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46.アセビ視点・大好きな時間

私の記憶では、カルミア嬢は殿下を追いかけていた気がするが、いつの間にかアマリリス嬢と仲良くなり、クフェアとの縁談が纏まっていた。カルミア嬢は気が強い女の子で、よくクフェアと言い合いをしていたから、当時はすごく驚いた。


相変わらず言いたいことを言い合っているが、おしどり夫婦のように仲がいい。それでも、カルミア嬢には絶対に必要がない商品でも、他の女の子に渡れば喧嘩になるのか。


「そんなに落ち込まなくても、往復の交通費は支給項目の中に組み込むよ。それに、彼女の両親には王都に引っ越してきてもらおうとも思っているしね」


「引っ越しですか?」


「白竜と使役契約をした緑色の瞳の女の子だよ。喉から手が出るほど彼女を欲しい人はたくさんいる。彼女の両親を誘拐して、従わせようとする可能性だってあるからね。安全対策だよ」


微笑んでいる殿下を見ながら、殿下はフリージアをどう想っているんだろうと考えた。


フリージアは絶対に殿下が好きだろう。殿下が近くを通る度に殿下に集中しているし、時々口元が緩んでいるし、泣きそうになっている時もある。


私がどんなにアプローチしても気付いてくれないほど、殿下に夢中だ。


でも、殿下にはアマリリス嬢がいる。小さい時に奇天烈な発想で私を楽しませてくれ、殿下達との仲を取り持ってくれた優しい女の子だ。


だけど、数年前から様子がおかしい。入学してからはもっとおかしくなった。逐一、行動予定を確認された。


殿下に至っては1人の時間がないんじゃないかと思うほど、必ず隣にアマリリス嬢が居るようになった。


昔から仲がいい2人だったから、ついにネジが外れたのかと思っていたけれど、殿下の接し方に変わりはない。変わったのはアマリリス嬢だけだ。


殿下に「さすがにしんどくない?」と尋ねてみたら、「元々1人の時間はないから、あまり気にならないかな」と返された。「嫌」でも「嬉しい」でもなく、「気にならない」と言われた。


殿下らしいと思ったけれど、そこに特別な感情があるように思えなかった。


感情が動かないなんて、どうでもいいと一緒じゃないか。


殿下はアマリリス嬢に夢中だと思ったけれど、違うのかもしれない。アマリリス嬢を尊重し大切にしているのに、愛があるわけじゃないのかもしれない。


だとしたら、フリージアにも希望はあるんじゃないだろうか。私と結ばれないのは悲しいが、フリージアが幸せなら涙を飲める。


それに、王宮に住んでくれるなら、卒業後も側にいることができる。期間限定かもしれない日常を続けられる。


もし殿下がフリージアを望むなら、誰が反対しても応援しよう。将来の魔導士団師団長が支持するんだ。大きい意味を持つ。だから、私は絶対の絶対に、魔道士団師団長に昇り詰めなければいけない。


殿下を見つめてしまっていたようで、微笑みながら不思議そうに首を傾げられた。


「殿下。鳳凰の機嫌はどう取ったんですか?」


絨毯の話も一旦区切りがついたし、考えていたことは問われたくないので、違う話題を提供してみる。


「くるみパンを用意することで納得してもらったよ」


殿下は苦労したというように肩をすくめている。鳳凰が拗ねている姿と、きっと今日の朝はくるみパンだったんだろうと想像し、私達は笑った。


「まさか魔物が我々のご飯を好むとは、本当に驚きました。今も時々、目を疑う時があります」


「俺んとこはパスタが好きで、1番はミートソース。いつも口周りが真っ赤で大変だぞ」


「それも可愛いじゃないか。私のところはコーンスープを上品に飲んでくれるから助かるよ」


「ピエリスは確かそうでしたね。私の子はヴィシソワーズが好きだと、この前判明したばかりなんです」


「みんな上品なんだな」


「ツワブキのモグラはカブが好きだものね」


「生だから楽だが、ずっとシャリシャリいっている」


みんなで笑いながら盛り上がれる時間が、本当に大好きだ。


捻くれすぎていた私を、アマリリス嬢が救ってくれたから持てる時間だと分かっている。


けど、ごめんね。フリージアに私と同じ苦しさを味わってほしくない。だから、ごめん。


くじ引きで決まった対戦相手が発表され、第1試合から始まった。


ローダンセは1回戦で2年生と当たって敗退し、殿下は勝ち上がったが2回戦目で3年生に負けていた。殿下達の戦いは舞台を壊すほど激しいもので、修復のため数分間中断していた。


ツワブキは1回戦目で悔しい想いをして、控え場の隅で俯いていた。10分程したら「もっと強くなる」と復活して、クフェアが「たまに一緒に訓練しようぜ」と誘っていた。


そして、私は、準決勝で同じように勝ち進んできたクフェアに勝利を収められたが、決勝で3年生に負けてしまった。クフェア戦で力を消耗し過ぎたせいだ。全部余裕で勝てると、どこかで驕っていたのだろう。魔力の配分に失敗した。


欠点が浮き彫りになってよかった反面、フリージアに絨毯を渡せなくて落ち込んだ。労ってくれたフリージアが「みんなで行こうよ」と誘ってくれ、気持ちは浮上した。


私の気持ちが激しく上下に動いていた横で、アマリリス嬢が殿下にしがみついて泣いていた。


殿下が怪我をした試合が終わるなり、立ち入り禁止の控え場に来て、殿下に抱きついていた。殿下は鳳凰が治していたから問題ないのに、「本当にどこも怪我していませんか?」と何度も確かめていた。


自分の力を疑われたと思って怒った鳳凰は、アマリリス嬢を睨んでから、どこかに飛んでいってしまった。


閉幕した後に教室で会ったフリージアの肩に留まっていたから、殿下が受け取りに行こうとしていたが、アマリリス嬢が離れないので諦めていた。


アマリリス嬢は控え室からずっと泣いていて、殿下は絶えずアマリリス嬢の背中を優しく叩いている。


アマリリス嬢は一体どうしてしまったんだろう。殿下を好きすぎる故なんだろうけれど、彼女は本当に私の知っているアマリリス嬢なのか、という違和感が積もっていく。


成長して性格が変わってしまったんだろうか。そう考えたとしても、入学してから変わりすぎている気がする。


今度、殿下がいない場所で、ローダンセとクフェアに尋ねてみよう。共に行動する2人の方が何か知っているかもしれない。






来週はお休みをします。

再来週はイキシア殿下視点の予定です。


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