表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
出戻りマーメイド  作者: 未羊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/52

第37話 乙女心は複雑だ

「ただいまー、おじいちゃん」


 私は、無事に家まで戻ってきた。

 海斗は部員たちと一緒に戻ってきたので、私は海斗の家族と一緒に家まで送られてきた。

 行きと同様に、私は真鈴ちゃんから執拗に睨まれていたけれど、帰りは海斗の活躍という共通の話題があったので、まだ空気は穏やかだった。

 それでも、長く耐えられるかといったら、自信はなかったわ。


「おお、マイ。戻ってきたか。おかえり」


 おじいちゃんは何かをしていたみたいで、私が玄関に入ってきて、だいぶ経ってから顔を見せていた。


「あっ、おじいちゃん。忙しかったの?」


「うむ。個人医院とはいっても、いろいろあるからのう」


「そっか、お疲れ様だね、おじいちゃん」


「ありがとな」


 挨拶を終えると、私たちはそれぞれの部屋に戻っていく。

 部屋に戻った私は、クッションを抱えてそのまま床にごろりと転がってしまう。


「くぅ~、海斗ってばあんなにかっこよかったっけ?!」


 何かといったら、今日の試合中の海斗の姿を思い出していた。

 ほら、好きな人の姿っていったら、いつでも思い出しちゃうってあるでしょ。私はまさにその状態にあるのよ。

 ジャンプボール目がけて跳び上がる姿。ドリブルをしながらスリーポイントを狙う姿。その一つ一つの姿が、私の目にはしっかりと焼き付いていた。

 うん、やっぱり私ってば海斗のことがすごく好きなんだなって思う。


「そういえば、海斗ってキャプテンじゃなかったんだなぁ。転生前は、話はしてもあんまり部活の話はしてなかったものね。海斗って、なんでそんなに部活のことを黙ってたんだろう」


 クッションを手放して、私は大の字に転がったまま天井を見上げている。

 黙っているせいか、部屋にある壁掛け時計の秒針の音がよく聞こえてくる。

 カチッ、カチッ、カチッ……っとリズムよく刻まれる音に、床に転がった私はちょっと眠たくなってきたみたいだった。


「ふわぁ~……。興奮のし過ぎで眠くなっちゃったかな。しょうがない、このままお昼寝でもさせてもらおうっと」


 大きなあくびをした私は、眠気に耐えきれずにそのまますっと意識を失った。


 眠った私は、不思議な夢を見てしまう。

 その光景は、まだ私たちが小学生に上がる前、幼稚園の頃だと思われるものだった。

 場所は、他にも子どもたちの姿が見えるから……、うん、きっと幼稚園の砂場でしょうね。

 私は海斗と向かい合いながら、砂場でお山を作って遊んでいるみたいだった。

 でも、よく言葉が聞き取れない。表情を見ている限りは、私たちは楽しく遊んでいるみたいなんだけど。

 声は聞こえないけれど、様子を見続ける。小さな私たちは、砂の山を両側から掘り始めると、ちょうど真ん中で手がぶつかり合ったみたいだ。

 思いっきり笑顔を見せる海斗と、恥ずかしそうな顔をする私。この頃も相変わらずな反応なのね。

 あっ、何かを喋っている。すごく笑顔なことを考えると、いいことを話しているのだろう。穴の中では手がどうなっているのかが見えないし、なによりこの光景、私の記憶にないのよね。このとき何が起きていたのかはまったく覚えがなかった。

 もっとしっかりと確認したいんだけど、段々と夢の中の景色がぼやけ始めた。

 待って。お願いだから、この時の声を聞かせて。

 私の願いもむなしく、その光景はさあっと白い光にかき消されてしまった。



「はっ!」


 私は目を覚ます。


「おお、マイ。やっと起きたか」


「お、おじいちゃん……?」


 ぼやっとする意識の中で、私はおじいちゃん先生を確認する。

 部屋の電気がつけられているので、辺りはすっかり暗くなってしまっているということだろうか。


「夕食の支度ができたというのに、姿を見せんから様子を見に来たんじゃが……。よく眠っておったようじゃの」


「……そっか。私、帰ってきてからつい眠くて寝ちゃってたんだ……」


 おじいちゃん先生の言葉を聞いて、私はどうにか状況を理解する。

 試合で見た海斗の姿に興奮して、その疲れで眠ってしまったことを思い出したのだ。


「……何か夢を見た気がするけど、なんだったかな?」


「ふむ。どんな夢かは気になるところじゃが、先にお風呂に入っておいで。汗をかいているようだしの」


「うわっ! 本当にびっしょりしてる」


 なんかべたべたするなと思ったら、私の服が汗でぐっしょりとしていた。


「おじいちゃん、ごめんね。ご飯はもうちょっと遅くなりそう」


「構わんよ。とにかく、お風呂に入ってきなさい。ちゃんと沸かしてあるからな」


「ありがと、おじいちゃん!」


 私はすぐにお風呂へと向かっていく。

 こんなに汗をかいているなんて、私ってばどんな夢を見てたんだか……。


「はあ……。久しぶりに海斗の部活で頑張る姿を見ちゃったから、寝ながら興奮してたのかな。変なことを口走ってなければいいんだけど」


 お風呂に入りながらも、私はずっと悶々とし続けていた。


 夕食の間、私はおじいちゃん先生に確認しようと思ったけれど、恥ずかしくて確認できなかった。

 おじいちゃん先生の方も何も言ってこなかったので、私は変なことは口走っていないと、一人で納得することにした。

 はあ、明日からは調査を再開させて、気を紛らわせることにしようっと。

 今日のことはとにかくすべてを忘れようと、布団を頭からかぶって、その夜は無理やり眠りにつく私だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ