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51.よくない噂

数人の足音が聞こえて、というか、その中で1人やたら早足で歩いている人がいて、誰かがこっちに向かってきていることに気付いた。


振り返ると、慌てた様子のカルミアを先頭に、イキシア殿下・ローダンセ・クフェアが近付いてきている。


「アマリリス様、何がございましたの? この子が何か失礼なことをしましたの?」


カルミアの言葉に、わたしとアマリリスは瞳を瞬かせながら顔を見合わせた。


「カルミア様、何のお話ですか? 私と彼女は、ただ雑談をしていただけですよ」


「そうなのですか? しかし……」


言い淀んだカルミアがチラッとわたしを見てきた時、イキシア殿下達が到着した。


「僕は何かの誤解だと思っているんだけど、アマリリスが無理矢理連れて行ったと噂になっているんだよ」


困ったように微笑むイキシア殿下に、カルミアは頷きながらアマリリスの手を取っている。


「え? 違います! きちんと承諾を得てから、こちらに来ました」


「はい。無理矢理ではありません。その場にガーベラも居ましたので、証明してもらえます」


「しかし、フリージアさんが泣いていたところを、見ていた者がいるそうなんです」


「泣いていた? わたしがですか?」


ローダンセの言葉にキョトンとしながら問い返すと、ローダンセははっきりと「はい」と肯首した。


あたし、泣いてたっけ? その時、何してたんだっけなぁ。


「あ! 笑い泣きです! ディセルファセカ公爵令嬢様に話しかけられる前に、ガーベラと『アセビ様が女神すぎて目が痛い』って話をして、大笑いしていたんです」


吹き出すように「ぶはっ」とお腹を抱えたのは、クフェアだ。「分かるわー。あいつ、綺麗すぎるもんな」と笑い、カルミアに睨まれ、一瞬にして静かになった。


男相手、親友相手だとしても、カルミア以外を綺麗と言ってはいけないのかもしれない。


すごいな。わたし、そんな恋愛できないから尊敬しちゃう。というか、だから今でも経歴が真っ白いままなのかもな。


「うん、誤解だと思ったよ。アマリリスが誰かを虐げることなんてしないだろうし、彼女には白竜がついている。陛下でさえ、彼女を蔑むことなんてできないからね」


怖いこと言っている。アサギには誰も勝てないけど、ただの平民が陛下より偉いわけないでしょうが。王子様が、変なことを口走ってはいけないと思う。


でも、イキシア殿下と言い合うなんてことしないよ。今、アマリリスが小さく笑いながら、イキシア殿下の側にいったからね。2人の邪魔をしてはいけない。


「陛下は優しい方ですからね。フリージアさんではなくても、そんなことなさらないですよ」


「そうだね。僕が目標にしている人は、素晴らしすぎる人だからね。それに、尊敬している人の1人にアマリリスは入っているよ。だから、信じているんだよ」


ん? 今、なんか声色おかしくなかった? ちょっと不安定だった気がする。


「ありがとうございます。私もイキシア様を尊敬していますわ」


いつも通り微笑み合っているし、気のせいかな? もしくは、喉の調子が悪いとか? もし話す機会があれば、飴ちゃんあげよう。イキシア殿下の喉は大切。


「あ! では戻る時に、わたしとディセルファセカ公爵令嬢様が、手を繋ぐのはいかがでしょう?」


「はぁ? あなた、調子に乗ら——


「カルミア、やめろ」


いいよ、クフェア。いいんだよ。本当に調子乗ったことを言ってしまったんだから、カルミアを怒らないであげて。わたしのせいで2人が喧嘩しないで。


「すみませんでした。殿下がいらっしゃるのに、私がエスコートするとかおかしなことを言ってしまいました。ただ一緒に戻ることだけは許していただけたらと思います。わたしが1人で戻ると、噂が大きくなりそうですから」


「そうだね。アマリリスのエスコート役を取られると、僕がだらしないって言われそうだ」


「まぁ! イキシア様ほど素敵な方はいらっしゃいませんわ」


「同じ教室なんですから、みんなで戻りましょう。フリージアさん、アマリリス嬢の横ではなくて申し訳ありませんが、私が隣を歩いてもよろしいでしょうか?」


場を収めようと穏やかに話すローダンセに、わたしは頷く。


「もちろんです」


クフェアが息を吐き出し、カルミアに「キツく言って悪かったな」と素直に謝っていた。カルミアも「いえ、言葉が過ぎました」と反省をしていている。


そんな2人が列の真ん中を歩き、わたしとローダンセは最後尾にいる。


「フリージアさん。今日の放課後ですが、ご相談したいことがありますので、フリージアさん達がお昼休憩を過ごされている庭で勉強会でもよろしいでしょうか?」


「分かりました。では、今日は予習復習メインで勉強します」


「私もそうしますので、分からない所は教えてください」


「コムラサキ侯爵令息様の方が知識が豊富なんですから、教えてもらうのはわたしですよ。よろしくお願いします」


誰にも聞かれたくない相談事って、何だろうなぁ? アセビもいる時の方が、絶対解決策が出てくると思うけどな。それとも、アセビにも聞かれたくないこと?


柔らかく微笑むローダンセに笑顔を返し、呑気に「あ! フヨウ用に新しく刺繍してほしいのかも」と考えていた。






久しぶりの更新で申し訳ありません。

これからも更新できる時に……という感じになります。

のんびりとお付き合いくださいましたら幸いです。


リアクション・ブックマーク登録・読んでくださっている皆様、本当に感謝しています。ありがとうございます。

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