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出戻りマーメイド  作者: 未羊


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第49話 除夜の鐘の響く中

 マーメイドプリンセスに転生してから、元の世界での初めての大みそか。

 年越しそばを食べて、買い物を済ませた私は、今はおじいちゃん先生と一緒にこたつに入りながら年末のテレビ番組を見ている。

 種族が変わったせいか、あんまりテレビを見ていても面白くないかな。うん、人間とやっぱり感覚が変わっちゃってるわね。

 その最中、おじいちゃん先生が私に声をかけてきた。


「マイや、初詣はどうするかの」


「あっ、そうだね。う~ん、どうしよう」


 おじいちゃん先生の質問に、私はものすごく悩んだ。

 いや、行くのは当然なんだけど、問題は時間帯。

 マーメイドプリンセスとなった私は、とにかく寒さに弱い。真冬の夜中に出かけるなんていったら、それこそ歯がガチガチ音を立てそうなのよね。

 魔法を使えばそこそこ軽減はできるんだろうけど、問題として青白くうっすらと光るところかしらね。夜中だとさらに目立ちかねないわ。私はまだ未熟だからなぁ……。


「まぁ無理にとは言わん。明るくなってからの方がいいかの」


「うん、私はその方がいい。寒いのは……苦手だから」


「分かった、そうしよう」


 私が寒いのはダメだとはっきり答えると、おじいちゃん先生は受け入れてくれていた。

 その後は、とにかく静かに一緒にテレビを見て過ごしていた。


 日付が変わる頃が近付いてくると、どこからともなく除夜の鐘が聞こえ始めてくる。

 そういえば、町にはお寺さんがあったっけか。確か山の方にあったと思うけど、夜中だとこんなに響くのね。


「おお、もうそんな時間か。ううっ、ちょっと冷えてきたかもしれん。ちょっとわしは席を外すぞ」


「えっ? うん、分かったわ、おじいちゃん」


 急におじいちゃんが立ち上がって部屋を出ていった。冷えてきたと言っているから、多分お手洗いね。

 私はちょっとだけ気になりながらも、そのままこたつに入ってテレビを見続けている。

 まだ人間だった頃は、本当の家族と一緒にテレビを見ることなんて稀だったかな。自分の部屋でパソコンで適当な動画を見たり、好きな配信者の配信を見ながら過ごしていた記憶がある。


「はあ、お母さんたちってば、今頃どうしてるんだろうな……」


 あんまり未練がないように思っていたけれど、転生して長く離れていたせいか、自分の本当の家族のことが気になっちゃうものだわ。

 私の家は私以外に子どもがいなかったから、今年は寂しい年越しになってるんじゃないかって、不思議とそう思ってしまう。

 でも、お父さんとお母さんの記憶にもう私はいない。気にしてもしょうがないと思いつつも、やっぱり気になってしまう。


(はぁ……。気になっちゃうあたり、やっぱり親子の縁っていうのはどういう風になったところで簡単には消えないものなのね)


 テレビが面白くないこともあってか、私は大きなため息をついてこたつの上に突っ伏してしまう。

 このままだと眠ってしまいそうになってしまう。おじいちゃん先生が席を外したままなので、戻ってくるまではちゃんと起きてないとね。

 テーブルの上に出してあったみかんを手に取って、皮をむいてひょいっと口に放り込む。

 うん、意外と甘い。

 酸味があった方が目が覚めるかと思ったんだけど、これはおいしくて目が覚めるわね。


「マイや、今戻ったぞ」


「あっ、おじいちゃん」


 私がみかんを頬張っていると、やっとおじいちゃん先生が戻ってきた。

 さすがに暖房の効いていない場所に行っていたとあってか、ちょっと寒そうにしていた。


「今年の冬は結構冷えるのう」


「おじいちゃん、早くこたつに入った方がいいわよ」


「そうするかのう」


 私に言われて、おじいちゃん先生はこたつの中に入っていた。


「ふう、生き返るわい」


「もう、おじいちゃんってば」


 定番のセリフを聞かされて、私はつい笑ってしまう。


「それにしても、おじいちゃん。どこに行ってたの?」


「手洗いだけじゃぞ」


「そう? それにしては時間がかかっていた気がするんだけど」


 実はこの時、おじいちゃん先生がお手洗いに立ってから十分くらい経過していた。だから、私は気になってつい尋ねてしまうというわけよ。


「ほっほっほっ。どうでもいいではないか。マイや、何か持ってこようか?」


「お茶があればそれでいいわよ、おじいちゃん」


「そうか。では、このまま年明けを待つとしようかの」


 おじいちゃん先生が席を立とうとするので、私は立たせないように何も要求しなかった。おじいちゃん先生が長く席を外したのが気になったもそうだけど、一人で年越しを迎えるのが寂しかったのかもしれない。

 だから、私はわがままのつもりで、おじいちゃん先生にそう答えた。


 私たちはそのままぼーっとテレビを見続けている。

 年末の番組が終わり、年越しの様子を映し出す。有名どころのお寺の映像からも、除夜の鐘が響き渡っている。

 お茶を入れようとすると、ポットの中身が空になっていた。


「ウォーターボール」


 私が魔法で水を出してポットに給水すると、再び沸かし始める。


「便利じゃのう、魔法というのは」


「私も初めて使った時はそう思ったわ。まさか、こっちの世界でも使えるとは思ってなかったし」


「ふむ……」


 簡単に言葉を交わすと、再び静かになってしまう。

 そうしている間にも、年明けへのカウントダウンは進んでいる。

 来年こそは、現状をどうにか打破したいわね。

 でも、私はどうしたいんだろうな。年明けの瞬間を前にして悩みが再燃した私は、再びこたつの上に突っ伏してしまったのだった。

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