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出戻りマーメイド  作者: 未羊


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106/108

第106話 今さらの自覚

「なんか考えごとか?」


「え?」


 ランニングをしていると、海斗にいきなりそんなことを聞かれた。

 なんかそんなに思い詰めているような顔をしていたかしら。私は目を何度もまばたきしてしまう。


「今走っているのに、考えごとする余裕なんてないわよ」


「そっか。気のせいなら悪かった」


 ぷいっと顔を背けると、海斗はなんだかなというような表情をしながらも納得してくれた。なんか、気付かれている気がするわ。

 私が転生したとはいっても、さすがは幼馴染み。いざという時の勘はバカにはできないわね。

 真鈴ちゃんからの視線は気になるものの、私は平常心を心がけて走り続けた。


 家に到着して、私は別れることになる。

 その際、私は海斗に質問をぶつける。


「今年のゴールデンウィーク、最後の県大会だよね」


「ああ、そうだな」


 聞いた内容は、高校最後の大会に向けた話だった。

 私の出門の瞬間、海斗の表情はかなり険しくなった。なんといっても、本当に高校最後の試合なのだから。

 去年の練習試合の時のことを思えば、海斗の思い入れは相当強いのは当然かしらね。


「あの、応援に行ってもいいかな」


 そこで、ダメ元でこんなことを言ってみる。

 やっぱり、幼馴染みだし、好きな人だし、頑張るそばで精一杯応援をしたいって思うの。

 私は、ぎゅっと拳を握りしめながら、真剣な表情で海斗を見つめ続ける。


「……好きにしろ。その時は、うちの母さんにでも頼んでくれ。どうせ、真鈴が同じようなことを言うだろうからな」


「分かってるじゃないの、お兄ちゃん」


 両手を腰に当てながら、真鈴ちゃんの方を見ながら海斗は話している。

 真鈴ちゃんも応援する気満々だったようで、どことなくにやけた顔をしながら反応している。ドヤ顔とまではいかなかったので、少しは自重している感じだわね。


「でも、私たちが応援する以上、初戦敗退なんて無様な真似は許さないんだからね」


「ああ、できるだけやってみるよ。やっぱり、参加するからには少しでも上を目指したいからな」


 海斗に近付いて、肘で小突きながら、真鈴ちゃんは海斗にプレッシャーをかけている。実の妹だと思い込んでいる海斗は、表情のひとつも変えずに返答する。

 だけど、私はちょっともやっとした気持ちになってしまう。

 真鈴ちゃんが海斗の妹ではないことが分かったし、私だって自分の気持ちをはっきり認識したからかな。

 ……いやだわ。これじゃまるで嫉妬じゃないのよ。

 はっきりと認識した私は、思わず顔を左右に振ってしまう。


「どうしたんだ、マイ」


 突然の私の行動に、海斗は慌てているようだった。

 ぴたりと首振りを止めると、私はにへらと笑って海斗に話しかける。


「な、なんでもないよ、お兄ちゃん」


「そ、そうか」


 やっぱり、海斗は急な行動をいぶかしんでいるのか、私を見ながら表情を歪めている。本当に何でもないんだけど、こんな顔をされると困ってしまうわね。

 こういう時は、早めに話を打ち切るに限るわ。


「そ、それじゃ、私は戻るから。また明日ね、お兄ちゃん」


「ああ」


 私は手を振って急いで家の中へと駆けこんでいく。

 玄関の扉を閉めると、私はその場に座り込んでしまう。


「はぁ~……。絶対何か変に思われたよね、あれは」


 思ってもみなかった海斗の反応だけに、私は正直言ってまだドキドキしている。

 それに、どことなく自覚はしていたけれど、自分の気持ちをふいに確認してしまったので、私の頭の中はかなりごちゃついてしまっている。


(ああ、なんか落ち着かないわ……)


 私はすくりと立ち上がると、手洗いうがいを済ませて、すぐにお風呂の準備を始める。こういう時は温かいお風呂でくつろぐに限るわ。

 急に湧き上がった心ごと洗い流すかのように、私は無心でお風呂を掃除していく。

 お風呂が沸くと、私は早速お風呂に入る。体を洗うと、首まですっぽりと湯船につかる。


「はあ、高校三年生かぁ。本当だったら、私は海斗と一緒に学校で楽しくしてたんだろうなぁ……」


 湯船に口がつかりそうになるくらい、深く体を沈み込ませながら、私はぽつりと呟いている。

 でも、幼馴染みとして一緒に高校に通っていた場合、私ははたして、海斗とはどういう関係になっていたんだろうかと考えてしまう。

 小さい頃から一緒だったからか、家族のような関係で育ってきたんだもの、恋心になんて、気が付いていなかったかもしれないわ。

 転生して自分の気持ちに気が付くなんて、本当に皮肉としか言いようがないわね。


「ふぅ……」


 私は一度、湯船の中にすっぽりと頭までつかってしまう。マーメイドだから、一応水中でも呼吸はできる。でも、人間は絶対真似しちゃダメよ。

 そして、勢いよく湯船に立ち上がる。


「よし。うだうだ考えていても仕方ないわ。転生後の世界に戻れないんだったら、その間はしっかりと海斗のことを応援するだけ。ゴールデンウィーク、しっかりと応援しなきゃ」


 私は一度気合いを入れると、そのままお風呂から上がる。

 服を着替え終わると、夕食の準備へと取り掛かる。

 調査は波均命に任せたわけだから、私は転生前の世界の生活をとにかく満喫することにしよう。

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