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第十一話

「ネクロ、お待たせ」

 私がエントランスに着くと、やっぱりネクロは先に待っていた。

「いや、問題ない。探していたものは……」

 ネクロが途中で言葉を止める。

「不思議な方ですね。こんにちは」

 先程の女性もネクロに挨拶をする。

「……誰だ?」

「えっと、色々あって……。話すと長くなるから、一旦図書館を出ようか」

 私が促して、3人は1度図書館を後にした。

 話は少し溯る。

 ――

「えっ、と、あの……」

 恐怖から開放された安堵と突然現れた女の人に驚いて間抜けな声を漏らす。

 女の人は自分の手の中の宝石のように輝くそれをじっと見つめている。

 照明の光を反射させてキラキラと光り輝いているそれは、先程の黒い手を取り込んだとは思えないほど透き通っている。

 女の人はそれをしばらく見つめたあとで、私に話しかけてきた。

「あなた、運が悪いですね」

「えっ」

初対面でそんなこと言われるなんて……。

「そうですか、転生者……なるほど、だから襲われたんでしょうか」

 どうして私が転生者だって知ってるの!?

 私の驚きに気づき、女の人はくすりと笑う。口に手を添えて上品に笑っている姿が絵になっているが、今の私からしたら転生者であることを知られていたり、初対面で運が悪いなんて言われたりでちょっと怖い。

「大丈夫ですよ、とって食べたりしません。先程のは……たまにあるんです。長く保管されて沢山の人の手に渡った書物は、多くの人の魔力の溢れを吸収しているので……。魔力の強い人が触れると、その魔力が悪い方向へと作用してしまう時があるんです」

 な、なるほど……? 確かにあの本は今までに読んできた本当は違って装丁が少し古い感じがした。

「浄化したのでもう普通に読めると思います。……ああ、でもこれはあまり今は見られない言語なので、脅威を取り除いても読めないかもしれませんね」

 恐る恐るもう一度手に取って中身を確認してみる。前みたいにサポートの人が来てくれたりしないかな……。

 『適応に成功しました』

 さすが。

 開いて読んでみる。どうやらそれは小説のようにまとめられた記録書のようなもので、他に読んでいたものとは少し異なっていた。

 適当に開いたページを読んで見ると、ふとこんな文章が目に入る。

 “魔法は五つの属性からなることは誰もが知っているだろう”

 “しかしその五つの魔法がどこから来たのかは……誰もはっきりと解明できていない。そこに足を踏み入れた者は、全員死ぬからだ”

 “私はその謎を解き明かしたい。全ての物事は、ひとつの小さなものから始まると信じている”

 どうやらこの人は魔法についての研究をしていたようだ。パラパラとめくり続け流し読みしていると、後半になるにつれてその人の話している言葉がどんどんとおかしくなっていた。

 “魔力を人間が扱うなど神に対する冒涜である”

 “五大魔法など高尚な神の前では足元にも及ばない”

 “神々のみが使用できる真の魔法――光魔法”

 光に関する記述を見つけ息が止まる。

 読み進めていこうとしたが、もうそれは最後のページだった。

 “私たちは光魔法によって世界の終焉から逃れることが出来るのだ”

 本はそこで終わっていた。読み物としては奇妙な分類だ。

 顔を上げると、まだ女の人は近くにいた。

「光魔法について調べているんですか?」

今ではあまり見られない言語といっていたが、この女の人はどうやらこの書物の内容がわかるらしい。

「珍しいですね。ここに記述されている通り、光魔法の研究はかなり危険です。この魔法がある、という存在が認識されるまでもかなりの時間を要しました。……それでも今はほぼ関連する文献は残っていないので、おとぎ話のような存在になってしまっていますが」

 文章から見てわかるように、狂気にのまれてしまうからです――と女の人は続ける。

「そのため、光魔法について調べようとしているならあまりおすすめはしません――そもそもこの魔法について知っている人は少ないんです。どうやってここまでたどり着いたか、教えていただけませんか?」

 そう言われても、身分も分からない初対面の人に話すのは抵抗がある。

 ただ人の心をゆさぶって楽しむ人かもしれないし……。

「失礼しました。そういえば自己紹介がまだでしたね」

 虹色の瞳は私の瞳の奥まで見据えるような恐ろしさを感じさせる。

「私の名前はアストラ。ここで司書の手伝いをしたり、仕事として占いをしたりしています」

 占い、占い。ここに来るまでの会話を思い出す。

 ――なんでも王族と同じくらいの占いの力を持っていて、その人ごとに適正な魔法を教えてくれるとか、くれないとか……。

 それに加えて、このアストラと名乗る女の人の瞳は、王様の瞳から受けた印象とそっくりだ。

「噂の占い師さんですか……?」

 質問に質問を返してしまったが、アストラさんは嫌な顔をすることなくまたくすりと笑う。

「そうですね、よく町の人がされている占いの話は……大体が私によるものです。もしかして光魔法との相性でも見てもらいたいのですか?」

 冗談めかしてそう言われるが、私はそれに反応した。

 確かに、適正魔法を教えてくれるならここで探すより早い。

 しかも相手は私より魔法について詳しいみたいだし、あの魔法について話して見てもよさそうだ。

「光魔法を調べている理由は、話せば長くなるんですけど……。その話を踏まえて適正魔法を教えていただきたくて」

「ふふ、わかりました。まずはそのお話について聞かせてください」

――

「なるほど……」

 私がなるべく手短にあの時の戦いで出せた光のことを話すと、アストラさんは腕を組んで考え出した。

「そうですね。光魔法は先程言った通り、あまり文献も残っていないので特性など細かいことは判明していないことが多いのですが……文字通り受け取るなら、光魔法との関連はある可能性があります」

 やっぱり! 普通の魔法と異なるなら、道理で書物がなかなか見つからないわけだ。

「ただ、仲間の治癒も可能なのなら、草魔法にも持ち合わせている能力なので……なんらかの魔法の組み合わせの関係で、偶然そのような現象が起きた可能性もあります。暴発して発光、なんてケースは稀にありますからね。……なんにせよ、1度だけの現象をほぼ隠されている魔法と絡めて考えるのは無理があるかと」

 たしかに。1度しか出せていないから暴発した可能性もあるのか……。でもそれだとどうして空の光が戻ったのかについての疑問が残る。

 あれは暴発じゃ出せないような明るさだったと思う。だからこそ空に影響が出たと思っているんだけど……。

「ただ、あなたには普通の人と違う力を感じます。魔力が強い、転生者である……それ以外に」

 虹色が私を見すえる。

「なので1度私の仕事場に来ていただけませんか?占いをさせていただきたいです。今日はお休みにしているので他のお客様は訪ねてきません」

「でもお休みの日にやってもらうのは」

「いいえ、私のエゴでもあるのです。今見せていただきたくて。お願いできませんか?」

 そこまで言われたらお願いするしかない。あと正直、他の人がいる中で見てもらうのってちょっと緊張しちゃうから。

「じゃあ、お願いします。私の仲間も同行させていいですか?」

「もちろんです。希望していれば一緒に見ちゃいましょうか」

 そう話し合いネクロとの待ち合わせ場所に向かい、現在に至る。

リアルが多忙でなかなか更新できずすみません!涙

いつも読んでくださってありがとうございます!本当に嬉しいです。評価なども頂けるととても励みになります。

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