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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

婚約破棄は愛の味

掲載日:2025/09/09

「貴様との婚約を破棄する!」


 絵に描いたような金髪碧眼の王子が、私との婚約破棄を宣言した。

 王立学院の卒業式、黒い礼服の王子が鋭い眼差しで私を睨む。

 王子の隣に立つ桃色髪の美少女が、白磁のような肌を青ざめさせていた。

 腰まで伸びた私の黒髪が微かに震え、豪奢な白いドレスが血涙を流す。

 黒い瞳で王子を見据える。深呼吸をしてから言葉を発した。


「なぜ?」

「なぜだと? 貴様、周りを見てみよ!」


 王子が私を指差し激昂する。

 あらあら、おいたが過ぎたかしら?

 周りを睥睨する私に王子は続けて言った。


「殺しすぎだろ……」


 死屍累々、私の周りに築かれた屍の山。

 貴族、騎士、王妃、国王、公爵令嬢の私を苦しめ続けた愚か者共の成れの果て。

 右手の剣には大量の血が滴り、刃を赤く染め上げていた。


「守護する者はもういませんわ。王子、お覚悟はよろしくて?」


 剣を両手で構え直す。中段の構え。柄の感触を確かめ、気を引き締めた。

 殺気を放ち王子を睨む。抜け。長年の決着をつけましょう? この腐れ縁に。


「冥土の土産は必要か?」


 王子が腰に佩いた剣を抜く。馬鹿げた問いに口角が僅かに上がった。


「地獄に行くのに手土産が必要かしら?」


 王子に最後の言葉を贈る。もはや私たちに言葉は必要なかった。

 王子の姿が揺らぐ。否ッ!? 無拍子! 王子が鋭く踏み込み間合いを詰める!


 剣戟!! 金属音が木霊し刃が交差する!!


 王子の十八番、鍔迫り合い。私の剣ごと押し潰すように王子の剣が体に迫る。

 二人は幼馴染、剣の稽古を共にした仲――


 傷の手当てをしてくれた温かい白い手。

 一緒に星を見た庭園で繋いでくれたね。

 触れる指先が、私の涙を拭い、微笑む。

 幼い頃の記憶、流れる走馬灯、二人は。


 ――剣と剣、死線を分かち合う。なぜ?

 あんなに一緒だったのに……止まぬ剣戟、二人で積み上げた思い出を切り崩して何を求め殺し合う? 逡巡する暇すらない。ただただ私たちは傷つけあった。

 掠める刃、薄皮を斬り裂き、二人を彩る。

 王子の剣を味わい尽くした私の剣が、導かれるように上段へと構え直される。

 雄叫びと共に全身全霊で剣を振り下ろす! 受けた剣ごと王子を斬り伏せた。


 絶命した王子を見下ろす。私の目から涙が一筋流れ落ちた。


 剣の血を払い、桃色髪の美少女に微笑む。この身を寄せ、その頬に触れる。


「ああ、愛しき人よ……」


 黒いドレスの彼女を抱きしめると、白肌に咲く二人の唇が重なり合った。

 彼女の翡翠色の瞳から涙が流れる。屍山血河の中で甘い吐息を響かせた。

 全てはあなたのために……私たちが結ばれるにはこうするしかなかった。

 私は公爵令嬢。王位継承権を持っている。反乱は成功し私が女王となる。

 同性愛を禁ずるこの世界を一緒に壊そう。二人で共に愛を味わうために。


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― 新着の感想 ―
Xでフォローいただいたので読みに来ました。 途中まではテンプレものですが、最後には驚きの展開に! 破棄された側はいいですが、桃色髪の美少女は王子に人質に取られていたのでしょうか? 最後に唇を重ねている…
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