表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
出戻りマーメイド  作者: 未羊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/58

第28話 沖合の小島

 数日後、田均命と波均命は、兄弟そろって神社から去っていってしまった。神無月ということで、出雲の国に出向かなければいけないからだ。

 その間、私は海の中の調査を再開させる。

 学校が終わって家に戻ると、おじいちゃん先生ではなく、働く看護師さんに声をかけて出かけていく。

 海までやってくると、海斗に教えてもらった用水路の下までやってきて、私はマーメイドの姿に戻る。服はワンピースにしているから、服を脱いでも影響はない。我ながら考えたものね。


「用水路だとそこそこの深さがあるから、人目に触れず海に出ていけるのはいいわね。海斗に感謝しなきゃ」


 用水路の陰になっている部分から潜って、私は海へと出ていく。

 深さがあんまりないけれど、下半身を魚の状態にしてうろつくよりはマシ。民家が並んでいるから、目撃されにくいし、本当にいい場所だわ。


 今回は沖合にある小島の方まで足を運んでみることにする。

 噂では、小さな社があるとか聞いたことがある。でも、ボートでもないと近付くことができなかったので、私は見たことがない。

 マーメイドとなった今なら泳いで到達できるから、いよいよ真相に近付くことができるわね。

 なるべく人の目に触れないように、海底に近いところを泳いで、私は小島の方向へと泳いでいく。

 人間時代は目を開けられなかった水中も、マーメイドの今なら平気。魔法で目の前の水を避けられるからね。おかげで方向がよく分かる。

 まだ日の落ちるのが遅い時期だから、よく見えるわ。


(えっと、確かこっちの方だったわね)


 ただ、盲点がひとつ。

 海中だと方向がよく分からない。本当に正しい方向に進んでいるのかが分からないのよ。ああ、私ってばどこか抜けてるんだから。

 仕方がなく、一度海面に上昇することにする。


「ぷはっ!」


 海面に上がると、つい口をついてこの言葉が出てきてしまう。マーメイドなので海の中でも呼吸はできるんだけど、これって癖かしらね。

 私は顔だけを海から出した状態で、周りを見回してみる。町の方からはだいぶ離れてきているけれど、目的である小島にはだいぶ近づいてきていた。


「ここまで離れれば、顔を出した状態で泳いでも問題ないかな?」


 私はふとそう思って、海面から頭だけを出した状態で泳ぎ始める。

 周囲を見回しても漁船がいる様子はないし、問題はないと考えていた。


「ギャーッ、ギャーッ!」


「わわっ、カラス!」


 ところが、よりにもよってカラスが近寄ってきた。私の髪の毛はピンク色で、マーメイド族の特徴のせいでキラキラとしている。その輝きに魅せられて、カラスが反応してしまったみたい。

 私は慌てて海中に潜る。少々浅い場所なら襲われそうになるので、もちろん少し深めだ。

 深く潜ってどうにかやり過ごし、私は目的地である離れ小島にやって来た。


「うわぁ……、薄気味悪いわね……」


 海岸から陸地に上がり、足を人間の状態にして陸地に上がっていく。

 ほとんど人が来ないとあってか、波均命の神社よりも荒れている感じだ。

 よく見てみると、道のようなものがある。私はそこを歩いて、小島の奥へと向かっていく。

 しばらく歩くと、小さな祠のようなものがあった。長年人が来ていないことを示すかのように、かなり朽ちてきているようだ。


「可哀想ね。周りが深い海の中になるから、誰も来なくてこうなっちゃったのね」


 私はひとまず、祠にかぶっている葉っぱなどだけでもどうにかしようと考えた。

 ところが、ちょっと手が触れただけで、祠が崩れ落ちそうになっている。


「ダメだわ。朽ちてきているから触るだけでも壊れちゃう」


 知ってしまったからには、ちょっとどうにかしたくなってしまうのは人の性だろうか。


「アクアヒール」


 建物相手に効果があるか分からないけれど、私はマーメイド族のプリンセスとして持っている魔法を使って、回復を試みる。

 だけど、やはり相手が生物ではないので、思った以上の効果は得られなかった。でも、少しマシになったような気がするわ。

 マシになったと思ったので、私は祠にあたらないように気をつけながら、水魔法を放って周囲のごみを吹き飛ばしていく。コントロールあまりよくないけれど、一応、祠に当たらないようにしてできたと思うわ。


「ふぅ、こんなものかしらね。それにしても、こんな祠があるなんて知らなかったわ。こういうのは、誰に聞けばいいのかしらね。おじいちゃんなら分かるかしら」


 少しきれいになった祠を見ながら、私はものすごく気になってしまっていた。なんだかこの祠の雰囲気、知っているような気がするんだもの。


「いっけない。もう時間がやばいわね。そろそろ帰らなくっちゃ」


 辺りが暗くなってきたことで、私はスマートフォンを取り出す。時間はもう六時前と、ずいぶんと遅くなってしまっていた。

 これ以上遅くなってしまっては、診察が続いているとはいえ、おじいちゃん先生を心配させかねない。私はすぐに家に帰ることにした。


「ごめんなさい。今日のところはこのくらいでね。また来るね」


 私は祠に声をかけると、来た道を戻っていく。

 マーメイドの状態に戻ると、何度か振り返りながら、私は陸地に向けて泳いでいったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ