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第十二話

アストラさんがランタンを持って少し先を歩き、それに続いて私とネクロが数歩後をついて行く。

 ネクロは自分からあまり話題を振る性格ではないのだが、それはアストラさんも同じなようで、この道中はすごく静かだった。

「アシリア、これが例の占い師なのか?」

 歩き続けて木々が多く、足場が悪くなってきたころ、ネクロが私に小声で話しかけてきた。

「そうみたい。さっき図書館で助けて貰ったんだけど、その時に分かったの」

「助けて貰った?」

 怪訝そうな顔をされる。そりゃそうだ、図書館なんて静かな空間でそうそうトラブルが起きるわけがない。

「うん。ちょっと、なんか本の中にあった魔力? が、私の魔力に反応して、危害を加えて来そうだったから」

「たまたま私が通りがかって良かったです」

 会話が聞こえていたのか、数歩先を歩いているアストラさんも加わってきた。

「黒髪の貴方はそこの女性のお仲間さんですよね?」

「あ、そうです。私がアシリアで、この人は」

「ネクロだ」

 そう言えば名前を聞くだけ聞いて、こちら側は名乗っていなかった。

「アシリアさんに、ネクロさんですね。ありがとうございます、占いには名前も重要になってくるんです――さて、着きました。少し足元が悪いので気をつけてください」

 アストラさんは私たちの足元を照らしながら道を先導してくれた。

 そこから少し進んだ先にあったのは小さな木造の建物で、入口には温かみのあるオレンジ色の照明が付いている。

扉を開けてくれたので、私たちはその中に入ることにした。

 占い師、という程なのでなにかおどろおどろしい魔術の道具などが置いてあるのかと思ったがそうでもないらしい。

 不思議な甘い香りのするお香が炊いてあったり、占いや魔法に関する本が本棚に置いてあるくらいで、奇妙な印象はなかった。どちらかと言うと、生活感が強い。

「私はここで占いをしていますが、同時にここに住んでもいるんです。住居兼仕事場、という感じですね」

 こちらにどうぞ、と勧められた椅子に座れば、淹れたばかりなのだろうか、良い香りのする紅茶を差し出された。

「少し準備がありますので、こちらでお待ちください」

 アストラさんはそれだけ言って奥の方の部屋に向かっていった。

「ネクロは占いしてもらう?」

「乗り気では無い」

 たしかに、ネクロはかなり現実主義っぽいし、占いとかはあまり興味無さそう。

「占い信じないタイプ?」

「この国の占いや未来視は長い歴史の中外れたことがないのだから信じる信じないの話ではない。興味がわかないだけだ」

 そうか。だからまぁみんな疑いもなく王様の言葉を信じたり、アストラさんの占いがこの町で好評だったりする訳だ。

 もしデタラメばかり言っていたら、王なんて役職から引きずり下ろされてるはずだもんね。

「それならアストラさんに言わないとじゃない? 多分着いてきてくれたから2人とも占う気でいると思うよ」

「お二人共、お待たせいたしました」

 私とネクロがそんな会話を少し交わしていたところ、アストラさんが戻ってきた。

 手には細長く黒い箱とロウソク、顔には黒いヴェールが被せられている。

「この瞳はこのように遮断しないと、余計なものまで見えてしまうのです。もう少し使いこなせるようになればヴェールを外してできるようになるのですが、今は目を見て会話が出来ないことをお許しいただければと思います」

 アストラさんがロウソクを私たちの座っている目の前のテーブルに置き、手を1振りした。

 途端、部屋中の照明が消え、目の前のロウソクに火が灯る。

「まずはこちらの水晶玉に手をかざしてください」

 アストラさんが淡く白色に光っている水晶玉を私たちの前に持ってくる。言われた通りにすると、白色の光は黄色へと変化した。

「……」

 アストラさんはそれをじっと見つめたあと、ネクロに対しても目で合図をする。

ネクロはあまり乗り気でないように私とアストラさんを交互に見つめていたが、やがて観念したように水晶玉に触れた。

 私が触れた時に変わった黄色の光が、次は水色に変化する。

「ありがとうございます。次にこちらのカードを引いてもらいます」

 次にアストラさんは私たちの前に細長い長方形のカードの山を2つ並べた。

 タロット占いのようなものだろうか? 私はあまりこういうことに興味がなかったので断言は出来ないけど。

「今1番悩んでいることを考えながらカードを引いてください」

今1番悩んでいること……私が本当にこの世界を救えるのかってことと、あの時の光がなんなのかってことだ。

 カードを引く。続いてネクロもカードを引いた。

裏返して絵柄を見てみるが、なんだかよく分からない抽象的な絵が描かれていた。よく見ると剣?のようなものが描かれている。

「占いは以上で終了です。お疲れ様でした」

 アストラさんがもう一度手を振れば、部屋の電気が一斉につき、ロウソクの火は音もなく消えた。

「面白い結果になりましたね」

「だってさ、ネクロ」

「……占ってもらう気はなかったが」

 雰囲気に押された、と言いたげに頭を抱えている。意外と空気を読んで動く人らしい。

「さて、まずはネクロさんから結果をお話ししまょうか」

アストラさんがネクロの方を向く。と言っても目元はヴェールで隠れているのだが。

「まず、水晶玉の方で見させていただいたのは適性魔法です。あなたのは氷ですね。神様からの祝福のように涼やかな魔力を纏っています。出自はそういった血筋で?」

「すまないが、俺は物心ついた時から孤児だったから、それは分からないな」

「それは失礼しました。――しかし今使っているのが氷魔法なのであれば非常に良く見極められていると思います」

それを聞き、ネクロは自分の手のひらを見つめたまま話さないでいた。

「カードを使った方は、これからのお二人の未来について占わせていただきました」

カードを見せてください、と言われたので二人でアストラさんにカードを渡す。

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