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48.イキシア視点・偽りじゃないと言ってほしい

「あの、イキシア様におうかがいしたいことがありますの」


「なに?」


「その、武術大会の時に気付いたのですが、ネックレスをされていましたよね。いつからされているのでしょうか? 今もされているのでしょうか?」


武術大会の日を思い返し、「ああ、そうか」と納得した。


あの日、服が破けてしまって、着替える前に泣きつかれていた。普段は制服も普段着もきっちりとボタンを閉めていて見えるはずはないから、あの時以外あり得ないだろう。


「今もつけているよ。誕生日プレゼントにもらってね。お気に入りなんだ」


「見せてもらってもよろしいですか?」


「いいよ」


エビネが外してくれ、そのままアマリリスの元に持っていく。


受け取ったアマリリスは、早々にロケットを開けて、中を確認している。


「綺麗ですね。誰からの贈り物ですか?」


「友人の1人からだよ」


「そ、うですか。本当に綺麗ですね。これで指輪を作ったら、素敵なものになりそうですね」


アマリリスは婚約者だから「指輪を作ってプレゼントするよ」と言ってあげたいけど……ごめん、その宝石だけはあげられない。


「きっと素敵だろうね。でも、手を加えたくないからロケットの中に入れてるんだ。綺麗な石が加工されるのは惜しいからね」


「そこまでお気に入りだなんて妬けてしまいますね」


「宝石に?」


「はい。私は誰よりもイキシア様が好きですから、ずっと身につけている物にも嫉妬してしまうんです」


「んー、でも、もう首にないと寂しいしなぁ」


「でしたら、私がペンダントをプレゼントします。お揃いのペンダント。いかがでしょう?」


「重たい物は嫌だよ」


「はい。シンプルなデザインにしますね」


飛び跳ねるような勢いで嬉しそうに微笑んだアマリリスが、ペンダントを持っている手を握りしめ、そのまま下ろそうとした。


「アマリリス様」


「ん? エビネ、どうしたの?」


「イキシア様のペンダントをお預かりします」


「そうね。持ったままだったわ」


エビネの手に渡ったことを確認して、心の中で胸を撫で下ろした。だが、エビネの次の言葉に息を飲み込んでしまった。


「アマリリス様、中にあった宝石もお預かりします」


エビネの指が動いていたから不思議に思っていたけど、中を確認してくれていたのか。


「え? 持っていないわ」


「小さいですから落とされたのかもしれませんね。一度、立っていただけますか?」


「……そうね」


顔を俯かせて立ち上がったアマリリスの座っていたところに、涙の宝石はあった。エビネの「ございました」という言葉に、アマリリスが唇を噛んだのを見逃さなかった。


アマリリスは何を考えていて、何に不安がっているんだろう。


僕はエビネにさえも、あの宝石の贈り主を明かしていない。彼女も誰にも話していないと、影が言っていた。


だったら、どうしてアマリリスはあの宝石を取ろうとしたのだろう。


僕のことで彼女に何度も会いに行っていることは、影の報告で知っている。


僕は、アマリリス以外の女の子と話さないわけではないし、全員に対して態度を変えたりしない。好意があろうと嫌悪を抱いていようと接し方を変えない。だから、アマリリスがいても迫ってくる女の子はいる。


そういう子は気にしないのに、どうして彼女だけは引っかかるんだろうか。


小さい頃に会った時も、アマリリスに物凄く尋ねられた。アマリリスの話しかしていないと伝えた時に、ひどく安心した顔をしていたことを覚えている。


そういえば、僕には今のディセルファセカ公爵の印象しかないけど、幼い頃、皆口々に言っていた。「まるで人が変わったようだ」……と。


アマリリスだけではなくて、ディセルファセカ公爵家に何かあるんだろうか。


「ねぇ、アマリリス」


座り直したアマリリスに優しく声をかける。


「何か不安なことがあるの?」


「……いいえ、ありません」


「僕はアマリリスの力になりたいと思っているよ。何でも言ってほしいんだ」


瞳の奥が揺れているアマリリスは、一度開けかけた口をきつく結び、泣き出しそうな顔で首を横に振った。


「すみません……昨日、本当に遊びすぎてしまったみたいです。体調が優れませんので、帰らせていただきます」


「うん、ゆっくり休んで。馬車まで送るよ」


エスコートしている手から、アマリリスの震えが伝わってくる。酷く怯えている手を強く握ると、縋り付くように握り返された。


泣いていたかどうかは、最後まで俯かれていたから分からない。乗り込んだ馬車からも顔を覗かせなかったから。


馬車の出発を見送ってから部屋に戻り、深い息を吐き出した。エビネしかいないから、ソファで項垂れるように頭を抱えても誰にもバレない。


心配そうに目尻を下げながらエビネが近づいてきた。


「殿下。ネックレスをおつけしますね」


「ううん。もうつけられないから、大切にしまっておいて」


「では、飾れるようにいたします」


「……ありがとう」


ああ、なんだか今、ものすごくバカ騒ぎがしたいな。大笑いしたい。イクシャのように空をどこまでも飛んでいきたい。


アマリリスは何を隠しているんだろう。それが分からないと動きようがない。隠していることのせいで、嘘をついているんだと思いたい。


僕の尊敬している幼馴染で大切な婚約者……アマリリスの全てが偽りじゃないと言ってほしい。






来週はお休みします。

再来週は更新できると思います。


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