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27.先生が人気NO.1だった説あるな

シオン先生……有言実行の男である。



アサギと一緒に登校したら、すれ違う人達が手に持っている物を落としたり、固まったりしていた。白竜に羨望の眼差しを向けている人も少なくないが、狼狽え二度見してくる人がほとんどだった。


教室に到着すると、クラスメート達はアサギを気にしていない。白竜が居ることに、昨日で慣れてくれたんだろう。


使役魔物を喚び出せた大半の生徒は、使役魔物を住処に帰したようだ。ただSクラスの生徒に関しては、共に移動しても大丈夫な使役魔物は学園に連れてきていて、無理な場合、家の獣舎で遊ばせているらしい。もちろんSクラスの生徒の中にも、住処に帰している生徒はいる。


では、Sクラスだけ、どうして他クラスと圧倒的に違うのかというと……


昨日の授業中に、わたしがアサギと行動を共にすることを、シオン先生に学園の許可が要るのかどうか尋ねた。その時にアセビが「私も」と名乗り出て、イキシア殿下達からも「それなら」と声が上がったのだ。


そう、発端はわたしだが、イキシア殿下達がそうするのなら同じにする、という貴族子女が多かっただけの話である。だから、あっという間に他クラスも同じような状況になると思う。


ちなみに、ガーベラとツワブキは、住処に帰ってもらっている人達の中に入る。


理由は、ガーベラのリス(命名・ハナちゃん)も、ツワブキのモグラ(命名・ヤマイシ)も、じっとしていられないから。リスのハナちゃんはともかく、「モグラって……」と思ったが、ツワブキのヤマイシは本当に元気一杯で走り回っているのだ。


となると、授業の邪魔をしてしまうことになるし、静かにしていてほしいと願うのは可哀想すぎるってことで、住処に帰ってもらっている。いつでも喚び出せるから、お昼休憩の時には喚んで仲を深めようと決めているそうだ。


HRの時間、アサギの尻尾を撫でながらシオン先生の朝の連絡事項を聞いていると、「フリージア。放課後、職員室に来るように」と名指しされた。


アサギは小さくてとっても可愛いが、白きモノ達を統べる生き物だ。もしかして何か注意されるんだろうか? 気を付けられることならいいのになぁ、と考えていた。


日中は「何の呼び出しだろうねぇ」とガーベラ達と言い合いながら過ごし、授業が終わり次第、少し身構えながら職員室に向かった。この後、図書館に行くのでアセビも一緒である。なので、とても心強い。


「先生、来ました」


「ん? サンスベリア伯爵令息も一緒か。ちょうどよかった。持ってやれ」


シオン先生は、何かを包んでいる大きな風呂敷をアセビに渡した。アセビは素直に受け取っている。アセビの腕に絡まっている白蛇(命名・ピエリス)も、不思議そうに荷物を見ている。


「先生、これ何ですか?」


「昨日、話しただろ。奥さんが着なくなった服だ」


「本当にいいんですか?」


昨日の今日で持ってきてくれるなんて、一驚である。


もしも忘れられていたら制服で行ってしまおう、と決めていた。制服は歴とした正装だ。着古した服や、わたしがリメイクする服よりマシだ。バカにされないだろう。


それに心のどこかで、その場限りの口約束だろうと思ってもいた。だから、本当に驚いてしまった。


「いいって言っているだろ。折角持ってきたんだ。有り難く持って帰れ」


先生……なんて男前なの。口約束を守る男、素敵。


「ありがとうございます。腕によりをかけてシフォンケーキ作ってきます」


「そんなに肩肘張らなくていい。好きな男にやる時の練習くらいでいいんだからな」


「いえいえ。先生を好きな男に見立てて、心を込めて焼いてきます」


「怖いから心を込めるな。まぁでも、生徒に慕われるのは単純に嬉しいよ」


さすが隠れルートのキャラ。微笑みながらスマートな返し。穏やかな笑みに『トゥクン』って胸が鳴っちゃうよ。


これ、先生が人気NO.1だった説あるな。やらなかったのが今になって悔やまれる。


でも、やっていたとしても、きっとわたしの中ではイキシア殿下のルートっていうより、イキシア殿下の声が1番なのは変わらないけどね。


「いつでもいいからな」と言うシオン先生と別れ、わたし達は職員室を出て、図書館に向かった。


「フリージアは、先生みたいな男性が好みなの?」


「突然どうしたの?」


「先生と楽しそうに話すなぁと思っただけだよ」


「そうかな? アセビ様達と話す方が楽しいけどな。先生はカッコいいけど、先生ってだけで緊張しちゃうしね」


「あ、そうなんだね。そっか……」


あれ? 落ち込んだ? なんで? と首を傾げていると、鼻で小さく笑ったアセビは、その後「ふふふ、ふふふふふ」と可笑しそうに肩を揺らした。


「ア、アセビ様?」


「そっか。うん、フリージアだよね」


すっきりしたように微笑むアセビが不思議で仕方がない。一体、何が「フリージアだよね」なんだろう?


まさか……それ好きのドキドキなのに、先生だから緊張しているって勘違いしているのか。まだまだ子供だなって思われていないよね?


わたし、きちんと好きのドキドキ分かる子だよ。鈍感じゃないよ。先生を好きとかじゃないからね。


「そうだ、フリージア。私を好きな男に見立てて、焼いてくれていいからね」


変にツッコんで「好きのドキドキ理論」について討論して微妙な空気になったら嫌だし、話題も変わったから、もういっか。


「全部、その気持ちを込めて焼くつもりだよ。1番綺麗なやつを先生に渡したいからね」


何着くれたのか分からないが、アセビが持ってくれている荷物を見る限り1着2着じゃないと思う。本当に有り難すぎて、一生涯足を向けて寝ることはできない。


ってか、アセビが居なかったら、先生が学生寮まで持って行ってくれたのかもな。面倒見いいから、きっとそうだろうな。あの男、既婚者だけど絶対にモテている。


「じゃあ、私には2番目に綺麗なやつをくれる?」


「もちろんだよ。アセビ様が材料用意してくれるんだもん。1個と言わず、何個でも焼くよ」


「嬉しいね。もう寮には届いていると思うから、忘れずに受け取ってね」


「うん、ありがとう」


じゃあ、今日の夜に練習して、明日本番にしようかな。頑張ろう。






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