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5.苦手なタイプ

今も針の筵にいる気分。断らなかった方がよかったのかなぁ。


でもさ、「断るなんて生意気」って虐められても、「身の程を弁えた行動をしただけです。わたしがディセルファセカ公爵令嬢様達と机を囲うなんて、恐れ多すぎます」で乗り切れると思うのよ。将来有望な男子達と同じ時間を過ごす方が、きっつい虐めになると思うのよ。うん、やっぱり断る1択だな。


「申し訳ございません。お弁当だと目立ちますので、遠慮させていただきます」


「で、では、お弁当は私が頂きます。フリージアさんは食堂のメニューを召し上がってください」


えー、なんでー。どうしてー。わたしキレちゃいそうだよ。YESとNOを選べない質問は嫌いだよ。


じゃあ、はじめっから無理矢理「行きましょう」って引っ張ってよ。その方がわたしの印象いいじゃん。って、アマリリスの印象は悪くなるからダメなのかな?


ええ、なにー。もしかして、ヒロインの人気が出たら困るから、踏み台にしないとっていう考えとか止めてよー。


なんて、わたしの騒がしい妄想は置いておいて、真剣に、この子は何がしたいんだろうな。攻略対象とわたしが接点を持つことが、一番怖いことなんじゃないのかな? 違うのかな?


「まぁ。冷たいお料理を、アマリリス様が召し上がられなくてよろしいですわ」


割り込んできたのは、アマリリスの親友と思われるカルミア・グロキシニア侯爵令嬢。毛先から根本に向かうほど深い紫色になるロングヘアで、赤色の瞳をしている。アマリリスには負けるが、胸は揺れるほどある。ゲームではアマリリスの取り巻きでモブだったが、現実ではクフェアの婚約者だったはず。


「カルミア様、それは失礼ですわ。お弁当は、冷たくなっても美味しく食べられるように工夫されているものですよ」


「存じております。私は、温かいお料理を食べられる時は、温かい食事をとりましょうと申し上げているのです」


わたしも、カルミアの意見に賛成。お弁当は美味しいけど、やっぱり出来立ての料理とは比べられないもん。それに、カルミアの言い分、騎士を目指しているクフェアの婚約者にピッタリな発言だよね。騎士は遠征や討伐になると、温かい食事は難しいだろうから。


あれかな。アマリリスの内面変更に伴って、カルミアの性格も柔らかい方向に変わったのかな?


「しかし、それはフリージアさんにも言えることですわ」


うーん、ヤバいなぁ。苦手なタイプだ。話せば話すほど、アマリリスと距離を取りたくて仕方なくなってくる。


しつこいのもだけど、さっきからガーベラやツワブキが一緒に食べるメンバーに含まれていないように感じる。名前も出てこないしさ。平民同士、一緒にお弁当を食べているとは思わないのだろうか。今もずっと、会話が終わるのを待ってくれているのに。


本当に何歳の人が、この中に入っているんだろ?


ううん、何歳になっても、こういう人いるよね。年齢関係なかったわ。


「わたしは食べられるだけで幸せですので、温かくても冷たくても問題ございません。ディセルフォセカ公爵令嬢様は、皆様と食堂に行かれてください。ご心配くださり、ありがとうございました」


このままでは埒があかないし、休憩時間が刻一刻と短くなっていってしまうので、返事を待たずに去ってしまおうと思ったのに、アマリリスに腕を掴まれてしまった。


どうしても放っておいてくれないようだ。お弁当を一緒に食べるという使命に燃えすぎている。


「あ、あの、本当に、お弁当……そうです! お弁当だけでは、栄養が偏ってしまうかもしれませんわ。私、そういう知識がありますの。お節介かもしれませんが、助言させてください」


「気にしてくださり、本当にありがとうございます。ですが、お弁当は学生寮のご飯と何ら変わりません。栄養面は考えられているはずです」


「え? 自分で作ってるんじゃ……」


アマリリスに目を見開かれたが、何に時を止めているのかなんて分からない。こっちが変に狼狽えそうになってしまう。


「いいえ。台所の使用許可をもらっておりませんので、わたしは作れません」


そもそも、わたしが作れることを知っている発言もどうなの? 誰もおかしいと思わないのかな? わたしなら「一体どういう仲」って気になるよ。絶対に後で尋ねちゃうよ。


アマリリスにホッと小さく息を吐き出され、掴まれていた腕が解放された。柔らかく微笑まれたが、笑顔を返す気になれない。だって、もう何が何だか訳が分からなさすぎる。


「そうでしたのね。人間は体が資本です。育ち盛りの学生となれば、特に気を使う必要がありますしね。体を壊されるような食事環境ではなさそうで、安心しました。長く引き留めてしまい、ごめんなさい」


「いえ。失礼いたします」


やっと解放された喜びから、無礼にならない程度に頭を下げて、足早く教室を後にした。






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