、知り合いにいたら絶対忘れないだろうし……。なんなのかなぁ、この感じ……」
「誰か知り合いに似ているってこと?」
私が尋ねると、真鈴ちゃんはこくりと頷いていた。
気になったので続きを聞こうとしたけど、タイミングよくおじいちゃん先生たちがやって来てしまって、話はそこで打ち切りになってしまった。残念。
無事に買い物が終わったものの、気になることができちゃったわ。
また会うことがあれば、その時にでも聞くことにしましょう。




