44.武術大会
王立ブルーム魔法学園は前期と後期に分かれていて、間に2ヶ月の長期休暇がある。前期と後期でそれぞれ学園をあげて催されるイベントが、前期が武術大会、後期が文化祭になる。もちろんゲームでイベントが起こる催し物だ。
その前期最大のイベントである、武術大会が行われる日がやってきた。
大盛り上がりする武術大会への参加は自由であり、半分程の生徒がエントリーする。騎士団や魔導師団の人達が観戦しに来るので、その道に進みたい人はスカウトされるのを目指して出場するからだ。
それに、優勝者には、最高級の空飛ぶ絨毯が授与される。平民は基本箒を使用するが、貴族は絨毯か馬車を利用している。
ツワブキは今日に向けて訓練を強化していた。是非とも、貴族達を蹴散らしてほしいと思う。
アセビは、わたしの代わりに参加を決めてくれた。
実家との行き来に絨毯が欲しくて参加しようとしたが、シオン先生にも他の先生達にも止められた。白竜相手に誰も交戦できないから出場しないでほしいと、懇願されたのだ。
アサギと共闘できないとわたしには戦う術はないから渋々諦めたら、「私がフリージアの代わりに優勝してあげるよ」とアセビがエントリーしてくれた。
アセビも白蛇を戦わせないという条件の下になるのだが、「私を誰だと思っているの。任せてよ」と自信満々の顔で微笑まれている。
天才アセビの実力を疑ってはいないけど、安全第一で戦ってほしい。
ちなみに優勝できたら、空飛ぶ絨毯で花火を見に行こうと約束させられている。夏っぽいことがしたいらしい。
ガーベラも参加しないので、2人並んで闘技場観覧席の前方の席を陣取った。平民のツワブキを応援するのはわたしとガーベラしかいないだろうから、応援の声が掻き消されない近くにいたい。
「ここなら声届きそうやね」
「うん。お腹の底から声出そうね」
「当たり前やん。声枯れても応援しよな」
ガーベラと意気込んでいると、わたし達から少し離れた席に腰を下ろしているアマリリスとカルミアが視界に入った。
アマリリスと話したいと思っているが、わたしもだがアマリリスが1人になる時間がなくて接触できないでいる。
というか、打ち明けてくれるまで待つみたいな発言をしてしまっているから、こちらからどう近付けばいいのか分からなくなっている。
武術大会はクフェアルートで3回起こるイベントで、1年生はお守りを受け取ってもらえれば好感度が上がる。2年生では渡したお守りを剣の柄につけてもらえたらよくて、3年生では腕に巻いてもらえたら成功だ。
このイベントは本当に大切で、1年生でクリアしていないと2年生の武術大会イベントは起こらず、1年生と2年生の両方をクリアしていないと、3年生の武術大会が訪れる前にバッドエンドで終了となってしまう、という法則に気付かないとクリアできない、プレイヤー泣かせのイベントなのだ。
ちなみに、クフェアが腕に巻いたお守りにキスをする、というスチルが良すぎて、クフェアファンは昇天していた。
クフェアルートだけど、こんなにも重要なイベントだから、警告するために絶対に待ち伏せされるはずだ。突破口を見い出せるかもしれない。
そう期待していたのに、今回アマリリスは別の方法で牽制してきた。
数日前、アマリリスはカルミアと一緒に、わざわざ教室で、それぞれの婚約者にお守りをプレゼントしていた。
渡した後に「お守りを渡せるのは婚約者の特権ですね」と言っていたから、わたしにラブラブだと見せつけたかったんだろう。
わたしは呑気に「そうきたかー」と思っていたのだが、アマリリスは数名の女子から反感を買ってしまったそうだ。
アマリリスの言葉は「婚約者以外が渡すのは恥知らず」とも取れるようで、友人や好きな人に応援の気持ちで渡したかった子達が意気消沈したらしい。
クラスの女子から広まったアマリリスの言葉に涙を飲んだ子が多かったと、ガーベラが教えてくれていた。
わたしの存在自体を怖がりすぎて、アマリリスの評判が落ちるのはよくないと思うので、本当にどうにかしてアマリリスに吐かせたいと思っている。
「あ! フリージアさん、ガーベラさん」
名前を呼ばれてガーベラの向こう側に顔を向けると、桃色の瞳を嬉しそうに細めているマーガレットがいた。
「こんにちは」
「こんにちは。あの、一緒に観戦してもいいですか?」
「ん? 友達は一緒ちゃうん?」
「あ、はい……私、ちょっと、その、クラスで浮いてまして」
頬を人差し指で掻きながら苦笑いをするマーガレットに、そんな事を告げられてしまった。
友達がいないと言われたのに、「怪しいと思っているから、どっか行ってくれ」なんて返すほど心を冷たくできない。
怪しいと確定していたらできるけど、現時点では「アサギ目当てなのかも」だからね。
「いいですよ。ただわたし達五月蝿いと思うので、耳が痛いと思ったら移動してくださいね」
「めちゃくちゃ大きな声で応援するからな」
「ふふふ。楽しそうですので、ぜひご一緒させてください」
マーガレットがガーベラの横に腰を下ろした時、開幕を告げる音楽が鳴り響き、Aグループが入場してきた。
4個のグループに分けられた参加者は、各グループでバトルロワイヤルをし、絞り込んだ16名によってトーナメント形式で勝敗が決まる。
Aグループにはクフェアがいて、トーナメントに進める切符を手に入れていた。他のグループにいたローダンセもアセビもイキシア殿下も進出を決めている。
イキシア殿下も、イクシャに何もさせないという約束をしているそうだ。イクシャが拗ねていた、と手紙に書かれていた。その姿が可愛らしくて、少しの間眺めていたそうだ。
「やっぱりSクラスの方達は強いんですね」
「ホンマにな。めっちゃ見応えあったわ。まぁ、うちらの本命はこれからやけどな」
「そうなんですか? でもフリージアさんは、サンスベリア伯爵令息様の応援をされているんじゃないんですか?」
「もちろんアセビ様の応援もしていますよ。でも、アセビ様を応援される方は多いですから、わたしは友人のツワブキに精一杯の声援を送ろうって思っているんです」
なんでアセビの応援? って思ったけど、あれだよね? わたしは緑色の瞳で有名で、アセビは人気者だから、わたし達が友達だって知っていての発言だよね?
「フリージア、ツワブキ出てきたで!」
「うん! 大声で応援しなくちゃね!」
ガーベラと2人叫びまくり、トーナメント進出最後の切符をギリギリでツワブキが勝ち取った時は、ガーベラと抱き合って喜んだ。
声が届いていたようで、退場時にツワブキがわたし達を見てきたので、大きく手を振ってツワブキに「おめでとう」と大きな声で伝えた。
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