第17話 目が追ってしまう
私がクラスメイトとお昼を食べていると、海斗と妹の真鈴ちゃんがちょうど屋台を訪れてしまった。
平川さんの反応と、私の目立つ髪色のせいであっさりと海斗に見つかってしまう。もう、どうしようかしら……。
私が反応に困っていると、海斗が改めて話し掛けてきた。
「やあ、マイ。君もお祭りに来てたんだな」
「あ、うん。おじいちゃんから勧められて、子ども用のお神輿を引いてきたの。終わったから今お昼を食べているところなの」
「ああ、あのロープで引っ張るキャスター付きの神輿か。それは残念、見てみたかったな」
私が目を逸らしながら話すと、海斗は本気で悔しそうな口ぶりで話している。そんなに私のお神輿を引く姿が見たかったのかしら。よく分からないわ。
海斗の言葉に、私はむすっとした顔で海斗に視線を向けてしまう。
私の顔を見た海斗は、どういうわけか笑っていた。
「で、どうすんだい、海斗」
おじさんが空気を読まないで海斗に話しかけている。ナイスよ、おじさん。
「どうするって、何をですか」
「真鈴ちゃんのことだよ。海斗が神輿を担いでいる間、一人になっちまうじゃねえか。お前さんところ、ご両親とも忙しいだろ? どうせ今日も来てないんだろうからさ」
「ああ、そうですね……」
海斗はそう言いながら、真鈴ちゃんの方を見ている。
いくら地元のお祭りとはいっても、確かに中学生の少女一人でうろつかせるには心配があるのだろう。
そこで私は、思いっきり手を挙げてみることにした。
「はい! 私が真鈴ちゃんと一緒にいます」
勢いよく立ち上がって返事をするものだから、その場にいた全員がびっくりしているようだった。
なによ。確かに今の私は十二歳の少女だよ。でも、中身は十七歳と十二年の大人なんだからね。一緒にいた方が心強いに決まっているわ。
それに、真鈴ちゃんのことがよく思い出せないから、一緒にいた方がいいと思うのよ。お互いをよく知るためにもね。
私はじっと海斗の方を見ている。
私の真剣な表情に押されたのか、海斗は前髪をたくし上げてため息をついていた。
「分かったよ。そこまで言うのなら、マイが真鈴と一緒にいてやってくれ」
「うん、一緒にいるわ」
私は笑って返事をしている。
「俺たちが神輿を担いでいるところを見るつもりらしいからな。はぐれないようにしていくれよ。あと……」
「あと、何?」
「何かあったらすぐに助けを呼ぶんだ。自分たちがまだ小さい子どもだってことを忘れるんじゃないぞ」
「オッケー」
海斗が私に対してねちねちと注意をしてくる。それをまとめて笑顔で了承しておいた。
そしたら、海斗ってばまたため息をついてくれたわ。いい加減にしてくれないかしらね。
でも、これで話がまとまったからいっか。
食事を終えた私は平川さんと別れて、海斗と真鈴ちゃんと一緒に、大人たちが担ぐお神輿が置いてある場所まで向かった。
到着したお神輿の置いてある現場は、なんとも物々しい雰囲気に包まれていた。
体格が様々な大人の男性たちが、眼光を鋭くして黙ったまま座っているので、ものすごく怖い。
「すみません、ちょっと遅れました」
海斗が謝罪をしている。食事のついでに私たちと話し込んでいたのだから、遅くなってしまったようなのだ。
「おう、そのくらい気にすんな。神輿が練り歩くまではまだ時間がある。さっさと着替えて支度をしな」
「はい!」
海斗は返事をすると奥の方へと向かっていってしまった。
ちょっと待って。この怖い雰囲気の中に、私たち二人で取り残されちゃったんだけど?!
どうしたらいいのか分からないでおどおどとしていると、海斗に声をかけていたおじさんが話し掛けてきた。
「おう、海斗んとこの妹と……、そっちは誰だ?」
おじさんが私を見て、首を傾げている。分からないからしょうがない。
「私は波白マイといいます。波白医院に住んでいます」
「ああ、あのじいちゃん先生のとこか。ってことは孫か?」
「はい、そうです」
「そっかそっか。なら今日はたっぷりと祭りを楽しんでいってくれ。海斗のやつも気合いが入ってるのは、こんな可愛い子を連れてきたからなのか!」
おじさんはそんな風に言いながら笑っている。
可愛いなんて言われたから、私はなんだか恥ずかしくなってきちゃうな。
でも、なんで真鈴ちゃんはそんなに不服そうに私を睨んでいるんだろう。よく分からないな。
そんな感じでいろいろと話をしている間に、大人たちによるお神輿担ぎが始まった。
大きなうちわも持って練り出していく男性たち。海斗もその中に混じって、とても真剣な表情をしていた。
私と真鈴ちゃんは、お神輿を追いかけて移動していく。さすがに秋祭りとあって、沿道には多くの人たちが出てきている。それだけ、このお祭りはこの町にとって重要なものだと分かる。
(私、あんまり参加しなかったから、ここまでとは思わなかったな……)
どれだけ地元に対して興味がなかったのか、私は思い知らされていた。
だけど、私の目はそれ以上に海斗に惹きつけられてしまう。
他の人たちと一緒になって、大きな声を出しながらお神輿を担いでいる姿が、とにかくまぶしく見えたのだ。
これが惚れているっていうことなのかな。
「マイ、ぼーっとしていると危ないわよ」
「あっ、ごめんなさい、真鈴ちゃん」
何か不服そうな表情をしている真鈴ちゃんと一緒に、私はずっと海斗の姿を追い続けたのだった。




