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出戻りマーメイド  作者: 未羊


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24/58

第24話 買い物の土曜日

 迎えた土曜日。

 この日は午後が休診なので、夕方にはおじいちゃん先生といつものように買い物に行くことになる。

 家に戻ってきた私は、おじいちゃん先生の診察の様子を見ながら、お昼の準備をすることにする。


(えっと、今の冷蔵庫の残りはっと……)


 私は改めて冷蔵庫の中身を確認する。

 おじいちゃん先生は、私が料理をできる理由は聞いてこなかった。あまり踏み込むのはよくないって思ってるんだろうな、きっと。

 家族が近くに住んでいないっていうことを考えると、きっといろいろあったんだろうなって推測できる。

 気がかりにはなるけれど、深く追及してこないことは気が楽でいいわ。住まわせてもらっている以上、家のことも頑張らなきゃね。

 冷蔵庫の中身を確認した私は、作る料理を決める。まずは時間のかかるご飯から用意しないとね。


 そういえば、こっちに戻ってきて口にした食事は、ついボロボロに泣いちゃったなぁ。

 マーメイド族のお姫様になってからというもの、毎日毎日お魚と海藻ばかりで飽きてたものね。

 こっちの世界での食事でこんなに感動するなんて、やっぱり私は日本人だったんだなって思う。


 それにしても、料理をしていても子どもの声がよく聞こえてくる。

 小児科の医院だから当然といえば当然だけど、十三時にもなっているのにまだ声が聞こえるってことは、今日は相当に来院者が多かったみたいだわね。

 自分もあんな感じだったかなと、私はつい懐かしく思ってしまう。

 いつおじいちゃん先生が診察を終えてもいいようにしながら、私は昼食の支度を整えた。


 十四時前になって、ようやくおじいちゃん先生が私の前に姿を現した。その姿はなんともボロボロだった。


「おじいちゃん、どうしたの?」


「いやはや、今日の子どもたちは元気が良すぎたな」


 いつもはぴっしりとしている白衣がかなり乱れていた。

 そういえば、最後の方に泣きじゃくる声がしていたから、だいぶぐずられていたんでしょうね。


「子どもたちの相手、毎日ご苦労さまだよ、おじいちゃん」


「ほっほっほっ、子どもは好きじゃから、このくらいなんともないぞ。今はマイがおるから、なおさら頑張れるというもんじゃ」


「まったくもう、おじいちゃんってば」


 元気そうに笑っているおじいちゃん先生の姿に、私はちょっとばかり呆れてしまっていた。


 こうして遅くなった昼食を食べた私たち。おじいちゃん先生はカルテの整理があるので、もうしばらくは出かけられないみたい。私は待っている間、食事の片づけをして、宿題に手を付けて待つことにした。

 結局、おじいちゃん先生と買い物に出かけるのは、夕方の四時になってからだった。


「よし、マイ。買い物に行くぞ」


「はい、おじいちゃん」


 おじいちゃんに誘われて、私は一緒にいつものショッピングモールへと向かう。


「マイ、欲しいものはあるかの?」


「今は特にないかな。でも、そろそろ寒くなり始めるから、冬服の準備も始めた方がいいかな」


「ふむ、それもそうじゃな。こっちのことをよく知っておるような口ぶりじゃのう」


「だって、暇だもん。おじいちゃんに買ってもらったこのスマートフォンだっけか、それでいろいろ調べて勉強したんだよ」


「ふむ。勉強熱心なのはいいことじゃ」


 私があたふたと言い訳をすると、おじいちゃん先生は満足そうに笑っていた。

 なんかこうやっていると、本当に祖父と孫娘って感じだわね。


「そういえば、マイ」


「何、おじいちゃん」


「最近、いろいろと持って出かけておったが、何をしておったんじゃ?」


 おじいちゃん先生はふと思い出したかのように、私の最近の行動について尋ねてきた。

 私はどこまで話せばいいんだろうと、つい考え込んでしまう。


「おじいちゃん。今は運転中だから、その話は着いてからにしましょう」


「うむ、それもそうじゃな。安全運転が一番じゃ」


 私は時間を稼ぐために、運転中という状況を利用して逃げることにした。

 おじいちゃん先生も納得したらしくて、ここで話を打ち切りにしてくれた。おかげで私はほっと胸を撫で下ろしていた。

 しかし、そうしている間にも、私たちはショッピングモールの駐車場にたどり着いてしまう。こうなると、話をせざるを得なくなってくる。

 だけど、まだ話す内容が決まっていない。はてさて、どうやって話を回避しようかしら。私はつい唸り出してしまう。

 私が悩んでいると、駐車場に止まった車に近付いてくる人たちがいた。


「あれ、先生とマイじゃないか」


 聞いたことのある声が聞こえてくる。


「先生、こんなところでお会いするとは思ってもみませんでしたね」


「げっ、マイがいる」


 いろいろと聞こえてきた声。どうやら私たちは、海斗たちの家族と鉢合わせてしまったようだった。


「おお、渡家のみんなではないか、これは奇遇じゃのう」


 車を降りながら、私たちは海斗たちと挨拶をしている。


「ちょうどいい。せっかくじゃし、一緒に買い物をしていかんかの?」


「そうですね。うちの海斗がそちらの女の子を気にしているようですし、ご一緒しましょうか」


「ちょっと母さん!」


 はい? 今なんて仰りましたかね。

 どうやら、海斗が私のことを気にかけているらしい。

 思わぬ言葉を聞いた私は、つい顔を赤くしてしまう。

 たまたま一緒になってしまった海斗の家族だけど、こんな状況でどう接したらいいんだろうか。

 いろいろと悩んでいる間に、私たちは一緒に買い物をすることになったのだった。

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