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出戻りマーメイド  作者: 未羊


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第22話 まずはきれいに

 よくよく考えれば、この日は水曜日。

 学校から帰ってくると、おじいちゃん先生と一緒に買い物に出かけることになった。

 その帰り道、私はおじいちゃん先生に頼んで寄り道をしてもらった。


「マイ、ここは海の神様の神社じゃぞ?」


「分かってる……」


 おじいちゃん先生に言われて、私はじっと神社を見ている。

 だけど、やっぱり神様がいるような気配はしない。変わった魔力が漂っているだけだった。


「それにしても、相変わらずの寂びれ具合じゃのう。この状況でお祭りなど、よく行えているものじゃわい」


 おじいちゃん先生の言う通り、どう見ても手入れがされているようには思えない。前回にやって来てからそんなに日数が経っていないのに、まだ暑い時期だからか伸び放題になっていた。

 やっぱり、あっちの神社の神様の言う通り、定期的に手入れしてあげる必要があるみたいだわ。

 状態だけ確認すると、私はおじいちゃん先生に帰ろうと催促する。


「なんじゃ、お参りはせんのか」


「うん、今日は様子を見に来ただけだから」


「そうか。マイがそういうのなら、そうしておこうかの」


 この日の私たちは、神社の様子だけ見てすぐに帰ったのだった。


 改めて翌日、今日は木曜日でおじいちゃん先生は忙しい。なので、学校から帰るとゴミ袋と軍手を持って神社へと向かう。

 相変わらず不思議な感覚を覚えるものの、何かいるという感じではない。


(なんだろう、この奇妙な感じ……)


 私は首を傾げながらも、荒れた神社の境内を掃除し始める。

 こっそりと水魔法を使いながら、伸び放題になった草を引き抜いてはゴミ袋に放り込んでいく。このゴミ袋、おじいちゃん先生に頼んで昨日買ってもらった、自治体指定のゴミ袋なのよ。神社の掃除のために買ってもらったんだ。ちなみに軍手もね。

 正直な話、こんな面倒なことはしたくない。

 でも、向こうの神社の神様と約束しちゃったし、ここの神様ならきっと私が元の世界に帰るためのヒントをくれると思うから。

 そうよ、あくまでも自分のためよ。

 夕方のこんな時間に、一人で黙々と人の来ない神社で掃除をしているのは、さすがに危険かな。

 私は水魔法の膜を作ると、周りから見えないようにして草を引き抜き続けた。


 さすがに十月に入っているので、日の落ちてくるのが早くなっている。気が付いたらもうかなり暗くなってしまっていた。


「ああっ、これじゃ草の入ったゴミ袋を持って帰りづらいじゃないの。ううっ、どうしようかなぁ……」


 私が集中していただけかもしれないけれど、本当にこの神社、人がまったく来ない。

 だけど、街行く人たちが家路についている中で、ゴミ袋を持って歩いている姿は目立つだろう。私はどうしようかと悩んでしまう。


「なんだ、マイ。こんなところに来てたのか」


「えっ?」


 悩んでいたら、突然声をかけられてしまう。

 顔を上げてみると、そこにいたのはなんと海斗だった。


「えっ、海斗?! ……じゃなかった、お兄ちゃん?!」


 思わず名前を叫んでしまっていた。慌てて言い直したものの、海斗は思いっきり表情を歪ませている。


「というか、私のこと見えてるの?」


「いや、見えてないぞ。だけど、昨日、先生から電話があったんだ。もしかしたら、海の神様の神社にいるかも知れないから、トレーニングついでに見てきてくれって」


「おじいちゃんってば……」


 海斗の証言から、海斗が神社にやってきたのはおじいちゃん先生から頼まれたかららしい。


「それにしても、これだけ不可解なゴミ袋があれば、誰かいるって思うよな。だから、その先生の頼みごとと合わせて、マイじゃないかって思ったんだ」


「そうなのね。お兄ちゃんってばすごい」


 私は幻影魔法を解いて、姿を見せる。

 姿を見せた私を見て、海斗は口を押さえて必死に笑いをこらえているようだった。


「ちょっと、お兄ちゃん。なんで笑ってるのよ」


「悪い。思ったよりも泥だらけになってるものだからな」


「えっ、そんなに汚れてる?」


 私は自分の服をよく見てみる。確かに、ちょっと泥が跳ねたりして汚れているようだった。むぅ、引っこ抜く時に水魔法を使ったからかな。


「それにしても、よくこんなになるまで頑張ったな」


「うん、神社なのに荒れてるからね。再来月にはお祭りもあるんでしょ?」


「だな。海の無事に感謝する祭りがある」


 海斗は私の頑張りを褒めてくれる。

 嬉しいは嬉しいけれど、私はちょっと確認を入れておく。海斗はちょっとだけ反応が鈍かった。


「そうよね。だったら、こんな状態にしておくのは失礼だと思うのよ。だから、私は草を抜きに来たの」


「そっかそっか。そういえばマーメイドといってたもんな。同じ海の仲間として、放っておけなかったってところか?」


「……かも知れないわね」


 海斗が冗談交じりに言っていることだけど、私はちょっと迷って肯定しておいた。自分のためとはいえ、そうかも知れないと思ったからだ。

 なんにしても、今日の一、二時間頑張っただけでも、結構きれいになったと思う。これで、少しはお話する場が整ったかなと思う。


「さっ、もう遅くなってきたから、俺が家まで送っていってやるよ。ほら、手を出すんだ」


「う、うん」


 私は差し出された海斗の手をそっと握る。

 なんだか恥ずかしい気がしたけれど、今の私は小学生だ。なら、手を取っても問題はないよね。

 私たちは手をつなぎながら、ゴミ袋を持って家まで帰っていったのだった。


 ああ、ゴミ袋さえなければロマンチックだったのに……。

 ちょっとだけ悔しがる私なのだった。

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