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出戻りマーメイド  作者: 未羊


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第108話 高まる緊張

 県民体育館に移動しながら、私は大きなあくびをしてしまっている。やっぱり、移動中に寝てしまったのがかなり響いてしまっている。


「まったく、そんな状態で応援するつもりなの? 顔洗ってしゃきっとしなさいよ」


「ふふっ、真鈴ってばまるで保護者よ」


「お母さん?!」


 真鈴ちゃんってば母親にからかわれて慌てているわ。でも、私に対する言動は、本当に保護者そのものだからね。

 意外と真鈴ちゃんって世話焼きなのかもしれない。これなら、いいお母さんになれそうだわ。


「ちょっと、何を見てるのよ」


「うふふ、なんでもないわ」


 真鈴ちゃんからジト目を向けられると、私がにへらと笑ってごまかしている。まあ、それが真鈴ちゃんの神経を逆なでしたみたいだけど。

 正体を知ってみる目は変わったけれど、本当にいい方向にばかりに変わっている。いや、ここまでの性格だとは思わなかったわ。恋のライバルっていうことを抜きにすれば、きっと親友になれたんだろうなともう。


 さて、いよいよ県大会の応援のために、体育館へと入っていく。

 昨今、いろいろあるので、入口で受付を済ませてから入場ということになる。

 その際には荷物のチェックも簡易的ながらされてしまう。具体的には試合の邪魔をしてはならないということで、投げ込めそうなものはほとんどが持ち込み禁止になっている。体育館の中で履く上履きに履き替えたら、履いてきた靴は下駄箱に預けないとならない。徹底的よね。

 無事にチェックを通り過ぎると、見学用の観客席へと移動する。

 県民体育館は結構大きくて、バスケットボールもバレーボールも会場内に横に三面並んで設置されている。県内の高校のバスケットボール部がすべて集結しているので、試合時間は惜しいものね。

 ただ、三面あるとはいっても、実際に稼働しているのは両端の二面だけ。真ん中は緩衝地帯として、試合をする高校の控え席となっている。


 観客席へとやってきた私たちは、試合会場を見下ろしながら座っている。


「むむっ、お兄ちゃんの試合はまだかしら」


「パンフレットが一部だけもらえたから見てみるわね」


 真鈴ちゃんが会場内をきょろきょろと見回し始めたので、私はもらえたパンフレットを確認してみることにする。

 単純に大会名と開催地日時、それとトーナメント表だけが書かれたシンプルな紙切れだ。余計な情報が一切ないので、見やすいのがいいわよね。


「えっと、情報だと今日の十時半からだったわね。あ、あったあった」


 私は情報を見つけることができた。間違いなく私が以前通っていた高校の名前だわ。

 開始時間は朝の八時四十分、余裕をもって一試合五十五分として見られているので、海斗の試合は十時半開始予定で合っていた。


「えっと、コート2って書いてあるわね。こっちのコートって何番だっけ?」


 トーナメント表の線の間に丸数字の2が書かれていた。


「こっちはコート1ですよ。2はあっち側です」


「ああ、親切にありがとうございます」


 後ろで見ていた人がわざわざ教えてくれたので、海斗のお母さんがお礼を言っている。

 どうやら、私たちは間違った方のコートの前に来てしまったらしい。

 私たちも教えてくれた人にお礼を言いながら、観客席を移動していく。

 邪魔にならないようにしながら席を移動した私たちだけど、真鈴ちゃんが一番前で見ると言って聞かないので、やむなく私たちは一番前の席に陣取ることになる。もちろん、コート全体をよく見渡せる方向からよ。

 私も見たかったので、真鈴ちゃんのわがままがものすごく許せたわ。ありがとう、真鈴ちゃん。

 それにしても、バスケットボールの試合というのは、かなり迫力があるわね。

 五人対五人。

 全部で十人の選手が、ひとつのボールを巡って、コートの中を所狭しと走り回っている。

 去年の練習試合でも見たけれど、激しい動きについ息がつまりそうな感覚に陥ってしまう。それだけ、試合に引き込まれているということなのかしらね。

 まあ、真鈴ちゃんは海斗が出ていない試合には興味なさそうなんだけどね。

 そんな中で、目の前の試合で豪快にダンクシュートが決まる。なかなか放てるものじゃないから、会場から歓声が沸き上がっている。


「まあ、あれが……なんだっけ」


「ダンクシュートですよ、おばさん。ボールをリングの上から叩きつけるようにして入れるシュートです。あれをやろうと思えば、高身長と腕の長さ、それと相当のジャンプ力がないと決められないんですよね」


「そうよ、それ。マイちゃん、よく知っているわね」


「いろいろと勉強しましたからね」


 私は誇らないまでも、胸を張っていた。

 視線に気が付いて顔を向けると、そこには私を睨む真鈴ちゃんの姿があった。その瞬間、「あ」と思ったのはいうまでもない。

 とはいえ、この流れで謝るのもなんだし、私は眉をハの字にしながらニコッと笑うのが精一杯だった。


 ピピーッ!


 ホイッスルが鳴り、ついに直前の試合が終わる。

 さあ、次はいよいよ海斗たちの出番よ。


「真鈴ちゃん、いよいよよ」


「いよいよね、マイ」


 私と真鈴ちゃんは互いの顔を見ながら、試合に参加するわけでもないのにがっしりと気合いを入れるのだった。

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