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出戻りマーメイド  作者: 未羊


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第11話 おじいちゃん先生とお話

 学校から帰ってきた私は、おじいちゃん先生と話をする。

 もちろん、おじいちゃん先生は診察が忙しいので、それが終わってからになるけれど。

 それにしても夜九時かぁ。小児科とはいっても、遅くまで診察してるのね。


「おじいちゃん、お疲れ様。料理を作ってみたよ」


「おお、すまんな、マイ」


 こっちの世界に戻ってきてからというもの、一応レシピを見て料理を覚えるふりをした。本当は前世の記憶のおかげで多少作れるんだけどね。お母さんのお手伝いをしててよかったわ。

 おじいちゃん先生は医院を経営しているから、買い物は休診の時間に済ませている。水曜日の午後と土曜の午後、それと日曜日だ。

 最初の頃は私のことを考えて魚を買わないようにしていたみたいだけど、マーメイドの主食って、意外と魚だったりするのよねぇ……。だから、そのことを話してからはお魚もちゃっかり購入してくれている。

 今日の食事は、魚の煮物と野菜の煮物。おじいちゃん先生はもう六十を超えていたはずだし、少し軟らかめに煮込んでおいた。


「マイ」


「なあに、おじいちゃん」


「もうちょっとかみ応えあってもいいからな?」


 軟らかくしすぎたことで、おじいちゃん先生から文句を言われちゃった。年寄り扱いは嫌いなんだなぁ、おじいちゃん先生。

 ちょっと反省しながらも、私たちは遅めの夕食を食べ続ける。夜の九時過ぎだと夜食だけどね。


「ねえ、おじいちゃん」


「なんだい、マイ」


「今日、学校で告白されちゃった」


「ぶほっ!」


 私が小学校であったことを話したら、おじいちゃんはものすごく吹き出してむせ始めちゃった。やっぱりびっくりするわよね。


「大丈夫、おじいちゃん」


「げほっごほっ、……大丈夫じゃよ。ちょっとびっくりしただけじゃわい」


 そうは言っているものの、まだむせている。

 お年寄りって子どもの前だと強がっちゃうものね。おじいちゃん先生の体が心配だわ。


「もちろんお断りしましたよ。出会ったばかりの人にそんなこと言われて、簡単になびくわけがないもの。とりあえずはお友だちからってね」


「そ、そうか。それはよかったわい」


 私が正直に話すとおじいちゃん先生は安心していたようだった。ただ、まだむせっかえりが落ち着かないので、お茶を飲んでどうにかしようとしていた。


「まったく、最近の子どもというのは、意外と積極的だのう」


「私も驚いちゃいましたよ」


 驚いたのは事実だから、そこは正直に話しておく。

 それにしても、前世の世界に戻ってきてからまだ十日ちょっとだっていうのに、こんなことが起きるなんて思ってもみなかった。

 まあ、あの海堂くんだっけか、彼に関しては適当にあしらっておくことにしましょう。私は海斗一筋だし、そもそも住む世界が違い過ぎるもの。


 食事も終わりにかかった頃、おじいちゃん先生に再び声をかける。


「ねえ、おじいちゃん」


「なんじゃな、マイ」


「私、海の中を調べてみたいの。いいかな?」


「海の中を? どうしてかの?」


 私の頼みを聞いて、おじいちゃん先生は理由を聞き返してきた。

 当然といえば当然かしらね。でも、私があちらの世界に転生したこととこちらの世界に転生後の状態で戻ってきたこと、その二つをどうにかして明らかにしなきゃいけないと思うのよ。


「だって、私はあの海の海岸線に打ち上げられていたんでしょ? だったら、海の中に私がこちらの世界に飛ばされてきた原因があると考えるのは普通じゃないかな」


「ふーむ……」


 おじいちゃん先生は悩み始めた。


「いやぁ、気持ちは分からんではないが、十二歳の少女を一人で出歩かせるのもなぁ……」


 あ、そっか。私って今は十二歳の美少女だったわ。いけないいけない、つい前世の最後だった高校二年生の自分のつもりになってしまう。


「だ、大丈夫だよ、おじいちゃん。私には魔法っていう不思議な力があるし、マーメイドだから海に潜っても平気だから」


「しかしのう……」


 私が必死に訴えても、おじいちゃん先生はものすごく渋っていた。

 私が十二歳なこともあるけれど、多分、孫くらいの子と出会ったのが初めてなんだと思う。


「まあ、止めたってしょうがないじゃろうな。マイが自分の世界に戻りたいって思うのは当然だろうしのう」


 おじいちゃん先生は納得してくれたようだった。

 こっちに戻ってきて初めて出会った時に、私の魚の下半身と魔法を目の前で見ているものね。だから、私の気持ちを理解してくれたんだと思う。


「海に潜る時は周りに気をつけるんじゃぞ。足を尾びれに変化させているところを見られたら、きっとテレビ局とか呼ばれて見世物になるだろうからの」


「うん、気をつけるよ、おじいちゃん」


 おじいちゃん先生は悩みながらも私の訴えを聞き入れてくれた。


「だが、そうすると服を気をつけなればならんな。潜りに行くのなら、水着を持っておいた方がよいのではないか?」


「あ、それは多分、私の魔法で大丈夫だと思うよ、おじいちゃん。マーメイドの魔法は水に特化しているからね」


「うん? そうか……。それもそうじゃな」


 私が答えると、おじいちゃん先生は頷きながらも混乱していた。


「ほらほらおじいちゃん、片付けは私がしておくから、もう明日の診察に備えててよ。ね?」


「分かったぞい。だが、無理はするんじゃないぞ」


「うん、分かってる」


 私はおじいちゃん先生を無理やり食堂から追い出すと、洗い物を始めることにした。

 明日はおじいちゃん先生は午後が休診だから、それに付き合うことになりそう。

 本格的に海中調査に入るのは、木曜日からかな。

 おじいちゃん先生を説得できた私は、元の世界に戻るための調査を始めるために気合いを入れたのだった。

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