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出戻りマーメイド  作者: 未羊


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第44話 神様の忠告

 平川さんの家でクリスマスパーティーがあった後の私は、26日と27日の二日間は家でじっとしていた。

 いかんせん雪予報だったからだ。

 寒さに弱いマーメイド族では、どうなるか分かったものじゃない。とはいえ、さすがにおじいちゃん先生に買い物に行こうと誘されたら、一緒に行くしかなかったけどね。

 その買い物の際、寒そうにしている私のために、おじいちゃん先生はカイロを買い足してくれていた。五十個入りの大容量のやつを。

 私も悪いとは思ったわ。将来的にどうにかして恩を返してあげたいけれど、さすがにそんな年までこっちに滞在していたくはないな。う~ん、難しいところだわ。


 そうして迎えた28日。この日は年内最後の診察日ということで、おじいちゃん先生の医院は大混雑だ。これじゃ家にいても落ち着きそうにないので、私は防寒対策でガッチガチに固めて、波均命の神社へと出向くことにした。

 予定通りならあさってにお祭りで、その前日の29日に神社の掃除が行われるはず。ならば、もう今日くらいしか様子を見に行けないからね。

 神社までの道のりのあちこちには、昨日と一昨日に降った雪がまだ融けずに残っていた。

 その状態を見てしまうと、私の足取りはさらに慎重さを増してしまう。一応冬用のブーツとはいえ、凍った地面ならやっぱりわけが違うだろうからね。

 私は道行く人たちと挨拶をしながら、どうにかこうにか波均命の神社へと到達した。


「はあ、ようやく到着。うう、本当に寒いわね……」


 動いたから体は温まっているはずなんだけど、種族特性のせいかやっぱり寒くてたまらない。吐く息は白いし、呼吸のたびに心から冷え込むような錯覚に陥る。

 魔法で水の膜を作って防ぎたくなるけど、この寒さじゃ逆に凍り付きそうでかえって危険な気がしてきた。

 そんなわけで、私はとにかく寒さをどうにか我慢するしかなかった。


『まったく、何をそんなに震えておるのだ』


「あっ、波均命様、こんにちは」


 波均命が姿を見せたので、私は挨拶をしておく。


『うむ、よく来たな』


 私が挨拶をしたので、波均命も迎えの挨拶をしてくれた。


『まったく、寒さに弱いというのに、よくもまあ来たものよな』


「えへへへ。海の調査がどうなっているのか気になりますからね」


『まったく、そんなに元の世界に帰りたいのか?』


 私が照れたように笑いながら答えると、波均命はどことなく呆れたような声で返してきた。


「そりゃもちろん。ピクニックに出かけたところで謎の水流に襲われたんだもの。みんな絶対心配しているわよ」


『まあ、普通に考えればそうか。だが、こちらの時と同じように、向こうの記憶も消えておるとは考えられぬか?』


「可能性はあるかもしれないけれど、マーメイド族の王女は私だけだもの。戻らないわけにはいかないというものだわ」


『なるほどな。それは確かに戻らねばならぬだろうな』


 いろいろと意地悪なことを言ってくるけれど、私が必死に言い返せば最後は納得してくれた。物わかりのいい神様で助かるわ。

 だけど、話をしていて気になるのは、こっちの世界に飛ばされてきた理由と原因よ。調べてくれてるんなら、ちょっとくらい分かっていないかしら。


「ところで、波均命様」


『なんだ?』


「私がこっちに飛ばされてきた時の痕跡とかありましたかね」


『う、うむ……』


 私が追及すれば、すんごく歯切れの悪い態度になったわ。これは、まだ何も見つけられていないということで間違いないかしら。


『悪いな。この俺の管轄でありながら、なにもまだ見つかってはおらん。おぬしは確かにこの世界の者ではないのだから、何かしらの痕跡はありそうなのだがな。巧妙に隠されているのか、この俺の目に引っかからんのだよ』


「そっかぁ……。まあ、そもそも簡単に解決するとは思ってないから、別にいいんだけどね。ただ、早い方がいいのは事実だから、頑張ってもらいたいなぁ。春まで私は海に潜れなさそうだし」


『う、うむ。努力はさせてもらう』


 不満げに返してあげると、さすがに波均命は焦ったような反応を見せていた。


『ああ、そうだ』


「うん?」


 そんな中、波均命は何かを思い出したようで、私の方をじっと見てくる。


『おぬしと一緒になることのある男がいるな?』


「海斗のこと?」


 質問に私が確認するように返すと、こくりと頷いている。


『うむ。その男の気配が、おぬしが以前向かったという小島の辺りから感じられた。ただ、かなり薄まっているので、だいぶ昔のもののようだ』


「それがどうかしたの?」


『普通、気配というのはそんなに長く残るものではない。それがいまだに残っているということは、何者かがそれを触媒に使ったということだろう』


「触媒?」


 妙な単語が出てきたので、私はなにそれという顔で聞き返している。


『簡単に言えば、儀式などで使う道具だな。何かを結びつけるために使われる、仲介をするための道具が触媒というわけだ』


「なんでそんなものに?」


『それが分かれば苦労はせん。だが、よからぬ考えを持った者がおったということは間違いないだろう。重々に気をつけるといい』


「忠告、どうもありがとう。魔法が使える身ではあるけれど、私はそういうのは信じないから」


『気を付けるに越したことはない。あの男と会う時には、周りに気を付けるのだ』


「……分かったわよ」


 なんだかイライラして来ていたので、私はすっかり砕けた言葉遣いで波均命の対応をしてしまった。

 だけど、信じないとはいったものの、なんだか気になる話だわ。

 私は神社の掃除をしながら、ひとまず心の片隅に思いとどめておくことにしたのだった。

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