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50.アマリリスの忠告

いつも通りガーベラと登校すると、曲がり角でマーガレットとぶつかりかけた。


乙女ゲームだ。攻略者との出会いのシーンだ。ぶつかっていたら恋が始まっていたかもしれないと思うと、恐怖で慄いてしまいそうだった。


なんていう冗談は置いておいて、普通に謝罪し合い、挨拶をしている。


ただなぜか、どうしてもマーガレットと仲良くなりたいという気持ちが湧いてこない。何度も偶然があったのだから、必然に感じて友達になりたいと思ってもおかしくないのに、妙な感覚がマーガレットと一線を引かさせる。


だから、雑談などはせずに、すぐにその場で別れた。「冷たいかな? でもなぁ」と、本当に後1歩の距離を詰めることができないのだ。


「今日からアセビ様おらへんのやんな。3日やと分かってても寂しいわ」


「本当だよねぇ。魔導師団に協力をお願いされるなんて、アセビ様ってすごいよね。普段親しみやすすぎて天才だって忘れちゃうんだよね」


「見た目が綺麗すぎて冗談なんて言わなさそうやのに、ノリツッコミも好きやもんな」


「女神すぎるんだよね。目が痛い時あるもん」


「分かるわー」と大笑いするガーベラと一緒に、わたしもお腹を抱える。


アセビが魔導師団に赴く理由は、カエルの魔物グロッケルの討伐時に拾った、焼け焦げた紙の分析結果を話し合うことになったかららしい。


アセビは「学生の私が意見することなんてないって、父に言ったら怒られたよ。フリージアと魔法の話をしている方が楽しいのに」と愚痴っていた。


アセビへの期待が高いことも驚いたけど、それ以上に、あの焼け焦げた紙が会議の議題に上がる、ということに目を見開いてしまった。


なんかものすっごくヤバい紙を拾ってしまったんじゃないかと、心臓がバクバクする。ゲームではそんなシナリオはなかったから、わたしには関係ないはず。そう思いたい。


笑いすぎて目尻から落ちそうだった涙を拭おうとした時、誰かに腕を掴まれた。声かけもなく突然掴まれたので、瞳を瞬かせてしまった。


なお、掴まれていないガーベラの方が、盛大に肩を上げていた。


「ディセルファセカ公爵令嬢様、おはようございます。どうされました?」


「あなた、さっき、その、えっと、あの女性……知り合いなのですか?」


「さっきの女性ですか? スカビオサ子爵令嬢様のことですかね?」


「そ、そうです」


顔を強張らせているアマリリスが、緊張からだろう、唾を飲み込んでいる。


ただわたしからすると、どうしてそんなに力んでいるのかが分からない。


「2、3回話したことはありますので、知り合いではありますね。それがどうかされましたか?」


アマリリスは、考え込むように視線を右へ左へとゆっくり動かし、姿勢を正した。焦っていた様子は鳴りを潜めて、いつもの凛としたアマリリスに戻っている。


「少しお時間をいただけますか?」


「分かりました」


ガーベラに「ちょっと行ってくるね」と手を振り、教室から離れていくアマリリスの背中を追う。


アマリリスからの申し出を断るなんて馬鹿なことはしない。これがアマリリスの後ろにいる転生者への突破口になればいい。


それに、あの発言の後にわざわざ時間をだなんて、やっぱりマーガレットには何かあるんだ。でなければ、アマリリスがこんな目立つ場所で、わたしを誘い出すわけがない。放課後でいいのだ。すぐに伝えなければいけないことがあるということだ。


人気が無い廊下に到着し、アマリリスが振り返った。


「私は今からおかしなことを言いますが、私を信じてほしいのです」


「分かりました。信じます」


即答したわたしに拍子抜けしたようで、アマリリスは「へ?」と気が抜けたような声を漏らした。


「あ、あなた、ちょっと疑うとか、公爵令嬢だからって威張ってんじゃないとか、ないのですか?」


狼狽えているアマリリスが可愛くて小さく笑うと、睨まれてしまった。


はじめは近付かないと決めて、次に誤解を解きたい・不安を取り除いてあげたいとかの気持ちに変わり、今ではもう鋭さを含んだ表情も可愛いと思ってしまっている。


なるほど。さすがはヒロインに転向した悪役令嬢。いつの間にか元ヒロインの心を奪っていたようだ。


「すみません。前にお伝えしましたが、わたしはディセルファセカ公爵令嬢様と友人になりたいと思っています。ですから、好感を持っている相手の言うことを疑ったりしません」


盛大にため息を吐かれ、ゆるく首を横に倒した。


「その考えはやめた方がいいですよ。詐欺や裏切りに遭いますよ」


「変な人達には気を付けています。ただ私の中で、その変な人の括りにディセルファセカ公爵令嬢様が入らないだけです」


真っ直ぐ伝えると、アマリリスは頬を赤くさせた。純粋で愛らしい反応に頬が緩む。


場が和みかけたからか、ハッとしたアマリリスは、わざとらしく肩にかかっている綺麗なストレートの髪を手で払った。


「スカビオサ子爵令嬢と仲良くするのはやめてください」


「はい、分かりました」


「それだけよ」


「え? え? それだけですか? 彼女のここが怪しいとか、彼女は何々だから危険だとか、彼女はアセビ様を狙っているだけとか」


マーガレットの情報が欲しい。だから、アマリリスが知っているだろう情報を教えてほしい。


「あの子が狙っているのはイキシア様ですよ」


「え? え? えー! そうなんですか? あの子がディセルファセカ公爵令嬢様に勝てる要素なんてないですよね? それなのに殿下を狙っているんですか?」


「……あなた、そのはっきりと物事を言うところ直した方がいいですよ。子爵令嬢でも、平民のあなたを路頭に迷わせることはできるんですからね」


「あ、はい、そうですね」


「後、あなたを唆してアセビ様へ、アセビ様からイキシア様に繋いでもらう予定だと思います」


え? 繋いでもらったらアマリリスに勝てるって思っているってこと?


いや、ちょっと偏見な考えをしすぎているのかも。子爵令嬢だからイキシア殿下と話せる機会がなさすぎて、一度話してみたいとか、気持ちにケジメをつけるために当たって砕けたいとか、かもしれない。


でも、そっか。わたしを踏み台にしようっていう気持ちを感じ取ってたのかもな。だから、友達になりたいって思わなかったのかも。


「それに……彼女こそ危険なんです……」


危険? もしかして、今までもイキシア殿下に近付こうと、色々画策してきていて、たくさん迷惑を(こうむ)ってきたとかなのかな? 行動力がありすぎる令嬢って怖そうだもんな。






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