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出戻りマーメイド  作者: 未羊


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第41話 年末のお祭りを前に

 かえっておじちゃん先生と昼食を済ませる。食べ終わったおじいちゃん先生は、すぐに午後の診察の準備を始めていた。

 夜の診察が終わるまで、おじいちゃん先生にはケーキは出せないな。

 そんなわけで、私は家のことを済ませておくことにした。

 魔法もあるので、掃除はだいぶ楽。蛇口をひねって冷たい水にさらされることがないというのはいいわ。


「ふ~んふ~んふ~~ん」


 私は鼻歌を歌いながら、掃除を進めていく。だけど、外の掃除の時は気をつけないとね。人が見ていたら、大騒ぎは確定だからね。

 家の中の掃除をしていると、どこからともなく音楽が聞こえてくる。


「うん?」


 私は、何の音だったかなと、首を捻ってしまう。


「あっ、これ、着メロだわ」


 しばらくして思い出した私は、自分の部屋へと駆けていく。おじいちゃん先生に買ってもらったスマートフォンの着信メロディよ、これ。

 机の上に置きっぱなしにしてあるスマートフォンを手に取る。画面には平川さんの名前が出ていた。そういえば、連絡先を交換してたんだ。


「はい、もしもし?」


 通話を押して、私は電話に出る。


『波白さん、よかった。ちょっといいかな』


「なんなの、平川さん」


 あっ、ちょっと言い方が不機嫌になっちゃったかな。


『あっ、ごめんなさい。忙しかったかな』


 あああ、勘違いされたぁっ!


「ごめんごめん、ちょっと家の掃除をしてたから、少し不機嫌気味になっちゃったの。大丈夫だから」


『そっかぁー、安心したわ』


「それで、何の用事なの? 学校にいる間に話してくれてもよかったと思うんだけど」


『いや、それがね……』


 なんだろう。平川さんがちょっと言いづらそうにしている。


「大丈夫よ。私のことなら気にしなくてもいいわよ」


『そう……。いや、お父さんがね、お祭りの時に来てた子たちを誘ってパーティーをやろうなんていきなり言い出しちゃってね……』


「あ、ああ……。そうなのね」


 どうやら、家に帰ってから問題が起きたらしい。急な思いつきで父親がうるさく言い出したみたいだ。それで、ちょっと顔を見せた私も誘おうとしてるってわけか。なるほどね。


「私は大丈夫よ。おじいちゃんに言っておけば大丈夫だろうし。明日も一日診察があるからね」


『そっか……。それじゃ、私が迎えに行くね。波白さん、私の家の場所を知らないでしょ?』


「あっ……。そうだね、お願いするわね」


『うん、任せて。そうそう、何も持ってこなくていいからね。お父さんがごちそうしたいだけだから』


「分かったわ」


 私は平川さんとの通話を終える。なんにしても、明日の夜はパーティーにお呼ばれが確定したみたいだわ。あとでおじいちゃんに伝えておかなきゃ。

 そのタイミングで、私はふと何かを思い出す。


「あれ? 波均命の神社のお祭りっていつなんだろう……」


 そう、お祭りということばを聞いて、思い出してしまった。

 おじいちゃん先生の話だと、確か十二月だったと思うんだけど。もう一週間しかないよ?

 ……直接本人に聞く方がいいかな?


「おじいちゃん、ちょっと出かけてくるね」


「うむ、気を付けて行ってくるのだぞ」


「はーい」


 気になった私は、波均命に直接聞くことにした。


 がっちり服を着込んだ私は、波均命の祀られている神社にやってくる。

 やっぱり冬も本格的になってきているとあって、着込んでいても種族補正でさらに寒い。


「波均命様」


 私は呼び出すために、敬称をつけて呼び掛ける。


『なんだ、小娘』


 呼び掛けるとあっさりと出てきた。


「あのっ、この神社のお祭りっていつですか?」


『なんだ、そのことか。大みそかの前日だぞ、この俺を讃える祭りはな』


「あっ、そうなんだ。よかった、行われないのかと思ったわ……」


 私はものすごくホッとしていた。


『だが、見てみろ』


 波均命に言われて、私は辺りを見てみる。

 落ち葉が散らばっていて、とても一週間後にお祭りがあるとは思えない状態だった。


『毎年こうなのだ。前日にちょちょっと掃除をして、それでこの寒空の下で宴会をする。そういうお祭りになってしまっているのよな。兄者と違い、俺の方の扱いはこの程度だ。この地が今も安定しているのは、どちらかといえば俺の力あってだというのにな』


「それは……寂しすぎますね」


 海の方向を見てつぶやく波均命の言葉に、私はつい同情してしまう。


『数か月前には、その俺の力の弱まりでできた隙間を突いて、何者がかが侵入したような形跡もあるしな』


「え、ええっ?! それって一大事じゃないんですか?」


『まったくぞ。だが、予想に反して何も起きていない。なんとも不思議なものだ』


「ふむふむ……」


 どうやら、私が高波にさらわれた件も波均命の力の弱まりと関係がありそうだわね。でも、侵入した誰かって、一体何者なのかしらね。気になるわ。


『とりあえず、ずいぶんと震えておるようだから、今日のところはもう帰れ。時期に陽が沈む。そうなれば、かなり冷え込むことになるのだからな』


「分かりました。では、今日のところはこのくらいで失礼します」


『うむ、元気で過ごせ』


 波均命にとても心配されてしまったので、私は今日のところはおとなしく帰ることにした。

 でも、私が来ていない間の神社の散らかり具合は、ちょっと見過ごせないくらいだわ。

 今日はおじいちゃん先生と、明日は平川さんの家でパーティーをする予定だから、それが終わったら掃除をしましょうかね。

 年末の寒空の下、私は体を震わせながら家まで無事にたどり着いたのだった。

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